11話 選択の後に 11-1
怪獣の腹が開く。
中に光が溢れて入ってくる。
そこに巨大な手が差し伸べられる。
「来い!」
そう聞こえた。
しかし。
男は膝を抱えて、閉じ籠もる。
「僕はもう…。」
開いた腹が根で蠢く。
神機を押しつぶすように、修復しようとする。
それをこじ開ける神機。
「逃げるな!」
神機が更に奥に手を伸ばす。
(逃げる…?そうか…僕は…)
オウンゴールをした幼き日の男。
非難される。
後ろを振り向き、泣きながら帰る男。
機械を壊す男。
冷たい視線。
荷物をまとめて逃げる帰る男。
「逃げて何が悪い!」
男が叫ぶ。
「分からないんだ!どうすればいい!」
泣きながら叫ぶ。
凪はその叫びを、受け止める。
「俺も分からない…。」
一息つく。
「分からないなら、分からないでいい。
でも、俺は頼った。」
澪の顔が浮かぶ。
次に豪。
そして、御兄様。
「なんとかなる。だから、頼れ。」
更に神機の手を差し出す。
男が手を差し伸べる。
男の手が神機に触れる。
その瞬間。
爆発。
怪獣の中が大きく揺れた。
豪は唖然としていた。
爆炎が怪獣と神機を包み込む。
「各機!攻撃をやめろ!」
根の蠢きが止まる。
怪獣が崩れ落ちていく。
豪は唾を飲み込む。
爆炎が晴れる。
そこには神機がいた。
手に何かをつつみ込んでいる。
神機が手を開く。
そこには、気絶した男がいた。
豪は大きく息を吐く。
「良かった…。」
豪は帰還命令を入れる。
「おい!神機!大丈夫か?」
神機に無線を入れる。
雑音が入る。
「大丈夫です。」
豪はホッと胸をなで下ろす。
しかし。
「でも、痛かったッス。」
豪は苦笑した。
「帰還してくれ。」
一拍置く。
「今度はゆっくり話をしよう。」
神機と戦闘機は基地に帰る。
「やべ…!」
凪が声を上げる。
「え?」
澪が驚いて、声を上げる。
「どうしたの?」
澪が恐る恐る聞く。
「このままついていったら、捕まるんじゃない?」
澪は目を丸くする。
(いつもの凪だ…。)
澪は吹き出す。
「何だよ…。真剣なのに…。」
凪は不満そうに呟く。
澪はそんな凪を愛おしく見つめる。
「その時は、助けてあげるって。」
凪はホッと息を吐く。
「うん。頼んだよ。」
そう言う凪の顔に御兄様が重なる。
澪が見たイメージ。
神機が力を得る前。
御兄様の湖から登る龍のイメージ見えた。
(御兄様…。助けてくれてありがとう。)
澪はそっと胸の勾玉を握った。
神機は基地に降り立った。
そして、ゆっくり手を地上に降ろしていく。
自衛隊の隊員たちが、神機の手に集まっていく。
神機が手を開く。
そこには、気絶した男。
自衛隊員は急いで、男を搬送する。
豪がヘルメットを取り、近づいてくる。
凪は急いで、天衣を口元に巻く。
そして、神機の手に乗り、降りていく。
豪と凪が対峙する。
沈黙。
「ミサイルを撃ってくるとは思わなかったぞ。」
凪が声を低く喋る。
「そのキャラやめろよ。
お前…、湖にいたやつだろ?」
豪は単刀直入に聞く。
凪は狼狽える。
「な、何のことか分からないな。」
声が上擦る。
低い声が出せなくなる。
豪は高笑いする。
「そうかよ。」
一息つく。
「あの男…。大丈夫なのか?」
凪は担架に乗せられて、運ばれる男を見る。
「多分」
凪は怪獣の最後を思い出す。
いつもと違い、男を根から引き剥がす形になってしまった。
いつものように、目を覚ますか分からない。
一瞬の沈黙。
「いつもああやって、説得してるのか?」
凪は空を見上げる。
「怪獣の中の人…。」
一呼吸置く。
「いつも何かに囚われてる。」
凪は視線を落とす。
最初の母親は赤ん坊を渡したくなかった。
2人目の男は怒りに支配されていた。
3人目の女は認められたかった。
そして、今回は。
「だから、いつも話を聞いた。」
凪は視線を上げる。
そこには、何か確信があるような目をしていた。
「俺は説得はしてない。」
その晴れやかな顔に豪は安心する。
しかし。
豪は考える。
これは自衛隊ではできない。
神機がいないときはどうする?
3回目の時みたいに複数出たら?
その時は選択しないといけない。
「なあ。その救いたいという姿勢…。」
一息ついて、凪を見る。
「変えるなよ?」
神機は静かに基地を飛びたった。
強い風圧の中、豪は神機を見上げていた。
基地から上層部の方々が走ってくる。
「おい!やつを捕まえなかったのか?」
豪は上層部を一瞥したあと、神機に姿勢を戻す。
そして、豪は飄々と答える。
「逃げられちゃいました。」




