第24話 リミット
「――約束は分かっているな?」
「はい…………心得ております」
とうとう、この時が来てしまったか…………。
咲翔が高校を卒業するまでは、隠しておきたかった…………。
――4年前
「雅史教授、少しよろしいでしょうか?」
「どうした?学生の提出課題か?」
「いえ…………学長がお呼びです」
「分かった。すぐに行く」
杏堂雅史は、学長室へ駆け足で向かった。
「雅史くん、すまないね。研究中に」
「いえ、キリのよいところでございました」
「そうか。それでなんだが…………学長には興味ないかね?」
「え?」
私が、学長?どうしてまた…………。
「嬉しいのですが…………なぜ、私に?」
「君は、研究熱心だろう?しかも、論文もたくさん出している。これほど、学長に相応しい人は、今のこの大学にはいない。それは君が一番分かってるのではないか?」
「たしかに、論文は一番多く出していることは自負しておりますが、研究熱心なのは他の方も…………」
「いや、君にしか務まらないものなんだ。引き受けてくれないか?」
「…………考えさせてもらえないでしょうか?」
「分かった。吉報を待っているぞ」
「では、失礼いたします…………」
学長室を出た雅史は、重い足取りで自分の研究室へ向かった。
私にしか務まらない…………。そんなことはないはず。
たしかに、今のこの大学の教授陣は、教授になった瞬間から人が変わったように、研究をしなくなる人が多い。
だが、研究熱心な人も居るだろう。
「教授、なんのお話でした?」
「いや、今は言えん」
「分かりました…………」
「すまんが、この史料を全部、戻してきてくれ」
「分かりました」
学長…………。この名門大学の学長になれば、名声が入ることは間違いないだろう。
だが、私は研究がしたい。名声など要らない。この大学で歴史を学んでから、この大学で研究することが夢だった。
それを叶えたのだ。なのに…………。
…………いや、学長をしながら研究すれば、この大学に活気が戻り、研究も両立が出来るのではないか?
「教授、また学長室ですか?」
「ああ、午後の講義は休講と入れといてくれ」
雅史は、学長室へ向かった。
――コンコンコン
「失礼いたします」
「雅史くん、もう決まったのか?」
「はい。私も、現在の教授陣の態度については疑問を持っておりました。そこで、私に改革させてください」
「そう言うと思っていたよ」
学長は、口角を吊り上げた。
「その代わりなのですが…………」
「なんだ?」
「学長に就任した後も、研究は続けさせてください。私は、本来この大学で研究するために入りました。ですから――」
「そこは好きにすればいい。だが、この約束は守ってもらうぞ」
雅史は、渡された1枚のコピー用紙を読んだ。
「…………」
一、権威を保つため、大学が用意した邸宅に住むこと。
ニ、子もしくは孫は、許嫁と結婚すること。
三、その際、交友関係はリセットすること。
四、上記が果たせない場合、学長を辞任すること。
「…………おこがましいのは重々承知ですが、猶予を貰えませんでしょうか?」
「なぜだ?」
「私の子は、もう既に結婚しております。孫に関しても、まだ小学生です。私には、小学生に重荷を負わすことは、到底出来ません。ですから、せめて高校を卒業するまでは待っていただけないでしょうか?」
「…………考えておく」
「……ありがとうございます!!」




