第38話 頭も尻も隠さない
「咲翔、急にどうしたの?」
ラフな格好だった。急いで着替えたのだろう。
「急に、ごめん」
「全然良いけど…………ここの公園久しぶりだね」
「…………そうやな。本題なんやけど、理由を説明させて欲しい」
「…………」
ベンチに座った葵音の体温を感じる。秋にしては寒い空気に負けないほど、温かった。
「実はさ…………じいちゃんが城洛大学の学長やったらしい」
「そうだったの!?」
いつも驚くときのテンションだった。
「うん…………それで、学長になるときに出された条件があるらしくて…………それが――」
一通り、説明した。一切、包み隠さずに伝えた。
話終えた頃には、いつものテンションではまるでなかった。
「…………それで、私と距離を取ろうとしたし、生徒会長に立候補もしたの?」
「…………」
声が、喉に張り付いて出なかった。葵音は、声が出るまで待ってくれた。
「…………そういうこと。けど、結論はまだ出てない」
「…………そっか」
それからしばらく無言だった。吹いた風は、秋風とは言い難い、冬風を彷彿させるような風だった。
「…………咲翔の家の話だから、口を出すのはどうかと思うけど、私は断って欲しい。生徒会長に立候補したことはしょうがないし、当選してやっぱり無しでとは出来ないけど、私は…………近くに咲翔が居てほしい」
さらに葵音は近づいてきた。安心感が湧いてくる。けど、母さんとはまた別の安心感だった。
「…………俺、どうしたらええのかな?俺も葵音は大事やし、幼馴染として側に居てほしい。けど、おじいちゃんが大学を辞めてしまうところを見るのもしんどい」
「…………無謀かもしれないけどさ、交渉してみない?おじいちゃんにじゃなくて、その催促した人に」
「でも、おじいちゃんがなんて言うか…………」
「私も協力するから」
確固たる決意だった。いつも、俺が困っていたら宣言してくれる声。
「…………ありがとう」
それ以上のことは言えなかった。




