24話 雲間の光明 24−2
茜の武尊の腕。
その関節が怪獣を抑える力に耐えられなかった。
嫌な金属音とともに、関節が砕け散る。
茜は爆発前に逃げる算段だった。
しかし、今爆発しようとしている純粋種に倒れ込む。
(バランスが取れない……!)
目の前に広がる爆炎。
茜は自分を守るように手を前に出す。
「茜ぇ!」
無線から聞き覚えのある声が聞こえた。
その時、衝撃が走った。
体を潰さんばかりのGが茜を襲う。
目の前の爆炎が目の前を高速で過ぎていき、煙に変わる。
そして、眩い光がモニターを照らした。
(空……?)
茜の理解が追いつかない。
再度、今度は上からのGに押しつぶされる。
その後に襲う浮遊感。
衝撃。
コクピット内が激しく揺れる。
「くっ……!」
しばらく続いた揺れは次第に収まった。
ゆっくりと顔を上げる。
モニターの先、少し離れたところに凛の武尊がいた。
「凛……!」
凛の武尊がサムズアップした。
喋られないのだろう。
「信じてたよ。」
茜は無線に向かって、そういった。
凛の武尊が小さく親指を立て直す。
そして、そのまま力尽きるように地面へ倒れ込んだ。
司令室内に安堵の声が漏れる。
爆発直後の一連の出来事は司令室でも見れていた。
茜の武尊の腕が外れ、爆発に巻き込まれる。
それを捨て身で爆炎に飛び込む凛。
その時、司令室では息を呑む音が聞こえた。
爆炎から飛び出した二機を見た時は、司令室が湧いた。
しかし、豪は気が気でなかった。
その感情から足の力が抜けていた。
「ハハ……。」
無意識に笑みがこぼれる。
こんな姿、あいつらに見せられない。
豪はそう思った。
突然、豪の目の前に手が差し伸べられる。
顔を上げたら、そこには凪がいた。
「茜さんたち、やりましたね。」
豪は凪の手を取り、立ち上がる。
「ああ!あいつらならやれると思ったぜ!」
「でも……。」
凪は言いかけて、モニターを見る。
そこには、二機が茜の武尊を立ち上がらせる光景が映っていた。
満身創痍。
豪は溜息をつく。
「ここからは俺の仕事だな。」
豪の背中は頼もしく見えた。
格納庫に向かう豪。
(メカニックにめちゃくちゃ怒られるな。)
そう思いつつ、凪も格納庫に向かった。
三機の武尊が基地に帰ってきた。
壮絶な戦闘だったのが、見て取れる。
レイの武尊の左腕は、爆発の燃料にされた。
茜の武尊の両腕は、純粋種と共に爆散。
比較的無事だったのは、凛の武尊だけだった。
「派手にやらかしてくれたな……。」
メカニックのボヤキが聞こえる。
豪はそれを背中で受け止める。
豪も本気でそう思ってないのは、分かっていた。
ここのメカニックは命を守る仕事をする。
豪はそれを実感として、知っている。
コクピットから、三人が降りてくる。
ヘルメットで顔は見えない。
(ヘルメットの下でどんな顔してるか分かるな。)
豪はそう思って、出てきそうな笑みを押し殺した。
三人がヘルメットを取り、近寄ってくる。
一様に眉間に皺が寄っている。
すれ違いざまに武尊に駆け寄るメカニック。
「すみませんでした!」
茜が声を張り上げて、90度に腰を曲げる。
続けて後ろの二人も頭を下げる。
「顔を上げろ。
よく帰ってきたな。」
三人は顔を上げようとする。
しかし、上げられなかった。
込み上げるものを必死に飲み込む。
「ありがとうございます!」
三人は声を揃えて敬礼した。
メカニックは武尊三機に取り付いていく。
腕の損傷具合を確認する。
「腕は全部作り変えないといけないな。」
「ちょうど良かったんじゃないっすか?」
部下のメカニックが火花が散る腕から飛び退いた。
「ちょうど良いってなぁ……。」
チーフメカニックが顎に手を当てて、武尊の腕を見つめる。
「肆の腕の解析終わったんすよね?」
メカニックがチーフメカニックに目を向ける。
この戦闘中、凪の武尊の解析が進んでいた。
腕の関節部の解析しかできていなかった。
他も見てみたかったが時間がない。
「チーフのことだからやるつもりっしょ?」
メカニックは口角を上げる。
その顔を見て、チーフメカニックはタブレットに目を移す。
そこには、肆の腕の関節を参考にした武尊改良計画が出来上がっていた。
「上に持っていくか……。」
チーフメカニックがそう言うと、メカニックは勢いよく立ち上がる。
「そうこなくっちゃ!
俺、準備してきます!」
そして、メカニックは走り出す。
「おい!
すぐにはできねぇぞ……って聞いてねぇよ。」
チーフメカニックはペンで頭をかきながら、司令室に向かった。
茜は深くベッドに潜り込む。
あの後、ミーティングもなく豪から解散が言い渡された。
「今日は三人とも休め。」
豪のこの言葉で、自分の部屋に帰ってきた。
枕をゆっくり抱え込む。
寝返りを打とうとする。
「つっ……!」
気づかなかった。
自分の体が悲鳴を上げている。
(無理もないか……。)
茜はそう思う。
朝起きて、悩みをかき消すようにグラウンドを走った。
そして、休む間もなく戦闘が始まった。
毎日訓練しているとは言え。
「今日はハードだったな……。」
そんな言葉が口から漏れ出た。
レイと凛の顔が頭に浮かぶ。
「二人は寝れてるかな……?」
自分と同じで興奮して寝れていないんじゃと思う。
自然と笑顔がこぼれる。
今朝とは違う。
二人の顔を思い出すと何故か気持ちが温かくなる。
「チームっていいな。」
茜はそう言って、目を閉じた。
そして、ゆっくりと夢のなかに沈んでいた。
「これはなんだ?」
豪は凪から紙を受け取った。
そこには、休日申請と書かれていた。
数日休みをくれということだ。
「他意はないんだが、理由はあるのか?」
豪は心配を隠して言う。
その言葉に、凪は窓の外を見る。
遠い目をしていた。
しかし、その目の奥には決意が隠れていた。
「ちょっと、自分を見直そうと思いまして……。」
凪の言葉に豪は腕を組み、少し考える。
その時、ドアがノックされた。
「どうぞ。」
豪がノックに答える。
ドアが開いていく。
そこにいたのは、レイだった。
「レイか。
どうした?」
今度はレイかと思った。
レイは真っ直ぐ凪を見つめていた。
「俺もそれに同行させてくれ。」
凪と豪はそのレイの言葉に驚いた。
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