20話 神話の再来 20-3
砕かれた大岩の欠片。
それが真・神機を中心に集まっていく。
大岩が優しく包み込むように真・神機を隠していく。
大岩は元通りに戻った。
そして、ゆっくりと降りていき、大穴を塞いだ。
光が収まっていく。
残ったのは、燃える森だけだった。
凪は大岩から目が離せなかった。
脳が理解を拒む。
何も言葉を発することができない。
焔は神機・炎の中で絶望に打ちひしがれていた。
自分がやったこと。
自分の考えや想い。
その結果。
全てが自分を襲う。
神機・炎に纏う炎が消える。
胸にある琥珀の勾玉。
そして、神機の瞳の光が消える。
神機の巨体が力なく傾く。
ゆっくりと高度を失う。
地上へ落下した。
大都市で戦う豪にも光が見えた。
眩い光。
それがゆっくりと地上に降りていく。
「今度は何だ!?」
腕で光を遮る。
光を中心に、波紋のような光輪が広がっていく。
光輪が純粋種を包み込む。
怪獣たちは抵抗することもなく、光となって静かに天へ昇っていった。
「怪獣が…。」
豪はその光景に目を見開く。
光が収まっていく。
光輪が中心に集まり消えた。
豪は生唾を飲む。
(助かった…のか?)
安堵するが、理解が及ばない。
何が起きているのか分からない。
ふと、不安が過る。
「神機…?」
豪は急いでペダルを踏む。
そして、バーニアを吹かした武尊は森に戻っていった。
司令室が慌ただしく言葉が飛び交う。
「怪獣消失!」
「光が収束!原因不明!」
「何が起こったのです?」
軍服の男も何が起こったのか分からない。
司令室内でも分かるものはいない。
軍服の男は事実を受け止める。
「周囲の状況を報告しなさい!」
指示を出す。
司令室が一斉に動き出し、周囲の街を確認していく。
再度、慌ただしく声が飛び交う。
「怪獣完全消滅です!」
報告が入る。
司令室全体で息が漏れる。
軍服の男も胸を撫で下ろす。
「しかし…。」
軍服の男が言葉を止めて、モニターを隅から見ていく。
街の惨状。
兵器の残骸。
「勝利とは言えませんね…。」
軍服の男が独りごちる。
それが聞こえてか聞こえずか、隊員も肩を落とす。
「やることは沢山ありますよ!」
軍服の男が空元気で気合いを入れる。
街の復興。
怪獣や光の調査。
上への報告。
悔いてばかりはいられない。
その時、通信が入る。
モニターに豪が表示される。
「豪さん…!よく頑張ってくれました。」
軍服の男の言葉を遮って、豪が叫ぶ。
「回収班を寄越して下さい!」
モニターが切り替わる。
武尊が映しているものが投影されている。
そこに映し出されていたのは、横たわる神機と二人の男。
二人の男は気絶している様子だ。
「ん?」
軍服の男は、二人のうちの一人の男の違和感に気づく。
その男には角が生えていた。
「豪さん!貴方は位置情報を送りなさい。」
軍服の男は直ぐに指令を出す。
「神機と二人の男性を回収するのです!」
司令室はまた慌ただしく動き出した。
1週間後
凪は軍の施設のベッドの上で目が覚めた。
「ここは…?」
ここがどこだか分からない。
起き上がろうとする。
「つっ…!」
体が痛む。
(前にもあったな…こんな状況…。)
そう思い、その痛みに少し笑みを浮かべる。
ベッドに沈む凪。
(あのときは心配する人がいたけど…。)
凪は考えを巡らせる。
母、父。
澪ちゃん。
岩に包まれていく真・神機。
凪の顔が青ざめる。
「澪ちゃん!」
痛みも構わず、起き上がった。
「どうした!?」
豪がジュースを持って病室に飛び込んでくる。
そして、凪が起き上がっていることに目を見開く。
豪は持っていたジュースを放り出して、走り出した。
凪は豪が呼んできた軍医によって、検査されていた。
軍服の男、豪、その他数名が集まっていた。
凪は怪我で動けない。
しかし、心が逸る。
「み、澪ちゃんは…」
澪は霊体。
それに言っても分からないと思い直し、首を振る。
「神機はどうなりましたか?」
凪は豪に詰め寄るように聞く。
豪は軍服の男と目配せして答える。
「お前の神機は分からん。
もう一機の神機はこちらで回収した。」
凪はその言葉に現実を受け入れられないと目を落とす。
真・神機がどうなったかは自分一番よく知っている。
でも、受け入れられない。
その様子に、豪以外の人間は病院を退出する。
豪に任せた方がいいという判断だろう。
パイプ椅子に座る豪。
なんと声をかけていいか分からない。
「焔…。」
凪は思い出す。
もう一柱の神機が回収されたと言うことは。
「もう一人いたはず。
そいつは…?」
凪は豪に向かって聞く。
豪は首を横に振る。
「消えたよ…。
三日前に忽然と…。」
豪は凪の横のベッドを見る。
一つ空いたベッド。
凪もベッドを見る。
「消えた…?」
凪は拳を握る。
次の瞬間、ベッドを力いっぱい殴った。
このやりきれない思いをぶつけるように。
雷鳴。
一人の男が大岩の前に降り立った。
そして、大岩に触れる。
(御姉様…。)
焔に沢山の顔が思い浮かぶ。
八雷神の仲間たち。
御母様。
そして、御姉様。
(自分の人生はなんだったのか?)
そう考える。
(俺こそが疫病神なのかもしれない。)
焔は人生で"死"を見続けてきた。
項垂れるように手を離す。
もうどうしていいのかも分からない。
「お前何者だ!」
突然、声がする。
焔はゆっくりと振り返る。
そこには、銃を構えた軍人がいた。
(もうどうでもいい…。)
焔は力なく身を任せた。
(焔…。)
声が聞こえた気がした。
(御姉様…?)
雷鳴。
閃光が焔を包んだ。
光が消えたとき、そこに焔の姿はなかった。
焔はどこかに降り立った。
ここがどこか分からない。
どうしていいのか分からない。
焔は一歩踏み出した。
そして、当てのない旅へ出かけていった。
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