16話 武尊 16-1
武尊はライフルで怪獣の根の鞭を受け止める。
豪は落としたカートリッジを見る。
「くっ…!」
隙を見る。
「ここだ…!」
武尊は身を翻し鞭を躱す。
そして、カートリッジに飛ぶ。
「掴め!」
カートリッジを掴んだ武尊は後方に飛ぶ。
そして、カートリッジをつける。
地上でオペレーターをしている茜がモニターを見る。
アクティブ。
「ライフルいけます!」
茜が豪に叫ぶ。
「分かってる!」
武尊はライフルを構える。
照準をあわせる。
トリガーを引く。
轟音。
ライフルの反動が武尊の腕を震わせる。
実弾は根の鞭を貫き、爆ぜるように吹き飛ばした。
「よし!」
そして、次々と鞭を撃ち落としていく。
怪獣がよろめく。
怪獣の咆哮。
「どうだ!」
豪は怪獣を見据えて叫んだ。
「よし!」
「いいぞ!」
司令室がざわめく。
凪は豪の勇士をモニターで見る。
「凄い…。」
澪と顔を見合わせる。
「そうでしょう。
私共の武尊はあなたの神機にも劣らないでしょう。」
軍服の男が凪に向かう。
「確かに強いです。」
凪は頷く。
だが、それだけではない。
豪さんだからこそ、あそこまで動かせる。
「ほう?
認めるのですか。」
驚いた顔で凪を見る。
凪は軍服の男の真意が分からない。
「はい!戦う仲間が出来て嬉しいです。」
モニターを見ながら、豪の戦いに興奮する。
「ふん…。」
(損得ではなく、本気でそう思っているのか…?)
軍服の男もモニターに目を移した。
怪獣の咆哮。
鞭を撃ち落とされ続けた怪獣は怒る。
そして、根が蠢き始める。
「何だ!?」
怪獣の背から根の鞭が複数現れる。
そして、無差別に攻撃し始める。
地上のバギーでモニターしているレイと茜にも鞭攻撃が来る。
「くっ…!」
レイが急いで、バギーを運転し攻撃を避ける。
「大丈夫か!?」
豪も攻撃を避ける。
そして、二人の心配で叫ぶ。
「大丈夫です。」
茜が戦況を確認しつつ、言う。
「マシンガンモードを推奨します!」
茜はバギーの揺れに耐えつつ言う。
「了解!」
豪はライフルモードから武器選択。
マシンガンモードにする。
武尊はライフルモードからマシンガンモードに変形させる。
武尊の銃口が火を噴く。
連続する銃声が会場に響き渡る。
降り注ぐ弾丸が、根の鞭を次々と撃ち砕いていく。
豪が状況判断をして戦っている。
しかも、チームで。
それに目を輝かせる凪。
軍服の男はそれを横目で見て指示を出す。
「サーモグラフィーモードに切り替えなさい!」
司令室のモニターの一つが怪獣を捉えている。
それがサーモグラフィーモードに切り替わる。
凪もモニターを見る。
「なに?」
怪獣がサーモグラフィーでスキャンされていく。
「あ!」
怪獣の中に人がいるのが分かる。
怪獣の体温。
根の温度と人間の体温では違いがある。
それを使った人間の特定方法。
凪は感心する。
(人間の技術すげぇ!)
軍服の男が命令する。
「武尊にデータを譲渡!
人間を…。」
「引き出しなさい!」
凪はその言葉に耳を疑った。
バギーのモニターにサーモグラフィーのデータがくる。
「隊長!怪獣の中心に人がいます!」
武尊は根を撃ち落とし続ける。
その間に、武尊のモニターに映し出されたサーモグラフィーを見る。
「了解!」
(しかし、この猛攻撃じゃ近づけないな…。)
豪は戦況分析をする。
撃ち落としても、撃ち落としても再生する根。
それを対処しつつ、懐に入る。
「さあ…。どうする?」
「俺たちが注意を引きます!」
レイの言葉が聞こえる。
「茜!」
レイが茜に目配せする。
そして、バギーを運転する。
「了解!」
茜がバギーに装備されたマシンガンに手をかける。
スイッチを押す。
マシンガンが連続で火を吹いた。
「お前ら…!」
豪の胸が熱くなる。
武尊はライフルを背部ラックへ戻す。
腰部から神機を模したソードを引き抜く。
刀身が陽光を受けて輝いた。
「ダメだ!」
凪の声が司令室に響く。
「人間を引き出すだけじゃ…!」
「あなたのスタイルは知っている。」
軍服の男が凪の言葉を遮って話す。
「怪獣の中の人間を説得する。」
モニターをまっすぐ見つめる。
「どうやってそうしているのかは分からないが…。」
軍服の男は一息つく。
「我々には説得している時間もなければ、その術もない。」
凪に向かう軍服の男。
「しかし、人間を取り出せば怪獣が消滅していることは分かっている。」
鋭い眼光で凪を見る。
「なら、私たちは私たちのやり方でやる。」
「違う!それでは解決にならない!」
凪の言葉を手で制する軍服の男。
凪は怪獣から人間を無理矢理、引き剥がすことの心配をしていた。
澪が凪の裾を掴む。
澪も同じ考えのようだった。
豪の耳にも司令室のやりとりが聞こえていた。
(神機のパイロットすまん…!)
息を吐く。
(お前の言ってることは分かる。
だが、やるしかないんだ…!)
バギーのマシンガンで一瞬、怪獣の気がそれた。
「今だ!」
豪はペダルを一気に踏み込む。
バーニアが火を噴いて怪獣に突撃する。
幾つかの鞭が武尊を襲う。
それを腕に内蔵されたバルカンで撃ち落とす。
回避をしながら、バルカンを撃ち込んでいく。
怪獣の懐に入る。
「斬る!」
一閃。
怪獣の腹を袈裟斬りにする。
腹に穴が開いた。
怪獣が咆哮を上げる。
武尊は根が腹を修復する前に手を突っ込む。
サーモグラフィーモニターで人間との距離を図る。
「ここだ!」
武尊が人間を掴む。
人間を潰さない様にプログラムされている。
そして、人間を引き出していく。
根が千切れる。
「ぎゃああああああああ!」
女の悲鳴が響く。
武尊には聞こえない。
武尊は人間を引き抜いた。
茜はマシンガンを怪獣の腹に叩き込む。
それに呼応するように、武尊も離れながら、バルカンを叩き込む。
爆散。
根が灰のように崩れ落ちる。
会場に静寂が訪れる。
そして、大歓声が湧き起こる。
「やったぁー!」
「武尊だ!」
「勝ったぞ!」
その歓声に応えるように手を上げる武尊。
凪は武尊の手を映すモニターを見つめる。
女の身体へ、黒い根が静かに吸い込まれていく。
「…。」
澪も気付いていた。
二人だけが、その光景を見つめていた。
司令室は歓声に包まれる。
誰一人、その異変には気付いていなかった。
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