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神薙 ~日本神話×ロボット。怪獣を救う神機の物語~(50話達成!)  作者: さく


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2話 母の想い 2-3

凪は、 澪を静かに横たえる。

そして、 立ち上がった。


「僕がやるよ」

背を向けたまま、 澪へ語りかける。

「どうすれば、 この像…… 動かせるの?」


「ダメ……」

澪が、 震える身体で起き上がろうとする。


「凪には…… 関係ない……」

けれど、 力が入らない。

再び倒れ込む。


その間にも、 怪獣の猛攻は止まらない。

内部が激しく揺れる。


「ぐっ……!」

凪は歯を食いしばる。

「時間がないんだ!」

澪に振り返る。


「僕なら大丈夫。 だから…… やらせて!」

澪は、 しばらく凪を見つめていた。

やがて、ゆっくりと、 琥珀の勾玉を外す。

「これがあれば…… この機神は動かせる……」

澪は、 震える手で勾玉を差し出した。


「凪の…… 思うままに……」

凪は勾玉を受け取る。

首へ掛けた瞬間。


心臓が高鳴る。

機神と、 感覚が繋がる。

視界。

鼓動。

力。

すべてが流れ込んでくる。


「これが…… 機神……!」

凪は拳を握る。

「やるぞ……!!」




怪獣の中で、 母は微かに反応した。

(……何かが、 触れた……?)

