第17話 ゲリラ豪雨
次の日、昨日と同じように葵音の家に来た。
――ピンポーン
「そのまま部屋に来て〜」
インターホンから、鳴らしてすぐに声が聞こえてきた。
玄関の鍵は開いていた。リビングに葵音の姿は無く、そのまま、葵音の部屋に向かった。
部屋の扉を開けた――
「…………何してんの?」
部屋には、数々のぬいぐるみの山に埋もれている、葵音。
「引っ張って〜」
山の中から、2本の腕がひょこっと出てきた。
俺が家に入るまでにここまでしとったんかよ…………。
「しゃぁないな」
腕を引っ張って、山の中の葵音を出した。
「結構、空気通らないんだね」
「そりゃあ、こんな数あったら息出来んわ」
机の上は少なくなってたけど、それがこっちに移動しただけじゃね…………?
「あっ、そうそう。今日、夕方まで誰も居なくて、昼ご飯とか色々買いに行かないと行けないから、今からコンビニに行くよ」
「分かったけど、これ片付けんで良いの?」
「帰ってから片付ける」
外に出た。7月も後半に差し掛かり、一瞬で汗ばむほど暑かった。
体の内側から暑い…………。さっきまでは、そんなことなかったのに。家の中が涼しかったからかな?
「咲翔はさ、初めて2人だけでコンビニ行った時のこと覚えてる?」
「2年生の時の?」
「うん」
「それがどうしたん?」
「懐かしいなって――」
――8年前
小学2年生の2人は、家の前でゲーム機を持ち寄って、遊んでいた。
「ねえねえ、さくと。私たちだけで、コンビニ行ってみたい」
「え、でもあそこ校区外だから、ダメだって…………」
「お母さんかお父さんが良いよって言ってくれたら大丈夫って言ってたよ。聞いてこようよ」
「…………分かった。聞いてくる」
――数分後
「さくと、どうだった?」
「良いよって!!」
「やったー!!」
「じゃあ、早く行こ!!」
「……道、分かる?」
「え、分かってなかったの!?」
「うん…………いつも、車で行ってたからこの道分かんない」
「……ぼくもちょっと不安」
「じゃあ、手握ろ?」
――ギュッ
2人は、手をしっかりと握った。
「冒険してるみたいだね」
「そうだね」
「ほぼ初めての道で2人とも、不安だったよね」
「そうやな。そもそも、2人だけで遠くに行くことも少なかったしな」
「コンビニを遠いところって言う辺り、子供だったんだなって思う(笑)」
「確かにな(笑)今じゃ、考えられんわ」
昔話に花を咲かせ、あっという間にコンビニに着いた。
「――ませ〜」
カゴを取って、弁当コーナーへ向かった。
俺はペペロンチーノを、葵音はサンドイッチをカゴに入れた。
「あっ、勉強のお供も買っとこうよ。私のおすすめは――」
会計を済ませた。外は、さっきの暑さに加えてジメッとしている感じだった。
「あざっした――」
「あっ、俺の分払うで。なんぼやった?」
「お母さんから、咲翔の分も貰ってるから大丈夫だよ。なんなら、余ってる」
「そうなんや――」
すると、大粒の水滴が空から降ってきた。
「うわ、大雨やん」
「傘、売ってるかな…………え、売り切れ」
「え、どうする?うちの親今、居らんしな…………」
「風邪引いちゃうかもしれないけど、もう走るしかないよね………………あっ、せっかくならうちに泊まっていったら?」
「え?家近いねんから、そのまま帰れるけど…………」
「たまには、いいじゃん」
「しかも、おばさん達に悪いし…………」
「ちょっと待ってね。聞いてみる」
いや、別に泊まらんでも…………。
「…………良いって!!」
「返信早ない!?」
「昼休みだったんじゃない?ほら、お母さんも良いって言ってるんだから」
「いや、でも着替えが…………」
「私の貸すよ?」
「へ?」
いや、どういうこと…………?
「幼馴染なんだから、今更じゃん」
「流石に肌着は…………」
「ここに売ってるじゃん」
「でも、それやったら意味がないんじゃ…………」
「どうせ、明日も来るんだからいいじゃん」
「…………聞いてみる」
スマホを取り出して母さんに連絡した。
――ピロン
「……こっちも、返信早いな。…………良いってさ」
「やったー!!」
「……肌着買ってくる」
念のため2枚ずつ買っとくか…………。
「……じゃあ、走るぞ」
「うん」
2人は無我夢中で走った。
靴の中に水が入ってくる。服も2倍の重さに感じるほど水を吸っていた。靴の中は気持ち悪いはずなのに、いつもの雨の日とは違った。
「「ハァハァ…………」」
「いやー、走ったね」
「久しぶりや、こんな運動したん」
「確かにね〜」
葵音は、軒下からまだまだ雨の降る外に出た。
「葵音?どうした――」
「えい!!」
「うわ!?」
葵音は、軒下の近くにあった水溜まりを強く踏んだ。
その衝撃で飛び散った水は、咲翔にかかった。
「えへへ…………したくなっちゃった」
雨と汗で髪が張り付いてるのに、葵音は春みたいに笑っていた。
「はぁ、もう…………まぁ、結局は一緒か」
咲翔も、つられて笑っていた。




