第37話 欲張り?
…………明るい。寝てたのか。
部屋に散らばったバックの中身、制服のベルトが腰とお腹を締め付ける。
床に座っていたからか、腰が痛い。
重い腰を上げ、部屋着に着替えて、1階に降りる。いつもとは少し違う動作だ。
リビングには、父さんとおじいちゃん。母さんの姿は無い。
けど、机にはいつも通りの朝食。おじいちゃんの健康に気を使って、改善した朝食。
「……おはよ」
「咲翔、おはよ」
「昨日は寝てたのか?」
父さんとおじいちゃんが帰ってくる頃には、寝ていたのだろう。帰ってきたことすら気が付かなかった。
「うん、寝てた」
「そうか…………それで、選挙はどうやったんや?」
「まずまず…………葵音にも協力してもらった」
「…………咲翔は、どうしたいんや?」
前と同じ質問。けど、確認ではない。
「…………分からん。どうしたいかも、どうすれば良いかも」
「…………」
無言が続いた。ただ、新聞紙を捲る音と、食器と箸が擦れる音しか聞こえない。
「…………咲翔」
「…………何?」
その音が全て止まる。
「じっくり考えたらええ。元々は、じいちゃんの責任や。だから、咲翔はどうしたいのかを自分自身で考えて欲しい。無責任に感じるかもしれん。けど、じいちゃんらが変に口出しして、後悔して欲しくないんや」
「…………分かった」
最後の一口を食べて、食器を流し台に置く。
リビングを出るときに、おじいちゃんに話しかけようとした。けど、声が出なかった。
…………俺は、どうしたいんや。
分からない。葵音もおじいちゃんも大事だし、出来ることなら両立したい。体力的には十分、両立出来る。
けど、制度が阻む。
おじいちゃんを責めれば、乱暴だが解決する分にはする。
けど、この家族で居たい。
――熱心に研究に打ち込むおじいちゃん
――俺のことを第一に考えてくれてる母さんと父さん。
このままで居たい。葵音だってそうだ。
――初めて、自分たちでコンビニに行った日
――奈緒音が懐いてくれた日
――久しぶりにお泊まりした日
――これからも幼馴染で居ると宣言した日
全部、全部、大事な思い出。けど、どっちかしか取れない。
どっちも、と思うのは欲張りなのだろうか?
とにかく、どっちかを選ばないといけない。
そのためにはまず…………葵音に言うか、ぼかすかを決めないと…………。




