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神薙 ~日本神話×ロボット。怪獣を救う神機の物語~  作者: さく


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22話 それぞれの意思 22−3

焔は焚き火の前にいた。

豚汁を飲んだ後、人間を観察してみた。


優しい笑顔。

分け与える人。

誰もが助けあい、できることをしていた。


焔は焦点の合わない瞳で、火を見つめる。

(どういうことだ……?)

自分の知っている人間と違う。


(人間共はもっと醜悪だったはずだ。)

焔は街に目を向ける。


配給所付近の建物は少し崩れかけている。

しかし、窓から明かりが漏れていた。

住めるところもあるのだろう。


その窓から見える家族は、笑顔に満ちていた。

「…。」

その無機質な目で真っ直ぐ見つめる。


(人間はこの逆境の中で何で笑っていられる……?)

焔にはそれが分からなかった。


しかし、焔の頭に神話時代の記憶が蘇る。

(あの時も、人間は……。)


◇


人々は御母様から作物の種をいただき、水を得た。

しかし、土地は痩せていき、実りが少なくなっていた。


「このままじゃ、わしら食っていけぬ…。」

一人の翁が皆の前で肩を落としていた。


「せっかくミズホノメ様からいただいたというに……。」

もう一人の男が、翁から作物を受け取る。

その作物は、到底食べられるものではなかった。


翁は皆の顔を見ていく。

皆、沈んだ顔をしていた。

それに気づいた翁は、作り笑いを浮かべる。


「皆、そう気を落とすでない。

もう一度、ミズホノメ様のお知恵をお借りしよう。」

皆の顔に生気が戻る。


「そうだな!」

口々に呟く皆を見て、頷く翁。

翁は直ぐに、御母様が御わす神殿に向かった。




翁は村一番の神殿についた。

そこに御わすミズホノメ様に神託を賜るにはお兄様に会う必要があった。


お兄様は人々の祈りを聞き、それをミズホノメ様の神託を受ける澪に橋渡す役割を担っていた。

翁が神殿の前にいるお兄様に跪く。


そして、祈りを捧げる。

「ミズホノメ様に……!

土地が痩せ、作物が取れなくなっている……。

どうか……!」


お兄様はそれを聞き入れ、神殿の中に入った。

神殿を奥に進んでいくと、御簾の奥に澪がいる。


御簾の前でお兄様が澪に語りかける。

「澪……。

人々が困っている。」


「御母様!

どうしたらいいのでしょう?」

御簾の先で、幼き澪がミズホノメ様にお伺いを立てている。


お兄様も御簾の先を見ることができない。

そのまま、行く末を見守った。


その瞬間だった。

神殿の外で雷鳴が轟いた。

窓障子が白く染まり、一瞬だけ神殿が光に包まれる。


お兄様が体を震わせる。

「大地を焼くのです。」

ミズホノメ様が微笑んだ。

お兄様はそう感じた。




お兄様は神殿の外に出る。

辺りは火に包まれていた。

逃げ惑う人々。


「皆のもの!」

それをお兄様は制した。

人々が神殿に集まっていく。


「これは…?」

翁が心配の表情を浮かべ、お兄様に縋る。


「ミズホノメ様からの神託だ。」

お兄様は澪から聞いた。


大地を焼き、灰が土を豊かにする。

そして、新しい命が芽吹く。


そのことを、皆に伝えていく。

皆の顔に笑顔が戻る。


八雷神はこの時に産まれた。

火雷神はその笑顔を遠巻きに見ていた。

(御母様……。皆の顔に笑顔が戻りましたよ。)


火雷神は微笑む。

炎は畑をゆっくりと舐めるように広がっていく。

黒く染まった大地は、やがて新たな命を育む揺り籠となる。


火雷神は静かに大地を燃やしていった。




数カ月後


黄金の波が、風を浴びてそよいでいた。

辺り一面、黄金の穂。

その美しさに火雷神は目を奪われていた。


「……!」

言葉が出ない。

火雷神は辺りを見渡す。


人々が歓喜している。

そして、力を合わせて収穫していく。


その穂を、御母様に奉納する。

火雷神はその光景に涙した。


◇


(そうだ……。)

焔は目を見開き、額に手をついた。


「人間は、いつもそうだった。

希望を持っていた。」

顔を上げる。

そこには、深夜にも関わらず復興に取り組んでいる人々。


「いつも笑顔で……。」

顔を建物に戻すと、笑顔の家族がいる。


「だが……。」

焔は拳を強く握り締める。


「その人間が、御母様を……。」

唇を噛む。

「お姉様を……殺したんだ。」




ミーティングルームにパイロット5人は集まっていた。

量産型武尊の初陣。


その振り返りと評価のために集合がかかっていた。

各々、ヘルメットを置いて、ホワイトボードの前に行く。


(空気が重い……。)

凪はそう思いつつ、上目遣いで三人に目を向ける。

三人とも、口をつぐみ下を向いている。


豪はホワイトボードを消し終えて、振り向いた。

そして、わざとらしく声を張る。

「どうした?」


レイの肩を軽く叩く豪。

「お前ら、初陣で生きて帰ってきたんだぞ。」


三人は豪に顔を向けるが、笑顔はない。

豪は軽く息を吐く。

そして、口を開く。


しかし、言葉を発したのは茜だった。

「私にリーダーは力不足でした。」

茜の目は真っ赤に腫れ上がっていた。


「あんた何言ってんの!?」

次に声を上げたのは凛だった。


「茜は頑張ってた。

私がちゃんとフォローできなかったの。」

茜の両肩を掴み、真っ直ぐと目を見る。


「ごめんね……。」

凛は下を向く。


「それを言うなら、一番の戦犯は俺だ。」

レイは後方で二人に目線を向ける。


「俺が仕留められなかったのが悪い。」

レイは自笑して、茜に近寄った。


「レイ、死ぬとこだったんだよ……?

私がちゃんとできていれば……。」

茜は二人に背を向け、涙を堪えるように天を見る。


「自業自得だ。」

レイが冷静に返す。

茜が言い返そうと振り向いた。


その時。


静観していた豪が一つ手を叩く。


「お前らの言いたいことは分かった。」

豪は鋭い眼光を茜に向ける。


「でも、俺の判断は変わらん。

茜……。俺はお前に任せたい。」

豪は誰かが言葉を発する前に制止する。


「今日はもう各自、部屋に戻れ。

ミーティングは後日にする。」

豪はそういい、解散を命令する。


「了解……。」

各隊員は部屋に戻っていった。


凪だけが、その場に残ろうとする。

豪が首を横に振る。

「お前もだ。」


「了解。」

凪も部屋に戻っていった。




土から一つ芽が芽吹く。

その芽が、根となり地を這っていく。


黒い根が不気味に蠢き、移動していく。

近くに黒い種が落ちていた。


黒い根はゆっくりと種に絡みつく。

種は脈打つように震えた。

次の瞬間、根はそれを飲み込んだ。


その時。


黒い根が四方八方に吹き出した。

そして、形を成形していく。


それは闇夜を裂く咆哮を上げた。

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