第43話 朝
次の日、いつもより早く起きた。眠たい。けど、二度寝が出来ない。
今の時間帯、使用人さん達はいるのだろうか…………?
「「「咲翔様、おはようございます」」」
…………真正面に1人、扉の横に2人の使用人さんがいた。
いつからいるんですか…………?
「あの、制服って…………」
「すぐ、お持ちします」
真正面の使用人さんが、取りに行った。しかも、手慣れた手つきで。朝早いのに…………。
「朝食はいつ頃にいたしましょう?」
残った使用人さんが聞いてきた。何時からいけるのだろうか?
「……何時からですか?」
「いつでも大丈夫でごさいます」
いつでも!?この人達は、いつ寝てるん…………?というか、寝てたとしても体壊しそう…………。
「じゃ、じゃあ制服に着替えたらで良いですか…………?」
早く、この場所から逃げたい。この1週間で落ち着ける場所は、学校しかない。この人達には悪いけど…………。
「「承知致しました」」
「お待たせ致しました」
制服を持ってきたのは、さっきの使用人さんではなく、三明さんだった。
「あ、ありがとうございます…………。あの、三明さん達って、いつ寝ていらっしゃるんですか…………?」
「それは、秘密でございます」
「秘密…………?」
「はい、咲翔様には基本的に使用人の生活については伝えるなと、当主様からご命令を受けております」
当主様って、おじいちゃんのことか…………?
というか、なんでそんな命令を…………。
「わ、分かりました。その、こんな朝早くから迷惑でしたよね…………」
「いえ、お気になさらず。咲翔様のリズムにわたくしたち、使用人は合わせてまいります」
…………使用人としては完璧なのかもしれんけど、そうはして欲しくないな。
「着替えられましたら、お声がけください」
「は、はい…………」
素早く着替えた。なぜかは、俺にも分からない。
「着替え終わりました…………」
「では、ご案内いたします」
昨日も通った廊下。でも、落ち着かない。
無理やり、郭地町の家の廊下を思い浮かべる。
そんなことをしてると、ダイニングと呼ぶべきなのか分からない部屋に着く。
昨日の昼食と夕食と同じ動作。迷いがない。
まるで、昔から俺がこの邸宅に住んでいたかような分かりきっている動作。
「いただきます…………」
この部屋には俺しか居なかった。父さんと母さんはまだ自分の部屋に居るのだろう。
そういえば、夕食以来見ていない。広すぎて滅多に会えないのか、それとも父さんと母さんが部屋から出てないのか…………。
それすら分からないほど、広い。
朝から、使用人さん達は、動いている。
…………申し訳ない。たった、1人のためにこれだけの人が動いてくれてるのだから。
食べ物が喉を通らない。けど、脳は早く食べろと命令してくる。何回も詰まりそうになった。正直、命の危険を察知するくらいには。
なんとか、食べ切れた。お皿が下げられる。
「いつ、登校いたしますか?」
三明さんが聞いてきた。安心…………とは到底思えないが、他の使用人さん達よりは感情が出ているような気がする顔。
「……すぐに出ます」
「承知致しました。お鞄は、玄関にてお渡しいたします」
…………何か違う。いつもだったら、鞄を持って玄関に行くのに、それがない。
それだけなのに、妙に落ち着かない。
「では、いってらっしゃいませ」
「…………はい」
学校は近くなった。けど、いつもより少し早く出た。学校までの道は昨日の夜に確認した。登校時間が、四分の一ぐらいになっているらしい。
同じような邸宅が並んでいる。きっと、今までの学長さんとその家族が住んでいるのだろう。
閑静な住宅街と同じくらい、静かだった。
学校の近くまで来た。いつも、駅から来ている道に出る。
それだけでも、安心できる。
…………あれは、
「…………葵音」
「咲翔…………」
葵音、この時間ってことは1本前の電車に乗ったのか?
「…………どう?あそこでの生活は」
「…………落ち着かん。何もかもが違う」
「制服も綺麗になってるけど…………」
「アイロン掛けとか色々してくれたらしい。葵音こそ、綺麗になってない?」
「い、いつも通りだよ…………」




