第40話 部屋
「…………広くない?」
案内された部屋は、今の部屋が2つ以上は余裕で入るほどの大きさだった。
「うん…………正直、持て余す」
大きな部屋に、勉強机2つ分の机と、タブルベッドに、空っぽの本棚。クローゼットは埋め込み型。
十分な大きさの家具ばかり。けど、広い。
今の部屋の家具を置いても、有り余るかもしれない。
「……落ち着かないね」
「うん。郭地町の家の方が落ち着く」
ベッドに腰を下ろす。昨日と同じように、近い。
「…………散策に行かん?正直、ここに居てもすること無いし」
「うん。けど、迷子にならない?」
「確かに…………それも含めて、散策しよう」
「分かった」
木製の扉の片方を開ける。少し、重い。
「どちらに行かれるのですか?」
目の前に、使用人らしき男性が立っている。
よく見ると、扉の横にもメイドさんがいた。
「ちょ、ちょっと散策をしに…………行ってきます」
葵音の息が背中に当たる。服が引っ張られているような気がした。
それよりも、常に待機してるのか…………?
「では、ご案内いたしましょうか?」
「いや、大丈夫です」
「そうですか…………」
いつの間にか、他の使用人らしき男性と女性が立っていた。案内役としてだろう。…………だとしたら、集合早くない?
「…………」
行こう、ただそれだけを言いたかった。けど、声が出ない。
無言で、葵音の手を引っ張るしかなかった。
「「「いってらっしゃいませ」」」
部屋の前に立っていた人たちが、一斉にお辞儀をする。
…………落ち着かない。




