20話 神話の再来 20-2
澪が祈る。
(御兄様…。
今なら、御兄様の気持ちが分かる。)
御兄様があの時、大穴を封印した理由。
(大穴で腐った御母様を見た。
だから、託したかったんだよね。
未来に…。)
澪の力が増していく。
放つ光が強くなる。
(俺の役割。)
凪は考える。
(澪ちゃんを守ること!)
真・神機は盾を構える。
凪の周りに透明な障壁が現れる。
怪獣の攻撃。
それを障壁が受け流していく。
火雷神は気づく。
「浄化の光!
させない!」
神機・炎は真・神機に向かった。
豪は大都市に急行していた。
何れも守るべき場所だ。
しかし、体は一つしかない。
現在、最も激しい侵攻を受けている場所。
大都市。
純粋種はそこへ集中するように進軍していた。
まるで、規則性があるかのように。
武尊のモニターに大都市が炎に包まれている様子が映る。
もう侵攻が進んでいる。
「くっ…!」
豪はバーニアを吹かす。
武尊がスピードを上げる。
怪獣の上空を猛スピードで飛んでいく。
マシンガンを構える武尊。
市街地へ最も迫っていた純粋種へ、一斉射撃を開始した。
神機・炎が真・神機の障壁に剣を振り下ろす。
しかし、その障壁に剣が大きく弾かれる。
仰け反る神機・炎。
「おのれ…!」
「焔!やめてくれ!」
凪は叫ぶ。
「お前の言う御母様の願いって何だ?
教えてくれ!」
「時間稼ぎは聞かん!」
神機・炎は剣を何度も振り下ろす。
しかし、障壁は割れない。
「違う!
そうじゃない。」
凪は悲痛な顔で焔に問いかける。
「ただ知りたいんだ。
お前が…お前たちが信じる御母様の願いがなんなのかを…。」
神機・炎は剣を下ろす。
「凪!それは人間が語ることではない!」
「俺も神話時代に何があったかは知ってる!」
真・神機の中で見た。
ミズホノメ様の記憶。
ミズホノメ様の本当の願い。
「なら分かるはずだ!
人間の所業。
その結果が!」
神機・炎が剣を突きつける。
「知ってる。
だけど、人間は反省をした。」
凪は俯く。
反省。
それを加害者の免罪符にしてはいけない。
凪にもそれは分かっていた。
でも、知ってほしい。
焔がまだ知らない。
御母様が最後に残した「許し」を。
火雷神が奥噛みをする。
「それは…!」
凪は遮るように言葉を紡ぐ。
「分かってる。
でも、お前も知ってるだろう?」
凪は胸に手を当てる。
真・神機がそれに呼応するように、胸に手を当てる。
「この神機が生まれた経緯。
その真実を…!」
火雷神は子供の頃のことが頭を過る。
あの日、俺は始めて姉様にワガママを言った。
勾玉を持った時、記憶が蘇った。
そして、真実を知りたくて勾玉を欲しがった。
最初は姉様も渋っていた。
大切な御兄様の形見なんだと。
でも、最終的に姉様は僕に勾玉をくれた。
俺はその日の夜。
こっそり神社を抜け出して、神機に乗った。
神機の中は、凄く安心した。
御母様に抱かれているかのように…。
だけど、御母様に語りかけた。
その時、見たのは人間の業の深さ。
そして、人間の傲慢さ。
その時、合点がいった。
御母様の言葉。
「人間に復讐を。」
その意味を。
僕の罪を償うにはこれしかないと思った。
「人間は反省したと言うが、その結果はどうだ!」
神機・炎は剣を振る。
「御母様は死に。御姉様も死んだ!
それが結果だ!」
焔は叫ぶ。
「神機に乗っているなら分かるだろう?
御母様の願いは何だったのか…!」
火雷神も凪の言葉を遮るように言う。
「違う!
御母様は俺たちに言った。
人間に復讐しろって。」
「焔。」
澪が言う。
真・神機のコントロールが強制的に澪に移る。
「え?」
凪は驚いて澪を見る。
真・神機が両手を広げる。
障壁が消えていく。
「澪ちゃん何を…。」
「焔。その先を見るの。」
真・神機が優しく神機・炎を抱きしめた。
温かい。
子供の頃を思い出す。
澪に抱かれていたあの日の記憶。
焔の心の氷が溶けていく。
その時、視界が開ける。
記憶が焔になだれ込む。
八岐の大蛇と対峙する人間。
その視界の先。
見えるのは神社。
澪に育てられた神社。
神社が創建された。
その意味。
澪に御母様から琥珀の勾玉が渡される。
"許し"
焔は頭を抱える。
「何だ…この記憶は…?」
頭が混乱する。
これが本当のことだとすると。
眩い光が目の前を包む。
「何!?」
真・神機が光輝く。
そして、怪獣たちを浄化していく。
怪獣たちが光となって天に昇っていく。
「うわ!」
凪が真・神機から投げ出され、神機・炎の手の上に転げ落ちる。
「澪ちゃん…!
ダメだ!俺も行く!」
神機・炎の手の上で凪が叫んでいる。
焔は何が起きているか分からない。
「凪…。」
真・神機が凪を見る。
「焔…。」
今度は神機・炎の中を見透かすように焔を見る。
「仲良くしてね。」
澪が微笑む。
「ダメだ!」
凪の頬に涙が伝う。
神機・炎の手から落ちそうになる程、手を伸ばす。
「御母様を頼むね。」
澪が言う。
その時、焔にも意味が分からなった。
「御姉様!」
焔の声も虚しく、真・神機が光の玉になる。
その玉が大穴に向かう。
大穴の上空に紋様が浮かぶ。
それが大穴を塞ぐように降りていく。
「澪ちゃあああん!」
「御姉様ああああ!」
二人の声が重なった。
大穴は元の通り大岩に塞がれていた。
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