14話 復讐 14-3
14-3
真・神機のコクピットに入る。
そこには、不思議な空間が広がっていた。
「操縦桿とかはいいの?」
澪は不思議そうに聞く。
今までのように、機械的なものはなくなっていた。
「うん。この方が神機を近くに感じれるんだ。」
凪が怪獣を見据えて、構える。
それに連動して真・神機も構える。
まるで自分の体のように動かせる。
二人は怪獣を見る。
怪獣は以前と違う禍々しさを感じる。
雷神との合体怪獣。
「まさか…自分を怪獣にしちゃうなんて。」
澪にも見えていた。
雷神が、自らを触媒にしたことを。
「それに、あの怪人…。」
凪は怪人のことを思い返す。
今までとは違う。
純粋悪かもしれない。
「完全に…悪に飲まれてしまっているのか…?」
記憶の中の人間たちを思い出す。
ミズホノメを裏切る人間。
神社を火の海にする人間。
凪はゆっくり目を開ける。
「受け止める。
それが悪だとしても…!」
剣を握る。
真・神機は怪獣に剣を構えた。
析雷神は動揺していた。
「あれは…!」
原初の神機に酷似している。
あの時…。
八首の龍。
析雷神はその一つの首だった。
「あの時の戦いの再現というわけね…!」
舌なめずりをする。
「今回は一柱だけど。」
八首の一つ一つの中に意思があった。
中心に位置する首が大雷神。
その周りの首が他の雷神。
「そっちも一柱。」
神話時代の戦い。
神機は二柱で挑んできていたのを思い出す。
析雷神は真・神機を睨む。
そして、力を込めていく。
男はその激しい悪意の奔流に飲まれそうになっていた。
「ぐっ…!これは…!」
自分の力が増大していることに気付く。
鎌を構える。
怪獣の鎌に電気が走る。
「シャー!やれる!」
「やつを倒す!」
男は神機を見据える。
怪獣の中はどす黒い悪意に満ちていった。
先に動いたのは、合体怪獣・析の方だった。
雷を纏った鎌を振り下ろす。
凪は析雷神との戦闘時の手刀を思い出す。
受けると雷ダメージが来る。
なので、真・神機は剣を構えたまま攻撃を躱す。
合体怪獣・析もそれを読んでいたのか避けた先に鎌を振る。
盾でガードする真・神機。
雷がスパークする。
しかし、真・神機は無事だった。
盾がエネルギーシールドのようなものを作り出し、真・神機を守った。
真・神機の番は間髪入れずに剣を振り上げる。
避ける合体怪獣・析。
その隙を見逃さず、懐に入り込みタックルする。
そして、合体怪獣・析を持ち上げる。
「ここで暴れるな!」
真・神機は怪獣を抱えたまま大地を滑る。
地面がえぐれ、土煙が舞い上がる。
そのまま公園を抜け、人家のない河川敷まで押し込んだ。
真・神機は少し距離を取る。
「はぁ…はぁ…。」
凪は息を整える。
(流石、合体怪獣。
雷神の力もあり、強くなっている。)
そう思いつつ、怪獣を分析する。
雷神の力を使いながらも、男の殺意のある戦闘力とセンスで攻撃してくる。
「厄介だな…。」
凪は一人ごちる。
その後ろで、澪は黙り込んでいた。
「澪ちゃん…?」
凪は澪の心配をする。
「あの人…。」
澪は考え込む。
「黒くて、暗くて…。心が見えない。」
男も息を整える。
「前よりも強い…。」
不気味に嗤う男。
「だが、俺も強くなったぞ!」
悪意を増幅させていく。
(あの時の俺とは違う!)
幼少期の男。
物言えず、イジメられる。
そのことで恨みを募らせていく。
そして、虫を摘む幼少期の男。
男が摘んだ虫を見る。
虫は暴れているが、男に摘まれてどうにもできない。
男は初めて優位に立てた気になった。
(俺が優位に立つ。
あいつより…!上に…!)
析雷神はその男の姿を見て、悦に浸る。
「そうよ…。もっと、もっと悪意を増幅させなさい。」
悪意の奔流が両者に流れる。
根が不気味に蠢く。
「ぐっ…もっと…もっと力を…!」
析雷神が雷を身体に纏う。
合体怪獣・析の身体に電流が流れる。
口から雷のビームを吐き出した。
「何だ…?」
神機が右腕を高く上げている。
男は何をするか分からない。
神機の右腕についた盾に光が集まっていく。
中心が温かい光を貯めていく。
その時、析雷神は気付く。
「避けなさい!」
真・神機が腕を振り下ろす。
刹那。
盾から光の奔流が放たれた。
光が合体怪獣・析にぶつかる。
「がああああ!」
析雷神はその光に苦しむ。
「焼ける…!」
しかし、黒い靄が晴れていく。
「俺は…。」
男はその光から目を離せなかった。
男は記憶を思い出す。
幼少期に俺はイジメられていた…。
何故だか分からない。
気付けば、蹴られ殴られ、バイ菌のように扱われた…。
そんなある日、俺は一人で遊んでいた。
一人の方が楽だから…。
アリを見つけた。
摘んで持ち上げた。
アリの暴れているところを見た。
アリは俺に敵わない。
初めて、俺が勝つことができた。
何かの優位に立つことの意味を知った。
そこからもイジメられ続けた。
しかし、自分も優位に立てる場所を知っていた。
標的はどんどん変わっていた。
アリ。
ほかの虫。
動物。
子供…。
俺はもう止められなかった。
傷つければ、俺を怯えた目で見る。
それが快感だった。
気付けば、俺は"切り裂き魔"と呼ばれるようになっていた。
ニュースに俺が出るようになった。
世間に認められた気がした。
そこからは箍が外れた。
自分の居場所はここだと思った。
あの女を刺した瞬間、俺は一線を越えたと思った。
怖くなると思った。
罪悪感に潰れると思った。
だけど。
俺の胸を満たしたのは、興奮だった。
あのロボットを倒した時も…!
男は現実に帰ってくる。
真・神機の光が収縮していく。
「俺は…」




