23話 茜の空 23−2
茜たちは顔を見合わせる。
グラウンドにも怪獣アラートが鳴り響いていた。
三人は頷き合う。
「行こう!」
茜のその号令と共に、三人は走り出す。
先ほどまで、走っていた。
その疲れは怪獣の出現で気にならなくなっていた。
兎に角、出撃。
そう頭を切り替える。
しかし、茜の頭の中のモヤモヤは晴れなかった。
豪の言葉。
(俺はお前に任せたい。)
その言葉 の真意は分からない。
(どうして……?)
(私にできるの……?)
そんな言葉が自分に突き刺さる。
茜は量産型武尊・壱のコクピットに座った。
茜は操縦桿を握る。
ふと、小さな音が鳴る。
自分の手が震えていることに、その時初めて気付いた。
茜は唇を噛んだ。
凪は格納庫にたどり着く。
息を切らし、量産型武尊・肆の前に立つ。
「こ、これは……!」
凪は量産型武尊・肆を見上げる。
左腕部は骨組みだけになり、配線が剥き出しになっていた。
とても戦える状態ではない。
「何してるんです!?」
凪はメカニックに近づいていく。
メカニックは凪の声が耳に入っていないのか腕部に集まり、議論している。
「純粋種が出てるんですよ!」
凪のその叫びに、メカニックたちが気がついた。
そして、怪獣アラートが鳴り響いていることに驚いた。
しかし。
メカニックのリーダーがペンで頭を掻く。
「直ぐに出撃できないぞ……。」
「気付いたら、みんな夢中で分解してたんだ……。」
メカニックのリーダーは申し訳なさそうに頭を掻いた。
量産型武尊・肆の左腕部は跡形もなく解体されていた。
メカニックの心情は分かる。
しかし、これを元に戻すには時間がかかる。
凪は焦っていた。
その時、コクピットの中の通信機が鳴る。
「凪、今回は仕方ない。
俺たちに任せろ。」
凪は急いで、コクピットの中に入り、通信を入れる。
「しかし!」
「お前は待機だ。」
豪の無線が切れる。
凪はその場に立ち尽くした。
(凪が出撃できない……?)
茜はモニターを拡大し、量産型武尊・肆の腕が解体されているのを確認する。
(あの状態じゃ出られない……。)
茜は眉間に皺を寄せる。
(豪隊長と私たちでやるしかない……。)
操縦桿を握る手に力が入る。
突然、モニターの中央に豪が映った。
その映ったウインドウの中にいた豪はまだ司令室にいた。
「すまん。
こっちも出られそうにない。」
豪は自信に満ちた笑顔で茜を見据える。
「できるか?」
茜はその言葉を聞いて、更に眉間に皺を寄せる。
(私にできるの…?)
ふと、豪の顔を見る。
何故かその顔を見ると、力が湧いた。
「やってみます。」
その言葉が無意識に口をついて出た。
ウインドウの中で豪は小さく頷いた。
「任せた!」
茜は格納庫から量産型武尊・壱を出す。
不安がないわけじゃない。
だけど……。
「量産型武尊・壱!出ます。」
量産型武尊・壱のバーニアが火を噴いた。
不破が後ろ手に手を組む。
「嘘が下手ですね。」
そう言って、豪を横目で見る。
豪はオペレーターの机に手をつき、軽く息を吐く。
そして、体を持ち上げる。
「そんなことないよな?」
豪はオペレーターに同意を求める。
オペレーターは肩を竦んで見せる。
恨めしそうに見ている豪を横目にモニターに向かうオペレーター。
「上手くやったと思うけどなぁ……?」
腑に落ちない様子の豪。
それを気にも留めず、不破が問いかける。
「茜さん、本当に大丈夫なんですか?」
不破は出撃した量産型武尊・壱のモニターに目を向ける。
その茜の顔には不安が残っているように見えた。
「茜は大丈夫です。」
豪の頭に茜の過去が過る。
◇
訓練場。
茜は一番前を走っている。
しかし、豪はその走りを見ていない。
見ているのは、その後ろ。
凛の足が乱れる。
レイの呼吸が苦しそうになる。
その瞬間。
茜が少しだけ速度を落とした。
振り返らない。
何も言わない。
ただ、二人が並びやすい速度になる。
豪は腕を組む。
「……。」
三人が並んで走っていく。
豪は小さく笑った。
◇
豪もモニターを見る。
モニターでは弐、参と出撃していく。
茜を見る。
先ほどに増して不安顔に見える。
量産型武尊・壱が二人の前を飛んでいる。
(お前なら大丈夫だ。)
豪は小さく笑った。
茜は深く息を吐く。
ペダルを踏み込む足が強張っている。
その足を少し緩める。
レイの量産型武尊・弐と凛の量産型武尊・参が追いついた。
「……。」
レイは何も言わない。
前を見据える目がこちらに動いた気がする。
凛のウインドウを見る。
「……。」
作り笑いをこちらに向けた。
量産型武尊・参の左拳が突き出される。
それに量産型武尊・壱の右拳を突き合わせる。
二人とも何も言わない。
しかし。
「見えた!」
凛が叫ぶ。
森の木々が次々となぎ倒される。
四足の純粋種が土煙を巻き上げながら姿を現した。
「……。」
レイの量産型武尊・弐がライフルを装備する。
茜は深く息を吐いた。
(私にどこまでできるか分からない。)
初戦を思い出す茜。
(レイがやられるところだった……。)
凛の量産型武尊・参がマシンガンを装備する。
小さく息を吐く凛の息遣いが聞こえる。
(もうあんな思いはさせない……!)
茜もマシンガンを装備させる。
「行くよ!」
三機はそれぞれの想いを乗せて、散開した。
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