第16話 格闘技
「う、うーん…………」
先に起きたのは、咲翔であった。
カーテンの隙間から、淡いオレンジの光が差し込んでいる。
よく寝た。今何時や?
咲翔は、机のスマホに腕を伸ばす。
葵音を起こさんように…………って、18時!?
え、寝たんが13時ぐらいやから…………5時間も寝たん!?寝過ぎやろ…………。
…………そろそろ、葵音を起こすか。
咲翔は、頭を起こそうとした。
すると――
「うーん、行っちゃダメだよ…………ベリー」
ちょっ、動けんて…………。足で上半身をガッチリ押さえられてる…………。というか、夢の中でも同じことしてる?
やとしたら、格闘技でもしてんのか?
じゃあ、怖すぎやろ。多分、相手逃げてるところを追いかけてるって…………。
足を絡められて、30分ぐらい経った。…………苦しい。一瞬緩んだ隙に、抜け出した。
「葵音?もう18時半やで。5時間も寝てる」
「……おはよ、咲翔。今何時?」
「18時半。5時間も寝てたで」
「そんなに寝てたの!?」
「うん。…………というか、何の夢みてたん?」
「えっと…………ぬいぐるみと格闘技する夢」
「でしょうね…………」
「え、なんで分かったの!?」
自覚無いんかい…………。
「寝言も言ってたし、多分やけど俺も同じ技受けてた…………」
「もしかして、足技?」
「うん…………」
「え、大丈夫!?」
「大丈夫やけど…………ちょっと恐怖を感じた。寝言と行動を見るに、逃げてるところを捕獲してって感じやから…………」
「確かに、そんな感じだったかも…………」
良かった…………。あれ以上、何かされてたらガチで大丈夫じゃないところやった…………。
「とりあえず――」
――ガチャ
「2人とも、晩御飯にする?」
「お母さん、そうする。咲翔も食べて行かない?」
葵音は乱れた髪のまま、咲翔に近づいていった。
「ごめん。今日は晩御飯までに帰ってきてって言われてるから…………」
「えー、今からでも許可取ってよ…………」
「こらこら、じゃあそろそろ帰るの?咲翔くん」
「はい、ありがとうございました」
「いえいえ、明日からも葵音をよろしくね」
咲翔は玄関に行った。葵音、那津もお見送りのために、玄関に行った。
葵音は笑顔で手を振っていたが、段差のギリギリのところでバランスを取っていた。




