第45話 やっぱり慣れない
次の日、生徒会の集まりに行った。
他の人は、みんな優しかった。先輩も、同級生も。
でも、俺の事情は知らない。だから、隠し通さないといけない。
「(流石に帰ってるか…………)」
ふと気になって、1組の前を通ってみた。流石に、葵音は残っていなかった。今日の朝も、会っていない。
「…………葵音!!」
「咲翔…………!!休んでたのかと思った」
下駄箱に居た。多分、帰るところだったのだろう。
「生徒会の集まりがあってん。…………葵音こそ、朝も会わんかったから」
「でも、帰り道は一緒じゃないもんね…………」
「…………そうやな」
そうだ。この1週間は、一緒に帰れない。一緒に帰れるのが当たり前じゃない。
「…………バイバイ」
「…………また、明日」
車が通らない。人の声すら聞こえない。でも、田舎道じゃない。
「おかえりなさいませ、咲翔様」
使用人さんが、出迎えてくれる。人生で2回目だ。
「荷物をお預かりします」
「あ、ありがとうございます…………」
ほぼ、空っぽの自分の部屋。ベッドは、初めて来たときと同じ状態。
勉強をする気すら起こらない。でも、じっとすることも出来ない。
…………母さんを探しに行くか。
「咲翔様、どちらへ…………」
「母さんの部屋に行こうと思ってるんですけど…………」
「千夏様のお部屋ですね。ご案内いたします」
母さんは、どうしているのだろうか。ご飯の時も喋れてない。
「こちらでございます」
「母さん…………」
母さんの部屋も、同じような感じだった。
机にベッド、本棚に埋め込み式のクローゼット。何一つ、変わらない。
「咲翔…………」
「母さんの部屋も同じ感じなんやな」
「咲翔の部屋も同じなの?」
「うん、まんま同じ」
「そうだったのね…………どう?ここでの生活は」
「やっぱり、慣れん」
「そうね。私も慣れないわ」
母さん、手が細くなってる気がする…………。
「……そういえば、ずっと何してたん?」
「…………何もしてないわ。部屋の外にも出てない」
どおりで会わないわけだ。
「父さんとは話したん?」
「話してない。あの人も、仕事行く時以外は、部屋から出てないと思う」
「…………」
それから、夕食の時間まで母さんの部屋に居た。
無言だった。けど、自分の部屋に居るよりはずっと、良かった。




