12話 快楽の果て 12-2
「あれは…!」
凪と澪は見覚えないロボットを発見する。
そのロボットも怪獣に向かっていくようだ。
通信が入る。
「よう。神機。」
豪が先に声をかける。
「えっ!豪さん…!?」
凪は二つの意味で驚かされた。
豪さんがロボットに乗っていること。
そして、日本にも神機以外の巨大ロボットが造られていたこと。
「成り行きでな。
足手まといにはならないようにする。」
豪は嘘をつく自分に嫌気がさす。
(どこまでできるか分からんがな…。)
豪は一息置いて答える。
「よろしくな。」
凪の顔が和らぐ。
仲間ができた感覚になる。
「はい!」
並走して飛ぶ二機のロボット。
「見えたぞ!」
豪が叫ぶ。
豪は試作機の操縦桿を握り直す。
凪はその声を聞いて、前を向く。
黒煙が空へ立ち昇る。
二機は速度を上げた。
建物が鎌で両断され、轟音とともに崩れ落ちていた。
「あら…?」
析雷神は怪獣の肩の上から上空を見上げる。
そこには、二機のロボット。
「まさか…!もう一柱の神機も復活したの?」
上空を目を凝らして見る。
もう一機は、よく似ているが神機ではない。
「あら…。違うみたい。」
口角を上げる。
「あんなものを作っちゃうなんて。」
挑発するように唇を舐める。
「でも、二対一とは卑怯ね。」
析雷神は何処からともなく、剣を取り出す。
「私も暴れちゃおうかしら…?」
二機のロボットを見据える。
澪は怪獣の肩にいる人型の何かに気付く。
「あれは…!」
顔が青ざめていく。
「澪ちゃん…?どうしたの?」
凪が聞き返すが澪の耳には入らない。
御兄様と大穴を脱出したとのことが、頭を過る。
暗闇の中、脱出を試みる二機の神機。
後方には八柱の雷神。
雷で攻撃される。
負傷する御兄様。
御兄様により封印される大穴。
「雷神…!」
苦虫を噛み潰したような顔になる澪。
「雷神?」
凪は怪獣を検索する。
肩の上に誰かいる。
「あれ…人?」
人とは言ってみたものの、人とは違うことに気付く。
長身で細身の男のようだが、角が生えている。
そして、舌が異様に長い。
「あれは雷神…。御兄様の…敵。」
澪の顔に怒りが見える。
「御兄様の…。」
話に聞いた雷を操る敵。
「もしかして、これまでの怪獣事件って…!」
凪が気付く。
澪はゆっくり頷く。
「多分…そう。
これまでの戦いは…。」
(神話からの因縁…!)
薄々気付いていた。
いや、そう思わないようにしていた。
情報は揃っている。
根、怪獣。
(私は…向き合うときがきたのかもしれない…。)
澪はゆっくり目を瞑る。
勾玉を握りしめる。
(御母様…。)
神機と試作機が地上に降り立つ。
そして、怪獣と析雷神と対峙する。
怪獣の中で男が叫ぶ。
「奴は…!」
男の目が神機にいく。
「俺の居場所を奪った奴…!」
男が手を振り上げる。
怪獣が鎌を構える。
「待ちなさい!」
析雷神が声をあげる。
「神機は私にも因縁があるの。」
析雷神は男の顔を試作機の方に向ける。
「こっちはあなたにあげる。」
男が析雷神に抗議の視線を向ける。
「あなたの欲求はそっちでも満たせるわよ。」
挑発的な視線を向けて、男の頬を軽く叩く。
「私たちを倒すために作った、初めてのロボットみたいだから…。」
ゆっくりと指で男の頬を撫でる。
「倒せば、人を傷つけられるし、一面大見出し記事になるんじゃないかしら?」
男の口元がゆっくり歪む。
「確かに…!」
男は俄然、燃えてきたといった様子で試作機を見る。
拳を握り、やる気が出る。
「はは…!」
男は試作機にターゲットを定める。
凪は神機に剣を構えさせる。
試作機も銃を構える。
一瞬の静寂。
先に動いたのは、怪獣側だった。
怪獣が試作機を狙い、鎌を振り上げる。
そして、析雷神が神機に向かって、飛んでくる。
「何!?」
凪は驚く。
「統率がとれてる!?」
神機は怪獣の対処をしようとする。
しかし。
析雷神が雷のボールを手に作る。
それを空に放り投げる。
雷鳴。
一瞬、空気が止まる。
「裂…雷!」
神機に雷が落ちる。
「がああああああ!」
「きゃあああああ!」
凪と澪の叫びが響く。
「空気をも裂く雷の味…。いかがかしら?」
「神機!」
豪は神機に雷が落ち楽し見て叫ぶ。
「他人の心配してる場合かよ!」
怪獣の中で男が叫ぶ。
そして、鎌を振り下ろす。
連撃。
豪は攻撃を躱し、銃で鎌を受け止める。
「くっ…!」
豪はボタン操作をして、武器を切り替える。
試作機の腕に内蔵されたバルカンを怪獣に向かって放つ。
「ぐっ…!」
男はその攻撃を受けて、咄嗟に飛び退く。
「やるな…。」
豪はすぐに主兵装へ切り替え、引き金を引く。
怪獣はその実体弾を切り刻む。
「次はこっちの番だ。」
怪獣は地面を蹴る。
男は直ぐに間合いを詰め、試作機に連撃を繰り返す。
試作機に回避行動をさせる。
さっきよりも隙がない。
豪は避けるしかなかった。
雷の衝撃が神機のコクピットを貫く。
気が飛びそうだ。
こんな衝撃は初めてだ。
怖い。
初めて、凪は戦いのなかで恐怖を覚える。
手が震える。
汗が滲む。
「澪ちゃん…。」
凪は声を振り絞って出す。
「だい…じょうぶ…。」
澪も無事のようだ。
しかし。
「強い…!」
凪は析雷神を見る。
析雷神は不気味に嗤っている。
「久しぶりね。神機ちゃん。」
析雷神からの声が聞こえる。
「あの時の借り…返すわ!」
析雷神は五指を綺麗に整えて、天に突き上げる。
空気が震える。
雷鳴。
五指に落ちる雷。
析雷神の手が雷を纏う。
ニヤリと嗤って、神機に飛び込む。
「雷撃斬。」
神機に雷の手刀で攻撃する。
それを神機は剣で、受け止めた。
どちらも防戦一方だった。
そして、こちらは未完成の試作機。
(万事休すか…?)
汗ばむ手を拭う。
「諦められるか!」
豪は銃で鎌を受け止める。
そして、それを払う。
「前に出る!」
銃で怪獣を殴打する。
そして、腕のバルカンでゼロ距離射撃をする。
試作機の腕が爆発する。
ゼロ距離の射撃に耐えられなかった。
豪は直ぐに飛び退く。
豪は息を切らしながら爆炎を見つめる。
「やったか?」
射撃による爆炎が晴れる。
怪獣の脇腹が抉れていた。
「よくもやったな!」
怪獣の中で男が叫ぶ。
男の悪意により、修復されていく脇腹。
根が蠢いて、傷を塞いでいく。
「何!?」
そう呟くと同時に怪獣からの連撃。
「さっきより早い…!」
受けきれずに、次々と斬り落とされる四肢。
「ぐっ…!」
豪は怪獣を見る。
振り上げられた鎌。
一閃。
鎌はコクピットを抉るように切り裂いた。




