第35話 本当は……?
作戦を立てた週の金曜日、選挙当日だった。
候補者と応援演説者が、隣に並ぶ。
えっと……言うことは――
公約は、達成できないことは言わない。それをするぐらいなら、学校を根底から良くしていきたいから。
あとは、咲翔の演説から考えて、咲翔の良いところを言っていく。
よし、大丈夫そう。他に生徒会長候補が居るってウワサ聞かないけど、居ないのかな…………?
「これから、第45回後期生徒会選挙を行います。演説は会長候補、会長候補応援演説――の順番です。なお、会長に関しては信任投票です」
咲翔だけだったんだ。…………良かった。
「では、会長候補の杏堂咲翔さん。よろしくお願いします」
「会長に立候補させてもらいました、杏堂咲翔です。私の公約は、目安箱の設置です。目安箱を設置し、皆さんの意見を取り入れていきます。投票よろしくお願いします」
拍手が聞こえてくる。その中に、声も混じっていた。
「(信任だからって、短くない?)」
「(たしかに)」
その声は、葵音にも聞こえてくる。
やっぱり咲翔、無茶だったんだって…………。
咲翔も聞こえてるだろうに…………。
でも、イヤな顔してない。どういうこと?
もしかして、狙ってた?じゃあ、なんで…………。
「では、応援演説を行う新口葵音さん、よろしくお願いします」
「は、はい!!」
演説台へ向かう。その間、10秒もいらない。
だが、10秒、それ以上の時間がかかったような気がした。
「……杏堂咲翔は、達成できないことは言いません。なぜなら、本気で学校を良くしたいからです。目安箱の設置も、杏堂が本気で考えたこの学校をより良くするために考えたことです。それは、幼馴染である私が保証します。ぜひ、杏堂咲翔に信任をよろしくお願いします」
言い終えた後、拍手が響く。咲翔の時よりも純粋な拍手。それは、葵音だけに向けられていないような気がした。
その後、候補者の演説と応援演説は進んだ。
生徒は、投票するために教室へ戻る。
候補者たちは、そのまま帰宅する。
「…………葵音、ありがとう。応援演説してくれて」
「…………ねぇ、咲翔。本当は、生徒会長になりたくなかったんじゃないの?」
「え…………?」
思わず、立ち止まる。距離があるわけじゃない。
「作戦会議したときから思ってた。目安箱だけしか言わないって言うし、本気で考えてないように見えた。それに今日の演説も、いつもの咲翔ならもっと喋る。そうでしょ?」




