21話 新たな旅立ち 21-2
「純粋種、出現!」
オペレーターの報告が司令室に響いた。
モニターに純粋種が現れた場所が表示される。
「近いですね…。」
不破はそう独り言ち、新たなモニターに目を向ける。
そこには怪獣が現れたときに使用されるカメラからの映像が映し出されていた。
「最初の怪獣に酷似していますね。」
モニターの純粋種は、二足で大地を踏みしめながら進んでいた。
しかし、最初に現出した怪獣のように根が絡み合っている。
そして。
純粋種の身体から四方八方に根が噴き出す。
それはさながら、槍のように周りの木々に突き刺さる。
「ここに被害が出る前に食い止めます。」
不破が指示を出す。
「量産型の初陣です。
出撃させてください。」
不破の指示を遮るようにアラートが鳴る。
「今度はなんです!?」
すぐにオペレーターに向き直り、確認を促す。
「もう一体、純粋種出現!」
オペレーターが声を張る。
モニターにもう一体の純粋種が映し出される。
「もう一体…。」
不破はモニターの純粋種を見る。
こちらも同系統のようだ。
「2チームに分けます。」
不破はすぐに指示を出した。
不破の指示が飛ぶ。
隊員たちは一斉に武尊へ向かって走り出した。
豪は不破から現場指揮を一任されている。
チーム編成も豪の役目だった。
(どうする…?)
一つだけ気掛かりがあった。
凪。
豪から見ても焦りのようなものが見える。
凪の事情は分からない。
しかし、豪は凪がこのままだと死んでしまうという疑念があった。
各隊員が武尊に搭乗する。
「編成は壱、弐、参。
肆と俺だ。」
豪が無線で各隊員に指示を出す。
「壱、弐、参は後から来た純粋種に行け。
リーダーは壱だ。」
豪が各モニターの中から茜を見る。
「了解!」
茜は笑みを堪えて返事する。
そして、三機は出撃していった。
「凪。お前は俺とだ。
懐かしいな。」
豪はわざと二年前の話を持ち出す。
「はい。
機体が変わったからって負けませんよ!」
豪には凪のその返事が空元気のように聞こえた。
凪の量産型武尊・肆が前に出る。
「先に出ます!」
量産型武尊・肆のバーニアが火を噴く。
そして、出撃した。
「お、おい!」
豪の心配が強くなっていく。
(凪…。
一人で抱え込むな…。)
豪の武尊弐型も出撃した。
(澪ちゃん…。
君を助ける新たな力を手に入れたよ。)
凪の操縦桿を握る手に力が入る。
(澪ちゃんを助けて、ミズホノメ様も助ける。)
凪はまっすぐ前を見据える。
(純粋種が現れた。
焔も、どこかで動いているのかもしれない。)
凪は澪の言葉を思い出す。
(仲良くしてね。)
凪はペダルを強く踏む。
武尊弐型を引き離していく。
(焔も救わないと。)
(約束だから。)
量産型武尊・肆の目が映し出す映像に純粋種の姿が映る。
「焔…!」
(どこにいる?)
バーニアが咆哮を上げる。
量産型武尊・肆は純粋種へ一直線に突っ込んだ。
量産型武尊・肆が純粋種にぶつかった。
焔はその光景を目にする。
「新しいやつか…。」
人間も純粋種に対応しようと前へ進んでいる。
神話の時代から人間は何があっても前に進もうとしていた。
(それが悪意につながるんだ。)
前を向く。
その探求心。
それ故の強欲さ。
それが御母様を殺した。
焔はそう考える。
視線を落とす焔。
(なんでこれで人間を許せる…?)
武尊と純粋種が組み合っている。
焔はその光景をただ見つめていた。
助けることも、止めることもできずに。
豪は量産型武尊・肆が純粋種に体当たりする光景を目にする。
「凪!それじゃダメなんだ!」
凪はまず怪獣に組み付く。
神機に乗っていた頃から変わらない、凪の戦い方だった。
怪獣の中の人を救い、街を守る。
神機なら、それが最善だった。
しかし、もう神機ではない。
武尊は機械だ。
神話の兵器ではない。
あの突っ込み方は、気持ちが先走っている証拠だ。
(俺の懸念は当たっているのかもしれない…。)
豪の叫びに凪は反応しない。
一気にペダルを踏む豪。
武尊弐型のバーニアが勢いを増す。
豪は凪のもとへと急行した。
量産型武尊・肆は腰に設置された剣を装備する。
無意識の行動だった。
量産型武尊は中、遠距離攻撃を想定されている。
凪もそれは勉強してきた。
凪は射撃が苦手だった。
射撃には精密さが求められる。
それが凪には合わなかった。
凪は射撃訓練ではいつもビリだった。
だからかもしれない。
凪は剣を装備させた。
「はあ…!」
量産型武尊・肆は純粋種に斬りかかる。
根を斬り落とし、純粋種の懐に入る。
純粋種は槍のような根を体から噴き出す。
量産型武尊・肆はそれを回避して、腕の内臓バルカンで撃ち落とす。
「よし…!」
凪は純粋種を視界に入れたまま、笑みを浮かべる。
近接戦ができている。
そう自信を持った。
しかし。
純粋種が幾重もの槍の根を噴き出す。
それを切り伏せていく凪。
「捌ききれない…!」
神機は直感で斬れていた。
しかし、機械を動かすには制限がある。
槍の根が迫る。
「しまっ…!」
轟音。
根が撃ち落とされる。
凪は音のした方へ視線を向ける。
「豪隊長!」
上空では武尊弐型がライフルを構えていた。
「凪!
前に出すぎるな!」
武尊弐型は量産型武尊・肆に迫る根を撃ち落としていく。
「落ち着くんだ。
凪。お前が何かを抱えているのは知っている。」
豪は照準から目を離さず言う。
凪は心臓が強く脈打つ。
何も言っていない。
しかし、豪にはばれていた。
「何を抱えているかは知らない。
でも、焦るな。
焦ると死ぬぞ。」
豪の言葉に凪は疑問が浮かぶ。
(俺は焦っていた…?)
確かに澪やミズホノメ。
そして、焔のことで気が逸っていたのかもと思う。
そして、死。
死ねば誰も救えない。
凪は深呼吸する。
「すみません。
豪さん!」
量産型武尊・肆で根を斬り落とす。
「豪隊長だ!」
二人に笑みが浮かぶ。
「良いものがある。
お前には、それが必要だ。」
豪がモニターに映る凪に目配せする。
疑問の言葉を口にする凪に豪は言う。
「第二格納庫に行け。
お前の大事なものを預かってある。」
「大事なもの…?」
凪は何のことかわからない。
「いいから行け!
ここは任せろ。」
武尊弐型は地上に降りる。
そして、純粋種に応戦する。
凪は訳も分からず、基地に戻る。
大事なものを受け取りに。
量産型武尊・肆は格納庫に辿り着く。
重い扉がゆっくり開いていく。
真っ暗な空間。
蛍光灯の光が奥へと伸びる。
そこに巨大な影が静かに浮かび上がった。
「これは…!」
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