第25話 告白
夏休みは明け、城洛高校では午後から放課後にかけて文化祭準備が行われていた。
「じゃあ、咲翔お疲れ〜」
「お疲れ〜」
――ピロン
葵音からか。
「クラスの準備があるから、先帰っといて」
3組、大掛かりやったもんな。時間足りなさそう。
咲翔は、下駄箱から靴を取り出し、帰宅した。
「ただいま〜」
…………返事が返ってこない。
誰も居らんのかな?でも、鍵は開いてたしな…………。
咲翔は、リビングの扉を開けた。
そこには、咲翔の父である元親と母である千夏、祖父である雅史が座っていた。
「どうしたん?皆、集まって」
「…………話がある」
「え、おじいちゃんに怒られるん?俺」
「とにかく、座ってくれ」
「う、うん…………」
咲翔は、雅史の向かいに座った。隣には千夏が座っている。
「…………実は、お前たちに隠していたことがある。元親くんには先に伝えたんだが…………実はじいちゃん、学長やったんや」
「「え!?」」
「おじいちゃん、学長やったん!?」
「お父さん、どうして今まで…………」
学長やったんや…………。だから、あんな忙しそうに…………。
「本当は、咲翔が高校を卒業するまで隠しとこうと思ってたんや。ただ、催促されてな…………」
「催促って、別にされる必要無くない?」
学長やったことを明かすのに、誰かに急かされる必要なくない?
「本題はそこにあってな…………」
1枚のコピー用紙を机に置かれた。深刻そうな顔の割には、紙が薄い
「何、この紙?」
咲翔は紙を取り、千夏と一緒に見た。
「…………おじいちゃん、エイプリルフールには早すぎるで?」
「そうよ、お父さん。もうボケちゃったの?」
「…………そこに書いてあるのは事実や。学長を打診されたとき、猶予を貰って4年、果たさないといけないことになった」
「4年って…………俺が小6のときから学長やったん?」
「ああ、てっきり高校卒業まで待ってくれると思っていてな…………」
「…………邸宅って、俺も住まんなあかんの?」
「全員や」
邸宅に住むのと許嫁は百歩譲って良いとして、交友関係をリセットって…………。
「…………もしさ、交友関係をリセットするとしたら、葵音ともリセットしやなあかんの?」
「そういうことになるな…………」
「…………」
爪が手のひらに食い込んで、痛い。
ついさっきまで、文化祭での服装がどうだの、シフトはどうするだの、話していたはずだ。なのに、今はその話も含めて現実味がない。
…………なんでそんな重要なことを。
「…………それと、咲翔には学力学年1位で、なおかつ生徒会長を経験して卒業してもらわんといかん」
「…………お父さん、なんでそんな重要なこと隠してたのよ!!お父さんも咲翔と葵音ちゃんとの仲知ってるでしょ!!」
「まぁまぁ、千夏一旦落ち着いて…………」
…………動けない。母さん、おじいちゃんに飛びかかりそう。けど、動けない。
「元親は黙ってて!!そもそも、なんで冷静でいられるのよ!!」
「…………」
「本当に最低。家族に、特に咲翔にこんなこと黙ってるなんて…………」
「…………小学生の孫にこんなこと負わせたくなかったんや」
「それでも、言うべきだったんじゃないの?それが本当にお父さんの信念なの?お父さんが、責任を負ってしまうのは昔っから見てきた。けど、孫が大事なら断るか、相談するかぐらいしたらどうなの?」
「「「…………」」」
時計の針が動く音しかしない。
「咲翔、あなたの人生はあなたのもの。だから、イヤなら断るのよ」
千夏は、リビングを出て寝室へ上がっていった。
「…………咲翔、本当にすまなかった。この通りや」
雅史は、椅子から降りてその場で、土下座をしていた。
「…………おじいちゃん、考えさせて」
「分かった…………。咲翔が決めるまでは、じいちゃんが時間稼ぎしておく。それしか出来んしな」
咲翔もリビングを出て、自室へ籠もった。




