10話 選択 10-4
男は自らの浅はかさを呪い、どん底の気分に沈み込んでいた。
「終わりだ…。」
生きる価値がないと思う。
「もういい…。」
男は死んだ魚の目をしていた。
女の怯えた顔。
森や町の惨状。
戦闘機の残骸。
ゆっくりと身体を動かす。
怪獣も僅かに動く。
「まだ…動かせる。」
神機がこっち振り向いた。
攻撃する。
「終わらしたい」
「もう…殺してくれ…。」
男が力なく呟く。
その絶望に呼応するように、怪獣の根が激しく脈動する。
「やめろ!」
凪は叫びつつも、根を斬り、自衛隊のキャンプ地を背に守る。
「ここには、女の人もいるんだぞ!」
凪は守りきれないと悟り、盾を出す。
盾の裏で、攻撃を凌ぐ。
「ぐっ…!」
その時。
爆発音が聞こえる。
自衛隊が怪獣に応戦している。
「やめろ!その男には戦意がない!」
そうは言うも、攻撃は止まない。
被害が町に及ぼされるかもしれない。
自衛隊の選択も間違っていないとわかる。
しかし。
「くっ…!」
(このままじゃ…。)
凪は考えを巡らせる。
豪は攻撃を再開した怪獣に困惑する。
「女が出てきたから、終わりじゃないのか?」
豪は回避行動を取りつつ、怪獣を観察する。
喰われたのが女だったことを思い出す。
「まだ、いるのか?」
終わっていない。
そのことに気づくが先か。
爆発。
「味方がやられた!」
豪が悲痛に叫ぶ。
通信機から指示が入る。
「攻撃せよ!」
短い指示。
しかし。
(まだ中に人がいるんだぞ!)
ミサイルスイッチカバーを外す。
スイッチに指を置く。
指が震える。
「くっ…!」
「各機!攻撃しろ!」
豪はミサイルのスイッチを押した。
「そうだ…。もう終わらせてくれ…。」
男は自暴自棄になっていた。
「俺はいつもそうだ…。」
友達がほしくて、サッカーの中に入る子供の頃の男。
点を取らないといけないということに集中する。
味方からボールを受け取り、オウンゴールする。
味方の落胆の声。
仕事を頑張る大人になった男。
認めてほしくて、指示以上のことをする。
機械を壊す。
同僚からの冷たい視線。
「今回も…。」
女からの笑顔。
笑顔を向けてほしくて、守る。
女の怯えた顔。
頬を伝う涙。
「僕は…ダメな男だ…。」
その絶望に呼応するように、根が激しく脈動する。
怪獣は攻撃を続ける。
凪は悲しんでいた。
男は分かり始めていた。
自衛隊は人々を守るために戦っている。
どちらの気持ちも分かる。
しかし、色々なことが重なって、戦いになっている。
「やめろ!」
凪は無意識に叫んでいた。
神機を飛ばす。
剣を振り上げて、怪獣の胸を斬る。
「そこから出てこい!」
神機の腕を怪獣の中に突っ込む。
そして、手を差し出す。
「来い!」
ハッと澪が何かに気づく。
「その人、自分を終わらせてもらおうと思ってる。」
澪は悲しい顔をする。
凪は怒る。
「逃げるな!」
その時。
爆発が起こる。
豪は凪の叫びを聞く。
瞬時にスイッチから指を離す。
「神機…!」
神機が怪獣に向かっていく。
神機は怪獣を斬り、中に腕を入れる。
「何をしてる…?」
豪は旋回しながら、動向を探る。
「助けようとしてるのか…?」
神機の手の中に男が見える。
その時。
僚機から放たれた無数のミサイルが、神機へ向かって一直線に飛ぶ。
「やめろ!撃つな!」
無数のミサイルが神機と怪獣に降り注いだ。