澪。

あの少女が、 自分の記憶へ触れた。


そして同時に。

母もまた、 澪の記憶を感じ取っていた。

炎。

優しい手。

別れ。

愛。


「……っ」

母は、 ゆっくり目を開く。

腕の中では、 勇斗が静かに眠っている。


そして、怪獣の視界を通して、 町の惨状が映る。

壊れた建物。

炎。

逃げ惑う人々。


「なに…… これ……」

何が起こっているのか、 分からない。


ただ一つ、 分かることがあった。

自分の中から、 黒い感情が溢れている。

憎い。

怖い。

奪われたくない。

その悪意が、 怪獣を暴れさせていた。




凪が腕を振るう。

それに呼応するように、 機神の腕が動いた。

迫っていた根を、 薙ぎ払う。


「いける……!」

凪の顔に、 驚きと高揚が混ざる。

機神が、 まるで自分の身体のように動く。


「武器は!?」

凪は澪へ叫ぶ。


「ダメ……」

澪が、 痛みに耐えながら身体を起こした。

「あの怪獣の中には…… 人がいるの……!」


「人……?」

凪の表情が固まる。

「何で…… 怪獣の中に人がいるんだよ……?」


機神が、 ゆっくりと立ち上がる。

「そんなの…… どうすればいいんだよ……!」

凪は、 混乱したまま澪へ叫ぶ。

「どうやって…… あの中から取り出すんだ!?」


「分からない……」

澪の声は、 苦しげだった。


次の瞬間。

怪獣の根が、 再び襲いかかる。


「っ……!」

凪は、 必死に払い除ける。

だが、 それしかできない。


「ぐっ……!」

押される。


「とにかく…… やるしかない!」

凪は、 右手へ意識を集中させた。

“剣”。

そのイメージに呼応するように、 光が集まる。

機神の右手。

そして、 凪の右手にも。

一振りの剣が現れる。


「……!」

凪は、 そのまま剣を振り下ろした。

迫っていた根が、 まとめて断ち切られる。


その瞬間。

「ぐぎゃあああああ!!」

怪獣が、 悲鳴のような咆哮を上げた。




根が斬られた瞬間、激痛が走る。

「っ……ぐ……!」


母は、 咄嗟に声を押し殺した。

腕の中では、 勇斗が眠っている。

起こしたくない。

怖がらせたくない。


「大丈夫…… 大丈夫だから……」

けれど、怪獣越しに見える巨人。

「あれも…… 勇斗を奪うもの……?」


黒い感情が、 母の中で膨れ上がる。

怖い。

奪われる。

また失う。


「うぅぅ……!」

母は頭を抱える。


「私は…… 私はぁぁぁ!!」

その感情に呼応するように、 怪獣が咆哮を上げた。

次の瞬間、無数の根が、 四方八方へ噴き出す。

建物を砕き、 道路を裂き、 町を破壊していく。





「このままじゃ…… 町が終わる……!」

凪は、 迫る根を剣で薙ぎ払う。

そして、決死の覚悟で、 怪獣の懐へ飛び込んだ。


「どこにいる!?」

焦った声で、 澪へ問いかける。


澪は、 凪の真意を測れないまま答える。

「腹の…… 中心……」


凪は前を見据える。

覚悟を決めた瞳。

「ごめんなさい……!!」


剣を突き出す。

怪獣の腹部へ、 深々と刃が突き刺さす。


「ぐぎゃあああああ!!」

怪獣が絶叫する。

裂けた腹部。

その穴へ、 凪は腕を突っ込んだ。


「ぐっ……!」

怪獣へ触れた瞬間。

再び、 澪へ記憶が流れ込む。

暗闇。

苦痛。

母。

「お母さん…… 苦しんでる……」

澪が、 震える声で呟く。


「その子を…… 渡したくないのね……」

「えっ……?」

凪の動きが止まる。




「あの子の…… 御母様……」

母は、 流れ込んできた澪の記憶を見る。

優しい手と温もり。

愛されていた記憶。


「……一緒なのね」

母は、 腕の中の勇斗を見る。

静かな寝息と小さな温もり。

その姿が、 澪と重なる。


「勇斗……」

母は、 涙を零しながら、 そっと勇斗の頬を撫でた。

「ママの愛を…… 覚えていて……?」




「えっ……?」

凪が、 思わず手を止めた。


その瞬間、怪獣の内部から、 無数の根が噴き出す。

「っ!?」

衝撃が奔る。

機神の身体が、 大きく宙へ弾き飛ばされた。


「ぐあっ!!」

内部へ激震が走る。

澪も凪も、 床へ叩きつけられる。


腹を押さえながら、 凪は身体を起こした。

「くっ…… どうすれば……」


その時。

「……ん?」

怪獣の動きが、 止まっていた。

「なんだ……?」


ゆっくりと怪獣の腹部が、 裂けるように開いていく。

その中から現れたのは。

赤ん坊を抱いた、 一人の女性だった。


「あの人……」

澪が、 小さく呟く。

女性の身体は、 黒い根に侵食されている。

けれど、その腕の中の赤ん坊だけは、 根に蝕まれていなかった。


女性は、 勇斗を高く抱き上げる。

そして。

掠れた声が、 響いた。

「この子を…… 勇斗を……」


機神が、 ゆっくりと怪獣の腹部へ近づいていく。

そして、 胸部の琥珀の勾玉付近まで手を運んだ。

凪は、 その巨大な手の上へ降り立つ。

機神は、 壊れ物を扱うように、 凪を女性の元へ運んでいった。


「この子……」

凪は、 勇斗をそっと抱き寄せる。

小さく、温かい。


「この子を…… 勇斗を…… お願いします……」

少し安心した顔を見せる。

しかし、女性の声は、 もうかすれていた。

「これで……良い……」


次の瞬間。

女性の身体へ、根が絡みついていく。

「がっ……!?」

根から悪意が女性へ流れ込んでくる。


「あっ……!」

女性は、 ゆっくりと怪獣の中へ戻っていく。

「貴女も一緒に……!」

凪が叫ぶ。


女性は、 静かに首を横へ振った。

「ワタシハ…… モウ……」





轟音が響く。

空を裂くように、 F-2編隊が飛来する。


「戦闘機……!?」

凪が空を見上げた、 その瞬間。

F-2の翼下から、 ミサイルが放たれる。


「待っ──!」

着弾と同時に爆炎が、 怪獣を包み込んだ。


「っ……!」

凪は咄嗟に、 勇斗を抱き込む。

それに呼応するように、 機神の腕もまた、 凪たちを守るように閉じた。


衝撃と熱風が襲う。

「俺ら諸共かよ!!」

凪が叫ぶ。


その時、視界の端に、 黒い靄が見えた。

怪獣の腹部。

そこにいた女性から、 禍々しい靄が溢れ出している。


「ワタシノ…… 勇斗ニ……」

女性の瞳が、 黒く染まっていく。

「攻撃シタナァァァ!!」

怪獣が咆哮する。


次の瞬間、無数の根が、 空へ向かって噴き出し、F-2編隊へ襲いかかる。


凪は、 機神の内部へ戻る。

そして、 勇斗を澪へ託す。


「ダメだ…… 自衛隊を攻撃したら……!」

凪は、 怪獣へ向き直る。


怪獣はなおも、 F-2へ向かって根を伸ばしていた。

F-2もまた、 怪獣を脅威と判断したのか、 回避しながらミサイルを撃ち込んでいく。


「やめろ…… やめろぉ……!!」

凪の声は届かない。


凪は、 機神の腕で根を掴む。

必死に止めようとする。

その時だった。


「私を…… 斬って……」

「なっ……!?」

凪の動きが止まる。

剣を持つ手が震える。

「そんなの……できるわけ……」


「あなたが私を斬れば…… 怪獣を倒したとして…… あなたたちへの攻撃は止む……」

なおもF-2への攻撃が続く。

避けきれず、根の攻撃に当たり、墜落する戦闘機も…


掠れた声。

「お願い…… 勇斗を…… 守って……」


澪が、 静かに涙を流す。

その腕の中で、 勇斗が泣き始めた。


「っ……!」

凪は、 その泣き声を背中に受ける。

そして、ゆっくりと、 剣を構える。


「……ごめんなさい」

機神が飛び出す。

一閃。

巨大な斬撃が、 怪獣を真っ二つに切り裂いた。


一瞬の静寂。


(ありがとう)

確かに、 そう聞こえた気がした。

次の瞬間、怪獣は、 音もなく崩れ去った。




怪獣との戦闘が終わった直後。

自衛隊は、 町の救援活動に追われていた。

瓦礫の撤去。

負傷者の搬送。


そして、崩れ去った怪獣の調査。

研究チームが、 怪獣の残骸を調べていた。

「これが…… 怪獣の細胞……?」


その時だった。

雷鳴。


「……?」

研究員の一人が、 空を見上げる。

瞬間、雷が落ちた。

閃光と轟音。

研究チームは、 一瞬で灰と化した。


立ち込める煙。

その中心へ、 “何か”が降り立つ。


人の形をしているが、 人ではない。

それはゆっくりと、 怪獣の残骸へ歩み寄る。


そして、黒い種を拾い上げる。

「十分か」

低い声で呟く。


「悪意は、 よく育った」

黒い種を、 地面へ埋める。

その瞬間、無数の根が、 地中へ広がっていった。


「我が名は、 黒雷神」

男は、 愉快そうに嗤う。

「人間よ…… もっと悪意に満ちろ」


無数の雷鳴が響く。

「ハハハハハハ!!」


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