10話 選択 10-3
霧の中から光が溢れ出す。
その光は霧を晴らしていく。
「なんだ…!これは…!」
黒雷神と伏雷神は光を遮るように腕を前に出す。
「くっ…!この光…!」
黒雷神の脳裏に、あの日の光景が蘇る。
八雷神は大穴から脱出する二機の神機を追いかけていた。
黒雷神は雷を発し、神機を攻撃する。
外の光が溢れる。
八雷神はその光に一瞬怯む。
それと同時に、穴が塞がっていく。
八雷神は穴に向かう。
その時、光が溢れる。
八雷神はその光に浄化され、種に戻っていく。
「くっ…!」
黒雷神は伏雷神を抱えて、その場を離れる。
「あれは…!奴の光…!」
「ああ…あの時の…!」
伏雷神は怯えている。
光が収束していった。
豪は霧の中で溢れんばかりの光を目撃する。
「なんだあの光は…!」
優しく温かい。
そんな気にさせてくれる。
光が弾ける。
白い霧が一気に押し流されていく。
豪の視界が開けた。
霧の向こうに、一体の巨躯が静かに立っている。
「あれは…。神機?」
豪は目を疑う。
今まで見ていた神機と違う。
龍を思わせる甲冑を装着している。
シンプルなイメージの神機から武骨な様相に変わっている。
「何が…起きたんだ…?」
豪はその神々しさに目を奪われた。
凪はゆっくりと目を開ける。
凪の視界は驚くほど澄んでいた。
そして、素早い動きで怪獣の6本の腕を斬り落とす。
地上に落ちる6本の腕。
怪獣の咆哮。
「凪…?」
澪は凪の後ろ姿に御兄様を重ねる。
「行くよ!澪ちゃん。」
再生する怪獣の腕を素早く斬り落としつつ、足元の根に突撃する。
戦闘機も遅れて、追従し、腕をミサイルで撃ち落とす。
「はああ!」
短く息を吐き、斬る。
一閃。
怪獣は足元の根から切り離された。
凪は素早く、神機を怪獣の胸に動かす。
そして、ゆっくりと右手を怪獣の胸に当てる。
「澪ちゃん。」
「うん。」
ゆっくりと目を瞑る。
胸の前に手を重ねて、祈る。
澪の力も心なしか強くなっているように感じる。
「見えた…。」
怪獣の中。
根が女の身体を包み込み始めていた。
「ワタサナイ…ワタサナイ…!」
女は涙を流しながら、首を横に振る。
(やだ…やだ…!)
ゆっくりと女の身体に根が絡まっていき、怪獣の中に入っていく。
「ボクのだ…!」
男の悪意に呼応するように、根が脈動した。
「中の女の人が危ない…!」
澪は青ざめる。
「どういうこと?」
凪は澪に振り向く。
青ざめてる顔を見て、何かを察する。
「女の人が取り込まれてしまう…。」
凪はその言葉を聞いて、確信する。
一刻の猶予もない。
(どうする…?)
凪は頭を回転させる。
しかし、こういうときにいい案が思い浮かんだことがない。
「くっ…!どうにでもなれだ!」
神機で腹を殴る。
怪獣の身体が大きく揺れる。
「おい!あんた!」
凪は叫ぶ。
そして、怪獣に呼びかける。
怪獣の中にも衝撃が伝わる。
「ぐっ…!なんだ…?」
目の前に神機が見える。
「奪いにキタナ…!」
男は腕を振り上げる。
その時。
「おい!あんた!」
声が聞こえる。
「ナンダ…?」
男の気が逸れた。
女を取り込もうとする根の蠢きが止まる。
「何をそんなに執着してる!教えてくれ!」
神機から声が聞こえているようだ。
若い男の声だ。
「ナニをしゅうちゃくシテルって…?」
男は女を見る。
怯えて泣いている。
女の瞳に映るのは恐怖だけだった。
「ナゼ…あのとき…みたいにワラワナイ…?」
男は思考を巡らせ始める。
僕は優しくされたことがなかった。
学校でも…職場でも…。
僕が原因だと言うことは、何となく分かっていた。
しかし、何を直したらいいのか分からなかった。
そして、孤立した。
関わりがあるときは、イジメかイジるときくらい。
辛かった。
誰も笑いかけてくれなかった。
本当の意味で…。
でも、この人は違った。
僕に笑いかけてくれた。
これが本当の笑顔なのかと初めて知った。
僕はもっと笑ってほしかった。
笑顔を向けてほしかった。
「僕は執着していた?」
男の目に光が戻っていく。
凪は男が女の人執着していることを澪から聞いて、叫んだ。
怪獣からの応答はない。
澪は祈り続けている。
神機の手が温かい光を発している。
「あの人は…初めての笑顔が嬉しかったのね…。」
凪はその言葉を聞くと、もう一度叫ぶ。
「あんた!よく見ろ!その人の顔を!」
男に気づかせたい一心だった。
その言葉が届くか分からない。
しかし、必死に言葉を紡いだ。
「よく見ろ!その人の顔を!」
男はその言葉に女をよく見る。
女は根に絡まれている。
中にいる女は酷く怯え、泣いている。
「怯え…涙…。」
男は気づく。
急いで根を引き千切り、女を自由にしていく。
女の体から根が音を立ててほどけていく。
男は必死に女を助けようとする。
男は手を伸ばす。
女に手を払われる。
拒絶。
(ああ…僕はまた…間違えてしまった…。)
怪獣の腹が開いていく。
根が伸びていき、女が神機に渡される。
神機は女を優しく受け取る。
「分かってくれたのか…?」
神機は女を安全なところに運ぶ。
ゆっくりと、自衛隊員に女を渡す。
「男は?」
神機は怪獣へと振り向く。
怪獣からの攻撃。
「ぐっ…!」
突然の衝撃がコクピットを揺らす。
「何で?」
凪は困惑する。
もう終わりのはず…。
「やめろ!もういいんだ!」
怪獣の攻撃は止まらない。




