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神薙 ~日本神話×ロボット。怪獣を救う神機の物語~(50話達成!)  作者: さく


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11話 選択の後に 11-3

男は次のターゲットを狙っていた。

闇夜に紛れて、人を切る。

そして、その人の苦痛の顔を見るのが快感だった。


今日の獲物はカッターナイフだ。

カチカチと音を鳴らしながら、刃を出していく。

木陰に隠れて、人が通るのを待つ。


「来た…!」

公園を女が通る。

狙いを定める。

女は男に気づかず、通り過ぎていく。


男の眼光が光る。

女に後ろからゆっくりと近づいていく。


一閃。


女の悲鳴が夜の公園に響く。

女は腕を押さえてうずくまり、苦痛に顔を歪める。


男はその表情を見つめ、満足そうに目を閉じた。

「やっぱり、この瞬間が一番いい。」


「その顔だ……。」

口元がゆっくり歪む。

「みんな、その顔をする。」


男は振り返ることなく、その場を後にした。

女のうめき声だけが夜の公園に残る。

「生きてる実感だ……。」




析雷神は男の行動を観察していた。

「分かるわよ。その感覚。」

男の表情と同様に、析雷神も興奮していた。


次に女を見る。

「悶え苦しむ姿…堪らないわよね…。」

恍惚な表情で空を見上げる。


走り去る男に目を戻す。

「次のステップね。」


雷鳴。


析雷神は静かに微笑む。

「その快感、もう後戻りできなくしてあげる。」

雷鳴とともに姿を消した。



焔のことを聞いてから、凪の頭の中にはずっとその名前が残っていた。


澪もそれ以上は話さなかった。

いや、話せなかったのかもしれない。


だから、凪も無理には聞かなかった。

いつか話してくれる。

そう思うことにした。


それでも、胸の奥の引っかかりは消えない。

だからこそ、凪は気を紛らわせるようにスマホを開いた。

「澪ちゃん、これ見て?」

スマホを澪に近づける。


『現在の切裂きジャックまた現れる!』

という記事だ。


「最近、怪獣出ないと思ったら、こういう記事が出て嫌になっちゃうよね!」

凪は眉間に皺を寄せて、記事を読み進める。


「防犯カメラの写真も載ってる。」

公園に設置された防犯カメラの写真だ。

画像は鮮明ではないが、目出し帽とマスク姿の人物が映っていた。

腕には特徴的な傷がある。


凪の表情を見て顔が曇る澪。

澪がスマホを覗き込む。

「私はこっちの記事がいいな。」

それは、面白ワンちゃん特集だ。


「この子、可愛い。」

凪は澪の言う通り、タップして癒される。

「こっちの方がいいね。」

「うん。」


澪と凪は可愛いワンちゃんの画像を読み進めていく。




男は自分に記事が戻ってきたことを喜んでいた。

「神機とか言うロボットより、俺を大々的に記事にするべきなんだ」


新聞の記事を切り出す男。

そして、自分の栄光の1ページかのように壁に貼り付ける。

特に自分が写った写真は拡大して、貼り付ける。


「ふふふ…。」

自然と笑いが込み上げてくる。


「忘れさせてはいけない…。」

男は包丁を取り出す。

「もっと俺を忘れられなくしてやる。」


包丁に映る自分を眺めて笑う。




今日は河川敷の高架下に身を隠す男。

暗闇に隠れられるように、全身黒で統一した。


人を待つ時の心臓の高鳴りも堪らない。

「誰か…早く来い…。」

男は辺りを見渡す。


「来た…。」

夜道を一人、スマホを見ながら歩く女がいた。

その女がゆっくり近づいてくる。


女はスマホに夢中で、男に気づかず通り過ぎていく。

男は包丁を構える。


一閃。


(躱された…?)

女はしゃがみ込んでいた。

そして、男の包丁を奪おうとする。


(抵抗された…!)

男は包丁を奪われまいと、必死に動き回る。


その時。


女の腹に深く突き刺さる包丁。

血が止め処なく、溢れている。

女が腹の包丁に手を当てる。


声が出ない。

女が手についた血を見る。

そのまま、倒れ込んだ。


「ひっ!やっちまった!」

男は動揺する。

深く刺すつもりではなかった。


「コイツが抵抗したから悪いんだ!」

男は自分に言い聞かせるように何度も呟く。

血のついた手で頭を抱える。


その悲痛な声に人が集まってくる。

(ヤバい!)

男は足早に逃走した。




男が立ち去ると女はゆっくり立ち上がる。

「ふう…。」

そして、腹に刺さった包丁の柄を握る


「ぐっ…。」

ゆっくり包丁を抜いていく。

音を立てて、包丁が落ちる。


腹の傷口が蠢く根によって修復していく。

「ふふふ…。さて、これからどうなるかしら?」


人が集まってくる。

女に心配の声を向ける。

「大丈夫。」

人々が安心した表情になる。

女の口元がゆっくり吊り上がる。


女の姿が揺らぐ。

その後ろ姿が変わっていき析雷神になる。


析雷神が微笑む。

「じゃあねぇ。」


雷鳴。


一瞬、辺りが白く染まる。

人々はその場に倒れ込んだ。

析雷神の姿はもうなかった。




男は家に帰って、ベッドに包まった。

布団の中で頭を抱えて大泣きする。


(ミスった…!)

頭を掻きむしる。


(くそっ…!くそっ…!やっちまった!)

ベッドを強く叩く。


(それに包丁も残してきた…!)

歯が折れるくらい噛み締める。


「でも、あの女の表情に興奮したんじゃなぁい?」

男はベッドを捲る。

誰もいない。


あの女の刺された時の表情を思い出す。

「ははは…。ははは…。」

手が震える。

男は気づく。

興奮していると。


涙を流しながら、口角が上がっていく男。

「素晴らしいわ。」

男の耳元で声がする。

振り返る。

また、誰もいない。


その時。


男の背中に種を植え付ける。

「えっ…?」


析雷神は種を押し込んでいく。

「その快感、もっと味わわせてあげる。」


析雷神は高らかに嗤う。


男の背中から黒い根がゆっくりと這い出す。

男はその異変にも気づかず、笑い続けていた。

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