15話 代償 15-3
歓声が上がる。
基地から飛び出した武尊の中で、豪はその光景を見ていた。
「とりあえず、受け入れられたみたいだな…。」
アクロバット飛行を披露する。
さらに歓声が上がる。
「掴みはバッチリだ」
そのまま観客の前に武尊を下ろす。
豪はプログラムを確認する。
外では、アナウンサーが武尊の紹介をしている。
日本初とか技術面を大きく紹介している。
「大丈夫かよ…。」
豪は心配になりながらも、次のプログラムを追っていく。
「次は射撃の模擬練習だな。」
豪は操作をして、銃の中身を実弾からペイント弾に切り替える。
的が現れる。
「あれを打てばいいんだな」
モニターに照準が出る。
モード選択。
ライフル。
武尊がオートで銃をライフルモードにする。
「よし!」
豪が照準をあわせる。
照準が揺れる。
それが中心にくる。
豪は引き金を引かせた。
轟音と共に、発射。
ペイント弾が的の中心を撃ち抜く。
的の中央に鮮やかな色が弾ける。
会場から大きな歓声が沸き起こった。
「ふぅ…!」
豪は安堵する。
下では盛り上がっているようだ。
的が次々に現れる。
「次は複数…!」
モード変更。
サブマシンガンモード。
豪が操作すると、武尊がオートで銃をサブマシンガンモードに切り替える。
「いくぞ!」
武尊は滑らかに銃口を走らせ、次々と的を撃ち抜いた。
豪は少し笑みを浮かべる。
地上では歓声の嵐だった。
「おお…!すげぇ!」
凪は純粋に楽しんでいた。
次々と的の中心にペイント弾を当てていく武尊。
周りの観衆も嬉々としてそれを見ていた。
肩車された子供が武尊に手を振った。
武尊はそれにサムズアップで返していた。
「豪さん…サービス精神旺盛だな…。」
凪は少し苦笑いしながら、澪と顔を見合わせる。
次は剣のようだ。
怪獣型の的が現れる。
「次は剣か…!」
少し神機が持っているものと似ている。
武尊が地を蹴る。
地面が揺れる。
少し走ると、バーニアが吹く。
そして、剣を振り上げる。
怪獣型の的を袈裟斬りにした。
「人間がこんなものを作れるなんて…!」
澪も目を見開き、驚いていた。
試作機のときは、戦闘で手一杯だった。
改めて見ると凄い。
怪獣型の的が複数現れる。
「次は複数だね!」
武尊が一体一体斬り伏せていく。
「おお…!」
二人で小さく拍手する。
「お楽しみのようで。」
落ち着いた低い声だった。
振り返ると、胸いっぱいに勲章を付けた軍服姿の男が立っていた。
若雷神は楽しそうに武尊模擬演習を見ていた。
「人間はあんなおもちゃも作れるんだ!」
木の上で飛び跳ねる。
まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のようだ。
「あんなに早く動けるんだ…!」
武尊の動きを観察する。
「いけ!やれ!」
武尊が的を攻撃するたび喜んだ。
不意に女に目を向ける。
「まだかなぁ…。
僕のおもちゃとあのおもちゃ。」
武尊と女を交互に見る。
「どっちが勝つんだろう?」
また、飛び跳ねる。
「あ…!きた!」
若雷神は目を輝かせる。
「始まる、始まる!」
女が頭を抱えて苦しみ始める。
そして、地中から根が飛び出す。
それが蠢き、女に絡みつく。
「…!」
若雷神が歓喜する。
人々は、悲鳴をあげて逃げていった。
「あれは…!」
凪は人が根に包まれて怪獣になっていくところを始めて見た。
凪は澪と顔を見合わせる。
二人は頷き、琥珀の勾玉を手に取る。
しかし。
凪の前に手が差し出される。
軍服の男だ。
「今回はこちらにお任せいただきましょう。」
軍服の男が武尊に手を向ける。
「あの機体が人々を守れることを、証明しなければなりません。」
軍服の男は一息ついて言う。
「神機ばかりに頼るわけにはいかないのです。」
「しかし…!」
凪が反論しようとする。
「武尊は人類の希望とならなければならない。」
軍服の男が怪獣に目を向ける。
「我々も退避した方がよさそうですな。
こちらへ。」
凪たちは軍服の男の誘導のまま、基地へと入った。
「怪獣…!何で?」
豪は人々の中から現れた怪獣に驚く。
「観客は!?」
地上を見る。
自衛隊が人々の退避を促している。
茜とレイが率先して誘導をしている。
怪我人はいないようだ。
豪は怪獣を見据える。
「来るか…?」
操縦桿を握る手に力が入る。
怪獣が咆哮を上げる。
その時、通信が入る。
「観客の避難、完了!
ここからは模擬演習から実戦に移行する。
怪獣に応戦せよ!」
怪獣が攻撃体制に入る。
「了解!」
武尊の銃をライフルモードにする。
そして、怪獣を見据える。
「来い!」
下でオペレーターをしている茜が焦って叫ぶ。
「隊長!ライフルにペイント弾が装填されたまま!」
「何!?」
急いで、カートリッジを変える。
武尊がライフルのカートリッジを排出。
入れ替えるシークエンスに入る。
しかし。
怪獣から根の鞭が飛んでくる。
「くっ…!間に合わねぇ!」
豪はそれをライフルで受け止めた。
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