14話 復讐 14-4
合体怪獣・析の動きが止まる。
一か八かだった。
「いけた…!澪ちゃん!」
「うん!」
澪が祈る。
「見えた…!あの人の心…!」
澪は苦しそうに目を伏せる。
「でも…歪んじゃったんだね。」
澪が悲しむ。
「どういうこと…?」
凪が聞き返す。
「凪!」
凪は前を向く。
合体怪獣・析が鎌を振り上げていた。
男は記憶を思い出して、混乱する。
頭を抱える。
突然、罪悪感が男を支配する。
「ダメだ…!ダメだ…!」
頭を掻きむしる。
苦悩する。
頭を抱えたまま、歯を食いしばる。
突然、冷静になる。
「俺はやっちまったんだ。」
手が震える。
血に染まった自分の手が脳裏によみがえる。
「もう戻れない…。」
止まっていた根が蠢く。
析雷神は種に戻りかけていた。
(させない…!)
析雷神の悪意を男に流し込む。
真・神機にやられた。
このままでは負ける。
(このままじゃ…終わらない…!)
析雷神は男に悪意を送り込み続けた。
真・神機は打ち込まれる鎌を剣で受け止める。
両手の鎌の連撃を剣で受け止め続ける。
「くっ…!どうしてだ!」
凪は攻撃を防ぎながら、叫ぶ。
「あの人…ヤケになってる…。」
澪が苦虫を噛み潰したような顔をする。
「それに…。」
澪が男の先を見る。
「まだ、雷神の影響が残ってる!」
「なら!」
真・神機が鎌を剣で弾く。
もう一本の鎌が振り下ろされる。
それを盾で防いで、剣を構える。
「どこにいる?」
凪が聞くと、澪が凪の背に手を当てる。
澪が見ているものが凪にも見えてくる。
「男に近い!だけど…!」
凪は剣を腹に刺す。
真・神機の剣は男の脇をすり抜ける。
「いけた…!?」
刺した先に何かが見える。
「まだ、やらせん。」
黒雷神が析雷神だった種を回収する。
雷鳴。
黒雷神と析雷神が消えた。
「あいつは…!?」
凪は混乱する。
「あれも八雷神の一人。」
澪は眉間に皺を寄せる。
「全員復活してるの…?」
その時。
根が剣を排除しようと蠢く。
剣が抜ける。
そして、怪獣の傷口を塞いでいく。
「雷神は消えたのに…!」
凪が怪獣を見据える。
そして、怪獣が鎌を構えた。
真・神機と合体怪獣は剣と鎌で打ちあう。
合体怪獣から声が聞こえる。
「もう戻れない…。
俺は一線を越えた!」
合体怪獣の鎌の連撃。
真・神機は剣で対処する。
「それはあんたがそう思い込んでるだけだ!」
剣で怪獣の鎌を斬り落とす。
「ぐあ…!」
根が蠢き直ぐに腕が再生する。
「そんなこと…!お前に何がわかる!」
直ぐに鎌で連撃。
真・神機は剣と盾を駆使して鎌の攻撃を防いでいく。
「なら!全部吐き出せ!」
連撃を押し込む真・神機。
「くっ…!」
合体怪獣は押されはじめた。
(あれ…?)
怪獣は攻撃を続ける。
しかし、男は考える。
(俺の行きつく先はなんだ?)
男は自問していく。
人を傷つけた。
死へ追いやろうとした。
実際に…。
(俺は帰っても居場所がない…。)
怪獣が動きを止める。
(俺が生きていても、また誰かを傷つけるだけだ…。)
真・神機は剣を下ろす。
「何だ…?」
(そうか…。終わりか…。)
男は天を見上げる。
(俺は…もう…)
怪獣が鎌を自分の腹に持っていく。
「ダメ!」
澪が顔を青ざめさせて叫ぶ。
その言葉に、凪も気付く。
男のしようとしていることを。
凪の血の気が引いていく。
「やめろ!」
男がゆっくり目を瞑る。
怪獣が腹に鎌を刺した。
男は目を開ける。
鎌が自分に刺さっていない。
驚いて顔を見上げる。
真・神機が合体怪獣の腕を止めている。
「生きることを諦めるな…。」
真・神機は必死に合体怪獣の腕を止める。
凪が力を込める。
「でも…もう終わりだ…。」
男は項垂れる。
「償え!逃げても何も始まらない。」
凪は男を見る。
「でも…。」
男の力が抜ける。
怪獣の腹から鎌が抜け、腕を下げる。
ゆっくり真・神機の手を合体怪獣の腹に持っていく。
「あんたは生きて償わなきゃいけない。」
「これだけの罪をどうやって償えばいい?」
「それは俺にも分からない。」
凪の言葉に男は顔を上げる。
胸の奥から、押し殺していた感情が込み上げてくる。
「何で…?」
「でも…考えるんだ。」
凪は神話時代の記憶を思い出す。
澪の棺を作る人々。
神社を建立する人々。
助け合う人々。
「それは一人ではできない。
だから、一緒に考えよう。」
男は涙を流す。
そして、根が男の身体から落ちていく。
真・神機の手の上に降り立った。
男は初めて泣き崩れた。




