22話 それぞれの意思 22-1
純粋種の根の槍を斬り落とす。
「…!」
凪は一連の動作に驚く。
量産型武尊・肆に標準装備されている剣を使っていたときとは比べ物にならない。
扱いやすい。
凪はそう感じた。
操作自体は変わってないはず。
それなのに、草薙剣は自然と動く。
自分の体の一部のように扱える。
「はは…!」
凪が笑う。
真・神機がどれだけ凄かったのかが分かる。
凪が真・神機にどれだけ助けられていたのか?
それが凪の頭に過る。
量産型武尊・肆が剣を構え直す。
凪は息を吐く。
「今は真・神機じゃない…。」
目を瞑る。
「でも、この剣を持った以上…。」
凪はゆっくり目を開ける。
純粋種を真っ直ぐ見据える。
「格好悪い姿は見せられないな。」
純粋種が一歩踏み出す。
噴煙が上がり、踏み込む。
幾つもの根の槍が、量産型武尊・肆に迫る。
それを軽く薙ぎ払っていく。
そして、根の槍を裂きながら、懐に飛び込んでいく。
その剣筋に、もう迷いはなかった。
凪は量産型武尊・肆と、草薙剣を信じていた。
豪は凪の太刀筋に驚く。
「武尊にあんな動きができるとは…!」
先程までの凪とは違う。
量産型武尊・肆の剣の時は、動きに重さがあった。
凪の焦りがそうさせたのかもしれない。
「凄い…!」
豪は感嘆する。
ただ、早いだけではない。
見極め。
量産型武尊・肆は純粋種の攻撃を華麗な動きで躱している。
そして、無駄のない動きで斬り伏せていく。
「神機に乗っていた奴は違うな…!」
皮肉に見せた称賛。
豪は武尊弐型のライフルを構える。
そして、純粋種の根を撃ち落としていく。
(凪の動きやすいようにする…!)
豪はライフルをマシンガンモードに切り替える。
凪は豪の意図を読み、後ろに飛び退く。
そして、マシンガンを撃ち込みながら突撃する。
純粋種の上空を飛び、後ろに回り込む武尊弐型。
「今だ!」
豪が叫ぶ。
純粋種の目が武尊弐型を追っていく。
量産型武尊・肆は草薙剣を鞘に収める。
そして、前かがみになっていく。
凪は目を瞑り、息を吐く。
心を落ち着ける。
そして、凪が目を開く。
居合。
量産型武尊・肆が地面を踏み込む。
そして、純粋種の懐に入り込む。
「はあ…!」
目にも留まらぬ剣撃。
純粋種は、音もなく崩れ落ちる。
その肉塊は、塵となり天へ昇っていった。
凪は天を仰ぐ。
塵が空を舞い、消えていく。
「焔…。」
凪は焔を思い出す。
そして、純粋種に思いを馳せる。
「本当にこれがお前の望むことなのか?」
純粋種が現れ続けるということは、 ミズホノメは今も人間を恨み続けているのだろうか。
それは人間を恨み続けている証拠のように凪は感じていた。
人間を恨み続けている母を許容する。
それが、焔の真意なのか?
凪はそれも考え続けていた。
大きな足音が聞こえる。
凪はその音で意識が戻る。
武尊弐型が近づいてきていた。
「豪隊長!」
豪はその声に答えるように武尊弐型にサムズアップさせる。
「吹っ切れたな。」
豪が通信を入れる。
「…。」
凪は少し間を置き、考える。
「はい!」
豪はその声に安堵する。
「あいつらの方が心配かもな。」
冗談を言いつつ、豪は通信を入れる。
「壱。
そっちはどうだ。」
応答がない。
「壱。茜!
どうした?」
焦り気味に豪が叫ぶ。
凪も心配になる。
「行きましょう!」
凪が豪に目配せする。
「ああ!」
武尊弐型と量産型武尊・肆は飛び上がった。
量産型武尊・壱は袈裟斬りに純粋種を斬りつけた。
量産型武尊・参に迫る根の槍が目の前で止まる。
純粋種が根の先から崩れ落ちていく。
その塵が天に昇っていった。
その光景を三人は、見つめていた。
そして、力が抜ける。
通信を通して、三人の息づかいだけが聞こえていた。
「おい!
お前ら大丈夫か!?」
通信から豪の声が聞こえる。
茜は応答したくても、心臓の高鳴りに応答できない。
武尊弐型と量産型武尊・肆の姿が見えた。
こちらに飛んできている。
茜は無事を知らせるために量産型武尊・壱にサムズアップさせる。
「はあ…。」
溜息が漏れる。
「心配させるなよ…。」
豪はシートに背中を預ける。
そして、再度安堵した。
「帰還するぞ!」
豪はそう指示を出し、基地に飛び立つ。
「了解!」
四人がそれぞれ応答し、帰路につく。
茜は先ほどの戦闘を思い返す。
(焦っちゃった…。)
茜は自己嫌悪に陥る。
(レイを失うところだった…!)
茜は操縦桿を強く握りしめる。
そして、計器を叩いた。
不破は帰還する五機を司令室のモニターで見ていた。
実りのある戦いだったと思うようにした。
危うい場面もあった。
しかし、凪の立ち直りも、茜の失敗も必要な経験だ。
「皆さんの成長を楽しみにしたいところですね。」
不破が独りごちる。
「なんです?」
近くのオペレーターが不破の言葉に聞き返す。
「いえ…。」
不破は後ろで手を組む。
「しかし…。」
何故、未だに純粋種が現れるのか?
それが解明されていない。
あの時、大穴と呼ばれる純粋種が現れる穴は封印された。
(なのに、何故?)
今回は二頭。
(純粋種が活発化してきているようでならない。)
不破はそう考える。
最悪の事態が頭を過る。
調査チームに何度も大穴を調査させた。
しかし、分かったことはない。
回収できたものはあったが。
オペレーターは、不破の考えてることが分かる気がした。
その顔を見て、不破は頭を切り替える。
「さあ!
初陣の四人を出迎えましょう。」
モニターを見て、笑顔を作る。
「そうですね。」
オペレーターは各機に格納場所を指示していく。
(これから…大変になりそうですな…。)
不破の不安はまだ拭えそうになかった。
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