24話 雲間の光明 24−1
三機は止め処なく降り続く根の槍を回避していた。
その中で茜の目が忙しなく動いていく。
(状況判断……!)
茜はレイの武尊に目を向ける。
(左腕損壊。
ライフルは使えるかもしれないけど……。)
次に凛の武尊に目を向ける。
マシンガンを持ち、回避しながら根の槍を撃ち落としていく。
(酷い損傷はないみたい。
良かった……。)
今度は自分の武尊を確認する。
(出撃前に何か言われたな。
それどころじゃなかったけど……。)
茜は自分の武尊のスキャンをかける。
モニターの中で、簡易モデルの武尊がスキャンされていく。
警告音。
「えっ……!」
モニターの中にいる簡易モデルの武尊。
その両腕の関節部が赤く点滅していた。
茜は出撃前を思い出す。
◇
メカニックがコクピットの入り口で茜に語りかける。
「前回の戦いで、剣を使った影響で両腕の関節に負担がかかってます。」
メカニックがモニターの中の簡易モデルの腕を指さす。
「通常通り運用は可能ですが、前回のように無茶な剣の使い方をすると、腕が破損します。」
メカニックが入り口から出ていく。
「それだけは気をつけて下さいね。」
「了解。」
茜は上の空で返事した
◇
(聞き逃してた……。
これじゃあ、パイロットとしても失格じゃない。)
茜は顔を上げる。
「どうする……?」
茜は眉間に皺を寄せた。
「茜!」
モニターに小ウインドウで凛が映る。
「なに?」
茜は前を注視しながら答える。
小ウインドウが地上を映した画面に切り替わる。
地面に根の槍が降り注いでいく。
「え?」
その地面に到達した根の槍は不気味に蠢いた。
そして、吸収されるように地面の中に入っていった。
「熱源を分析した。」
今度はレイが小ウインドウに現れる。
その画面が同じ場所のサーモグラフィーに切り替わる。
地面に吸収された根の槍は地中を進む。
そして、根の槍は四足の純粋種に向かっている。
「これは……!」
茜は驚き、その根の槍を目で追っていく。
根の槍は四足の純粋種から地中に伸びた根へ吸い込まれていく。
熱源は減衰していない。
「エネルギーを循環させてる……?
永久機関ってこと……?」
茜は唇を噛む。
更に状況が悪化した。
この根の槍の雨は止むことがない。
「くっ……!」
茜は避けながら、頭を回す。
(この状況で勝てる方法……。)
茜は目を見開く。
何かを閃いた。
しかし。
(大博打だ……。)
茜は自分の発想に自笑した。
「無茶よ!」
凛が叫ぶ。
茜の無茶な作戦を聞いたからだ。
「でも、これしか方法がない……。」
茜が凛の小ウインドウに目を向けて言う。
「なら、茜の役割は私がする。」
凛がなおも食い下がる。
茜の武尊の腕の状態を聞いた。
「茜の武尊には荷が重すぎる!」
この作戦には、"腕"が必要だった。
「今の三機の中で無事なのは、凛の武尊だけ」
茜は覚悟を決めるように息を吐く。
「凛にはやってもらわないといけないことが沢山ある。
それに……。」
茜は真っ直ぐ凛を見つめる。
その目には、信頼があった。
「いざという時は、信じてるよ。」
凛は俯く。
何かを考える。
一拍置いて顔を上げる。
その顔は決意に満ちていた。
「分かった。」
茜はレイの小ウインドウに目を向ける。
レイは茜が発するより先に声を出す。
「今度は絶対に外さない。」
そのレイの顔にも僅かに決意が見て取れた。
茜はゆっくりと頷く。
そして、純粋種を見据えた。
「……よし。
フォーメーションE!開始!」
各機は飛び上がった。
レイの武尊は根の槍の雨の及ばぬところまで後退する。
そして、地面に武尊を寝かせた。
池に這うようにライフルを純粋種に構える。
カートリッジを地面に挿してライフルを固定する。
片腕で出来る最善をレイは考えた。
(俺のいつものポジション……。)
レイはモニターをサーモグラフィーに変える。
照準が定まるのを、ゆっくりと待つ。
(俺は射撃の腕を買われてるってことだ……。)
照準が四足の純粋種の動きに合わせて修正されていく。
(もう外せないぞ……!俺!)
レイの武尊がゆっくりとトリガーに指をかける。
ゆっくりと息を吐く。
レイはその状態のまま、息を殺した。
茜と凛は根の槍の雨を縫うように飛び回る。
そして、根の槍を撃ち落としながらも四足の純粋種にマシンガンを撃ち込む。
純粋種は咆哮を上げる。
「効いてる!」
凛の声と同時に純粋種が凛の武尊に目を向ける。
純粋種が力みだす。
そして、噴火のごとく根の槍を噴き出した。
茜と凛は直ぐに回避行動に移る。
「気がそらせない……!」
凛が叫ぶ。
「純粋種もバカじゃないってことね!」
茜は素早くその根の槍を交わしながら、言う。
「このままやるしかない……!」
茜は武尊を反転させる。
そして、剣を装備させた。
凛の武尊はマシンガンで牽制をする。
「茜はやらせない!」
凛は叫ぶと同時に茜の武尊に降り注ぐ根の槍を撃ち落としていく。
茜の武尊は落ちていたレイの武尊の左腕を拾いあげる。
「メカニックさん……ごめんなさい!」
そして、凛の武尊に放り投げた。
凛の武尊がその腕をキャッチする。
それと同時に茜は一気にペダルを踏み込んだ。
根の槍を掻い潜り、四足の純粋種の目前まで潜り込む。
「はあ……!」
茜の武尊が両手持ちで剣を振り上げる。
そして、顔に剣を突き刺し地面に固定した。
純粋種は暴れるが身動きが取れない。
茜の武尊の腕が軋む。
関節が悲鳴を上げている。
「くっ…!」
茜は必死に純粋種の動きを止める。
「凛!」
茜が叫ぶと凛の武尊はレイの武尊の腕を持って振り被った。
「いっけええ!」
凛の武尊はレイの左腕を力いっぱい投げ放った。
それは純粋種に向かって、飛んでいく。
そして。
レイの武尊の腕は、純粋種の大砲のなかに入った。
「レイ!」
茜はレイに号令を出す。
サーモグラフィーに映し出された腕は大砲の中を進んでいく。
(武尊の腕にはガトリングが内蔵されている。)
レイはその腕が照準に入るのを待つ。
(それを撃ち抜く……!)
腕が照準に入った。
レイの武尊はトリガーを引いた。
弾は茜の武尊の脇を通り抜けて、純粋種の中に入った左腕を撃ち抜いた。
左腕のガトリングの火薬が誘爆を起こす。
「よし!」
茜が叫ぶ。
純粋種の大砲が内側から膨れ上がる。
ガキン……!
金属が砕ける嫌な音が響く。
「あ……。」
茜の武尊の両腕から力が抜けた。
純粋種が爆炎に包まれる。
「茜ぇ!」
凛の武尊が爆風の中へ飛び込んだ。
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