↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神薙 ~日本神話×ロボット。怪獣を救う神機の物語~  作者: さく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/89

23話 茜の空 23−3

凪は司令室に向かう。

(俺は何を焦っているんだ……?)


量産型武尊・肆の腕が解体されているだけ。

そのために、出撃できなかっただけ。

そのはずなのに。


(焦るな。)

豪の言葉が頭に過る。


分かりきっている。

澪やミズホノメを助けなければいけない。

焔との"戦い"も決着していない。


(それだけか……?)

凪は考える。

あの時は、有耶無耶になった。

草薙剣を持って、納得したつもりだった。


しかし。


凪は窓から空を見る。

今日はどんよりとした雲に覆われている。


窓を開けて、ゆっくり空気を吸い込んだ。

大気を満たす濃厚な雨の気配は、まるで自分の焦りをあざ笑うかのように冷たかった。

(雨が降りそうだな……。)


凪の心も晴れなかった。




凪は司令室に入る。

司令室はどよめき、一堂がモニターに釘付けになっていた。


その目線が集まっているモニター。

そこに凪も目を向けた。


そこには、茜が映っていた。

茜は目を見開き、微動だにしない。

操縦桿を握る手だけが震えている。


凪はそのただならぬ雰囲気に言葉が出なくなった。


豪が拳を握る。

(まだ、早かったのか……?)

そんな考えが頭を過った。


その考えを振り切るように頭を横に振る。

そして、オペレーターのマイクを奪う。

「茜!落ち着け。」


モニターの茜にはその言葉が届いてないように見えた。

(どうする……?)

豪は次にかける言葉を見失った。

豪も茜ならできると信じている。


しかし。


茜の引きつけのような震えは止まることを知らなかった。

誰も次の言葉を発せない。

司令室には、茜の荒い呼吸だけが響いていた。




数分前。


純粋種が三人の視界に入った。

「行くよ!」

茜の声が叫ぶ。


それと同時に各機、散開する。

「フォーメーション……!」

レイが純粋種に貫かれそうになったことが頭を過る。


「茜……?」

凛の応答が耳に入る。


茜は頭を横に振り、考えを振り切った。

「フォーメーションDでいくよ。」


フォーメーションD。

それは前回と同じ。

茜と凛が敵を撹乱し、レイが長距離から仕留める。


それが茜たちの編み出した戦法である。

レイは皆の中でずば抜けて射撃の精度が高かった。

茜と凛は競うように、スピードを求めた。

その個性を活かす戦法だった。


「了解。」

レイは一瞬だけ茜の声に違和感を覚えた。

しかし、照準から目を離さなかった。


(今度は外さない……!)

レイはトリガーに指をかけた。


「凛!行くよ!」

茜は自分を鼓舞するように、叫ぶ。


「了解!」

凛もそれに応答する。

それと同時にペダルを踏み込んだ。


茜と凛の武尊が加速する。

二人で練習したマニューバ。


武尊が背中合わせで四足の純粋種に特攻する。

マシンガンを持ち、二機同時に撃ち込んでいく。


純粋種はその攻撃に悲痛の咆哮をあげる。

そして、背中から蠢き這い出した根を突きだした。


(根の槍……!)

茜の心臓が跳ねる。

「……くっ!」


茜と凛は左右に分かれて、側面を撃っていく。

純粋種は標的を見失う。

双方を撃たれ、咆哮をあげた。


「いける……!」

凛の声が聞こえた。


「待って!」

茜が叫ぶ。

茜には四足の純粋種の背中が蠢いて見えた。


「何……?」

四足の純粋種の背中の根が蠢き、絡み合っていく。

そして、それが形を成していく。


純粋種の背中にあるもの。

それはさながら大砲に見えた。


「各機散開!」

茜の叫びをかき消すように、純粋種の背中が閃いた。

次の瞬間、大砲から無数の根が撃ち出された。




無数の根は噴き上がり、四方八方へ落下していく。

それは根の槍の雨のようだった。


レイはその光景を見ると同時にペダルを踏んだ。

バーニアが噴き出し、急速に後方へ移動する。

機体が地を削る。


その削った地の跡に、根の槍が振り注いでいく。

レイは咄嗟に、量産型武尊・弐の腕に内蔵されたガトリングを上空に撃つ。

(間に合わ……!)


根の槍がレイの武尊を貫いた。




「レイ!」

茜は降り注ぐ根の槍がレイの武尊を貫くところを目撃した。


目を見開き、虚ろな目で計器を見つめる。

(また……判断ミスをした……。)

操縦桿を握る手が震える。


通信で何かが聞こえる。

(やっぱり私は……。)

目に涙が溜まっていく。


「茜!」


コクピットに衝撃が奔る。

Gが茜の前面に圧力をかける。


「……ぐっ!」

茜が前を見る。

凛の武尊が茜の武尊を抱きかかえるように、根の槍から遠ざける。


「凛……!」

二機は空中でバランスを崩して、落下する。

山腹の土を抉り、滑り落ちていく。


コクピットが揺れる。

その揺れが茜の脳を揺らし、覚醒させていった。


「茜!

しっかりして!」

凛の声が耳をつく。


凛のコクピットを映す小ウインドウがモニターの真ん中に映し出される。

目の前の凛の武尊がゆっくり起き上がる。


「でも、レイが……!」

茜がその凛に向かって叫ぶ。

怯えている。

それが自分でも分かった。


「レイは大丈夫。

だから、落ち着きなさい!」

凛の武尊がレイの方へと指を指す。

茜は恐る恐るレイの武尊に顔を向ける。


火花が散っている。

左腕があった場所にはそれがなくなっていた。


しかし。


無事だ。

レイの武尊が黙ってサムズアップをした。

「レイ……!」


茜の頬に涙が伝う。

止め処なく、溢れ出す。


「茜。

泣いてる暇なんてないよ。」

小ウインドウの中の凛の目も潤んで見えた。


「私たちをみちびーー」

茜の目に根の槍の追撃が見えた。




「ちっ……。」

誰かの舌打ちが聞こえた。

各機は飛び上がり、根の槍を交わしていく。


茜はその舌打ちに何故か心が軽くなった。

レイの無事が確認できたことに安心したのもあるだろう。

凛の激励が嬉しかったのもある。


しかし、茜は二人が思っていることが手に取るように分かった。

それは。


(純粋種は休む暇を与えてくれない。)

もしかしたら、いい雰囲気も関係ないとも思ってるかもしれないと思った。


三人は根の槍の雨を交わし、撃ち落としていく。

「茜!

私たちはあんたを信じてる!」


茜のモニターに二つの小ウインドウが映る。

凛とレイだ。

わずかにレイが頷いたように見えた。


(なんで……?)

その言葉が頭を過る。


太陽の光が雲の間から覗かせる。

それが茜の武尊を照らしていった。


今は分からない。

けれど、二人が信頼してくれる。

それだけで力が出た。


「行くよ!」

茜が号令をかける。

もう、操縦桿を握る手は震えていなかった。

雲の切れ間から差す光のように、茜の心にも迷いは晴れつつあった。

少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【ブックマーク】や【⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎】で応援していただけると、更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。