19話 雷神 19-2
澪は目の前の光景に恐怖した。
「あれは…!」
神話時代。
御母様から琥珀の勾玉を授かった。
あの時に戦った最初の怪獣。
凪も神機・炎の後ろを見る。
七首の龍。
ミズホノメの記憶で見た龍だ。
(首が1本足りない…?)
神話の記憶では、八首の龍だったはず。
(雷神が七柱集まって、七首の龍…?)
「まさか…!」
凪が焔を見る。
「そう!
あれは俺たちだった。」
焔は振り向き、七首の龍を見る。
「あの時、俺たちは御母様の命で人間を根絶やしにするつもりだった。」
焔は真・神機を見据える。
「しかし、姉様たちに阻まれてしまった。」
澪は驚く。
焔と澪はもうあの時に会っていた。
「あの時も阻まれた。」
焔は大岩を見る。
「大穴に侵入してきた姉様たちは御母様の姿を見て、逃げていった。」
澪と御兄様が大元を叩くと意気込んで、大穴に入ったあの日だ。
澪たちは敗走した。
そして、あの時追ってきていた八つの悪意。
「あれは焔たちだったの…?」
「そうだよ!
あの日、俺たちは光で種に戻された。」
神機が両手を広げる。
焔は語り続ける。
「封印され俺たちも御母様も御母様が生み出した怪獣も出られなくなった。」
焔が目を瞑る。
黒い靄に包まれていく。
(マテ。)
何処からか声がした。
七首の龍の中心。
一際大きな首の口が不気味に動く。
(ココハ、ワレラノミデヨイ。)
「何を言うんだ、兄様!」
焔の黒い靄が静まっていく。
「俺たちが八柱集まり、八岐の大蛇となれば、封印など…!」
口を挟むように大雷神が叫ぶ。
(クルゾ!)
真・神機が動く。
神機・炎はそれを止める。
(ワレラノミデヤッテミセルワ!)
首が大岩を向く。
表情は分からない。
しかし、焔は嫌な予感がする。
(ソチラハマカセタゾ。)
七首の龍が大岩に侵攻する。
そして、七つの首が大岩に噛みつく。
その時、大岩が光り輝いた。
浄化の光。
あの時の光。
「グウウウ!」
七首の龍が唸り声を上げる。
「兄様!」
神機・炎が真・神機に拳を振り抜いた。
そして、焔は七首の龍の下に向かおうとする。
(カマウナ!
ワレラノヒガン…)
(オマエ二タクス!)
七首の龍はさらに前に出た。
大岩に印が現れ、光輝く。
七首の龍を近づけまいとバリアを張っている。
「封印が…!」
澪の悲痛の叫び。
言うが終わるが先か凪が真・神機を動かす。
しかし、神機・炎が立ちはだかる。
「焔、退いてくれ!」
二柱の神機が掴み合う。
押し合い。
どちらも一歩も譲れない。
真・神機は一瞬力を抜く。
押し返そうとした神機・炎がわずかに体勢を崩した。
その隙に頭突きを叩き込む。
そして、殴り吹き飛ばす。
真・神機が七首の龍へ一直線に飛ぶ。
神機・炎は近くの巨木を引き抜き、投げつけた。
真・神機はそれを躱す。
その一瞬の隙に、神機・炎が再び真・神機の前へ回り込む。
そして、神機・炎が剣を抜く。
鞘から火花が散る。
剣が抜かれるに従って、炎を纏う。
神機・炎は炎を纏った剣を構える。
「本気か…?」
凪は半信半疑だ。
焔と命のやりとりをする。
澪の顔が青ざめる。
焔の本気を感じ取る。
凪も剣を抜く。
真・神機が剣を構える。
神機・炎が動く。
剣を振り下ろす。
二柱の剣が打ち合った。
上空では、剣の打ちあう音が響く。
鉄と鉄が火花を散らしていた。
地上では大岩に挑む七首の龍。
光により今にも浄化されそうだ。
「グウウウ!」
唸り声を上げても尚、前に進む。
一歩。
一歩とバリアを割らんと前に進んでいく。
(イマイマシイ…!)
大雷神が吐き捨てる。
光に押し返されそうになるのを、堪える。
黒雷神が勢いをつける。
そして、バリアに噛み付いた。
(お頭様…。)
(黒…!)
大雷神が黒雷神を横目に見る。
黒雷神の首が力を込めて噛み付く。
(私が先に逝く。
そして、私が最初の楔となろう!)
さらにバリアを割らんと力を込める。
黒雷神の首が光に飲まれていく。
巨体が粒子となって崩れ始める。
(御母様…。
今会いに行きます。)
黒雷神は光の中へ消えた。
バリアにヒビが入った。
二柱の巨体が打ち合っては離れ火花を散らす。
一進一退の攻撃が続く。
剣が打ち合う。
衝撃波が走る。
「焔!」
真・神機は袈裟斬りに剣を振る。
神機・炎はそれを受け止める。
「凪!」
神機・炎は剣を弾き、真・神機に剣を突き出す。
真・神機はそれを躱し、剣を振り下ろす。
「どうして、人間を苦しめるようなことをする!」
凪は叫ぶ。
叫びながら、剣を振り抜く。
「人間であるお前の言えることか!」
焔は感情に任せて、体をぶつける。
そして、真・神機を地上に叩き落とす。
「ぐっ…!」
コクピットが揺れる。
衝撃。
地面に横たわる真・神機に馬乗りになる神機・炎。
拳を振り上げる。
真・神機は咄嗟に盾を構える。
盾に拳が振り下ろされる。
「これは御母様の願いなんだ!」
神機・炎は盾を殴り続けた。
(そう…願いじゃ。)
土雷神の首が黒雷神に続く。
バリアのヒビに向かって、噛み付く。
(御母様の願いを叶えてあげたい!)
若雷神も土雷神に続く。
咆哮を上げ、バリアに頭突きをする。
(それが儂らの罪滅ぼし…。)
土雷神と若雷神に神話の記憶が蘇る。
鳥のさえずり。
「ホッホッホ。」
老人が顎に蓄えた髭を擦る。
そして、その周りを飛び回る子供。
「ミズホノメ様もお優しいのぉ
人間の手助けをしようとは。」
老人の顔は慈愛に満ちている。
「手伝ってあげようよ!」
子供が言う。
「そうじゃの。」
人間が耕す土に手を当てる。
そして、栄養を流し込む。
子供は辺りを飛び回る。
「ほい!」
その掛け声とともに芽が出る。
二柱の姿は人間には見えていなかった。
(儂らが人間に植物を与える手助けなどせなんだら…。)
土雷神が力を込める。
(御母様は死ななかったかもしれない…。)
若雷神も光に負けず、頭突きする。
(なら…!)
二柱の声が重なる。
土雷神がヒビを広げる。
若雷神の頭突きでバリアが音を立てて砕けた。
二柱の姿は静かに光に消えた。
少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【ブックマーク】や【⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎】で応援していただけると、更新の励みになります!




