第23話 線香花火
とにかく、葵音らに何もなくて良かった…………。
咄嗟に彼女って言ったけど…………めちゃくちゃ恥ずいな!?
いくら葵音らを守るためとはいえ、もうちょいあったやろ…………。
咲翔は、トイレ前で待っていた。
「お待たせ。奈緒音、寝ちゃった」
「じゃあ、そろそろ帰る?」
「うん」
2人は、鳥居前に向かって歩き出した。何回も、肩が当たっていた。
「…………咲翔、ありがとう」
鳥居を抜けた2人は、大通りを歩いていた。
「ケガとか無くて良かった」
「咲翔がいてくれて本当に良かった。私たちだけだったら、怖くてあのまま強引に、連れて行かれてたかも…………」
「俺も、前までついて行けば良かったな」
どうせ合流するなら、ついて行けば良かったのに…………考えてなかった。
「(…………かっこいい)」
トラックが、咲翔の横を通り過ぎた。葵音の髪の毛が、揺れる。
「ごめん、なんて言った?」
「ううん、何もないよ。…………あっ、コンビニで飲み物だけ買ってきてもいい?」
「ええよ。奈緒音、抱っこしとこか?」
「ううん、大丈夫」
「いらっしゃいませー」
入ってすぐに、大きなポップが掲げられていた。
「あっ、手持ち花火だ。咲翔、しようよ。私が払うからさ」
「手持ち花火…………ええな。昼とか払ってもらってるし、俺が払うで?」
「いや、でも私が言い出したし…………」
「……カッコつけさせてくれ」
「うん……」
飲み物と花火の代金を支払った咲翔は、家の前の通りまで来ていた。
無言だった。けど、いつもと同じだった。
涼しい風が吹く。葵音の髪が優しくなびく。
今日の咲翔…………やけに、かっこいい。
なんでだろ。守ってくれたときだけじゃない。今日、一日中…………。
葵音の家が見えてきた。
「奈緒音、寝かしてくるね」
「うん」
寝ている奈緒音を親に託し、葵音は軒下に戻った。
「何からする?」
「線香花火は最後やろ?」
「うん」
「じゃあ――」
咲翔は、長めの花火を取り出した。
「うわ、これすごーい。色が変わるじゃん!!」
「変わり方も個性あるんやな!!」
2人はひとしきり花火を楽しみ、2本の線香花火が残っていた。
「じゃあ、つけるで」
「うん」
咲翔は、2本の線香花火に火をつけた。
葵音はやっぱり、はしゃいでるときが一番笑顔やな。
「…………ねぇ咲翔、私が小さい時に花火で火傷したの覚えてる?」
「ああ、どんどん短くなったやつ?」
「そう。懐かしいよね」
「そうやな。全員が焦ったよな(笑)」
「そうだったね(笑)。……咲翔、これからも幼馴染でいてくれる?」
「……もちろん。どんな友達よりも、葵音と居るときが一番楽しい」
「……私も」
線香花火が激しく燃える。
「あっ、私の勝ち!!」
…………葵音、奈緒音と一緒にいると気を張るもんな。
けど、こうやってはしゃいでると、こっちまで楽しくなる。
「今日はもう遅いし、もう1泊していったら?」
「……着替えだけ持ってくるわ」
「……うん、待ってる」




