12話 快楽の果て 12-1
基地内にけたたましく鳴り響く警報音。
豪は研究所で怪獣出現をの報を知る。
出撃命令が下る。
豪は直ぐに、戦闘機に向かう。
しかし。
「無茶です!」
後ろから研究員の悲痛な叫びが聞こえる。
豪が振り返ると、研究員が電話をしていた。
研究員が電話を耳に当てたまま豪に向く。
躊躇する様子で、豪を見ている。
嫌な予感がする。
背中に嫌な汗が伝う。
豪はこれから言われることの予想がついた。
「マジかよ…。」
上層部は何も分かっていない。
「マニュアル読んだだけだぞ……。」
豪は戦闘機を降りる。
研究員に近づく。
豪は巨大な試作機を見上げる。
まだ装甲も調整途中。 実戦など想定していない機体だった。
「上からの命令です。 」
研究員は一瞬目を瞑る。
そして、ゆっくり目を開けて、豪を見据える。
「試作機で出撃してください。」
豪はその言葉に絶望した。
男は怪獣の中で、高揚感に震えていた。
男が腕を振れば、怪獣も腕を振る。
怪獣の腕には、鎌が付いていて建物を切り刻んでいく。
そうやって切り刻むたび、あの女が死の恐怖に震えた顔が脳裏によみがえる。
今、怪獣の足元では、人々が悲鳴を上げて逃げ惑っている。
自分が人々の生死の手綱を握っている。
その恐怖に歪んだ顔を見るだけで、胸が熱くなった。
「ははは…!」
男は目を見開く。
「もっと…!もっと、傷つけたい…!」
そして、腕を振りあげた。
逃げ惑う人々を見下ろし、男は恍惚と笑った。
サイレンが鳴り響く。
怪獣が現れたサインだ。
凪と澪は顔を見合わせる。
もう怪獣が出ないといいと会話した。
その舌の根が乾かぬうちに現れた怪獣。
凪と澪は辟易する。
「やっぱり、出たか…。」
凪は小さく息を吐く。
「行こう。」
凪と澪は神機に走る。
「次の人は何に囚われてるんだろう?」
澪が自問するように聞く。
「分からない…。
でも、救うだけだよ!」
凪は操縦桿を握り、元気に答える。
豪との約束。
救う。
凪はそれを胸に刻む。
「うん!」
澪も凪の後ろで、神機の制御に集中する。
神機は飛び出していった。
析雷神は町に侵攻する怪獣の肩に立っていた。
そして、増幅する男の悪意に顔を綻ばせる。
「いいわ・・・!その調子よ。」
男からあふれる悪意が怪獣に流れ込んでいく。
その根の脈動が増していく。
そして、男の致命傷を負わせるという欲求が増していく。
「さぁ・・・、その最後の理性を壊しなさい!」
析雷神は男に叫ぶ。
一拍置く。
男は荒い息を繰り返していた。
根はなおも脈動を続ける。
析雷神は怪獣の中の男を見つめ、恍惚と笑う。
「あなたは、死の瞬間を見たとき完成する!」
析雷神は高らかに嗤った。
豪は試作機に乗り込んだ。
狭いコクピット。
名前すらない。
しかし、命令が下った。
豪は深呼吸する。
戦闘機に乗った時ですらこんなに緊張したことはない。
モニターに研究員が映る。
「今できる限りの状態で送り出します!」
研究員がそういうとパソコンを操作し始める。
金属音が聞こえる。
四方から金属アームが現れ、素体の試作機に装甲が装着されていく。
豪はモニターを見つめる。
そこには、装甲の装着状況が示されていた。
「弱いところばかりじゃないか・・・。」
コクピット周りは、強固に設計されている。
しかし、関節部分やまだ、装甲が間に合っていないところもある。
最後に巨大な銃を持たせる金属アーム。
「今はここまでです・・・。」
研究員は目を伏せる。
そして、ゆっくり顔を上げる。
「武運を!」
その言葉を聞いて、豪は腹を決める。
「試作機出るぞ!」豪はペダルを踏み込む。
轟音。
試作機がゆっくりと格納庫を歩き始める。
一歩踏み出すたび、基地全体が震える。
バーニアが青白く噴き上がる。
試作機は飛び上がった。




