11話 選択の後に 11-2
黒雷神は浄化で傷ついた伏雷神を抱えていた。
「くっ…!あの光…!」
「ホッホッホ、酷くやられたのぉ。」
土雷神が愉快そうに言う。
「土か…。」
伏雷神を降ろす。
「あの時の光を見た。」
土雷神の顔が険しくなる。
「覚醒し始めておるというのか?」
黒雷神も険しい顔で答える。
「おそらくな。」
雷鳴。
「それなら、本気で神機を潰さないとね?」
細身の長身の男が後ろから現れる。
「析…。」
析雷神はナイフを舐める。
「神機を潰してあげる。」
「あの時の借り…返してあげるわ」
目が鋭くなる。
神機を倒すことを視野に入れている。
「次は私が行くわね。」
析雷神は雷鳴とともに消えていった。
析雷神は人々を眺めていた。
「いい子いないかしら…?」
目が鋭く、一人の男に目が止まる。
「あの子…。」
口角が上がる。
男を見透かしたように見つめる。
男は自宅に入る。
手に持ったスマホを見る。
「くそっ!」
スマホを持つ手に力が入る。
男はニュースを見ていた。
『神機!またまた大活躍!
自衛隊と連携!』
という記事だ。
「この場所は俺の場所だったのに…!」
男は画面をスクロールする。
なのに、前まで載っていたはずの自分の記事がない。
過去の新聞記事が壁一面に貼り付けられている。
自分の事件を切り抜いたスクラップ 。
『現代の切裂きジャック現れる!』
以前ならそんな記事が大見出し記事になっていたはずだ。
機神が出るまでは自分が世間を賑わせていた。
「ぐっ…!あのロボット…!」
男は奥噛みする。
スマホを地面に叩きつける。
析雷神は一部始終を見ていた。
「ふふ…すごい悪意ね…。」
析雷神はその男にターゲットを定めた。
豪は部屋から出た。
神機の情報共有。
神機を逃がしたことの追求。
怪獣の正体。
色々と上層部と話をさせられた。
「疲れた…。」
豪は普段この言葉を使わないようにしている。
しかし、ポロリと言葉が出てしまう。
今回、纏められたことはこうだ。
あのロボットが神機という名前だということ。
(これは公表された。)
神機は味方であるということ。
(あの男のことを隠して、味方だと説明するのは難しかったな…。)
怪獣の中には人間がいること。
しかし、自衛隊には救出する術がないこと。
(あの男にも何故だかわかっていなかった。)
「はあ…。」
溜息が出る。
これを納得させるのに苦労した。
豪は廊下を歩き出す。
次の行き先は研究所だ。
数カ月先に完成する試作機を見に行けとのことだ。
しかし、神機を調査したとは言え、一年ほどで完成した試作機。
(神機を参考にしただけで、ここまで早く完成するものなのか…?)
豪は一抹の不安を覚えつつ、研究所に向かう。
凪は日課である神社の掃き掃除をしていた。
それを、感謝の眼差しで見ている澪。
「最近、怪獣出ないね。」
男の怪獣から一ヶ月、その間、怪獣は出ていなかった。
澪は町の様子を見る。
新しく建物が建ってきている。
「うん。このまま出ないといいけど…。」
少し不安気に言う澪。
凪も同じ意見だ。
このまま、怪獣が出なければいい。
そう思う。
そうすれば、怪獣によって不幸になる人も怪獣になる人もいなくなる。
凪は神機を見上げる。
神機は元の状態に戻り、龍の甲冑は無くなっている。
あの龍は、湖に戻ったのだろう。
龍の活躍もここで終われれば、いいと思う。
安らかに眠っていたのに、起こすのも御兄様に可哀想だ。
などと凪は思う。
ふと、凪は御兄様の神機の像に目をやる。
「ねえ、澪ちゃん。
御兄様の神機は湖で修理しないの?」
凪は疑問に思ったことを素直にぶつける。
澪は御兄様の神機の像に目を向ける。
「御兄様の神機の勾玉がないの。」
澪が目を伏せる。
「だから、治せなくて…。」
澪は苦笑いする。
直せなくても直せなかったのかと反省する凪。
しかし。
「え?ないの?」
素っ頓狂な声を上げる凪。
「うん…。焔に持たせてたんだけど…。」
「焔…。」
昔、澪と凪とよく遊んだ男の子だ。
いつの間にか、消えてしまった。
「今、焔はどこに?」
凪は子供の頃、親友とも呼べる焔が、突然いなくなって澪を責めたことがある。
その時のことを恥じつつも聞く。
「分からないの…。」
澪はもう一度、苦笑いする。
「え…?」
凪は言葉を失った。
豪は口をあんぐりと開けて、試作機を見上げる。
まだ、ハリボテだ。
これに乗って、怪獣と戦えというのか?
そんな疑問が豪の頭に浮かぶ。
数カ月後には、試作機のお披露目パレードをする予定だったはず。
豪はそう聞かされていた。
「マジか…。」
豪からはそんな言葉しか出なかった。
研究員が近づいてくる。
研究員は申し訳なさそうな顔をしている。
恐る恐るといった感じで豪に話しかける研究員。
「上層部からは、何としてもパレードに間に合わせろと…。」
豪がゆっくり目を合わせる。
言葉が出ない。
「神機ばかりに任せておくわけにはいかんと…。」
豪はもう一度、試作機を見上げる。
「私どもも、あなたの安全は考慮して開発しますので…。」
豪は頭を抱えた。
その巨大な試作機は、ただ静かにそこに立っていた。




