10話 選択 10-2
伏雷神は動向を観察する。
戦闘機が怪獣の周りを飛び回るが、捉えられない様子だ。
神機も辺りを警戒しているように見える。
時折、来る怪獣の攻撃をいなしつつ、反撃するも有効打にならない。
「ひゃひゃひゃ…。楽しくなってきましたよ…。」
伏雷神は不敵に嗤う。
戦闘機は善戦しているが、また一機爆発する。
「何故、手助けをする?
今のままで、十分と思うが?」
黒雷神が問う。
伏雷神はまた不敵に嗤う。
「もっと、悪意を生み出せるとしたら?」
怪獣中を見透かすように目を細める。
「悪意は多いほうが…御母様にも喜んでいただける。」
「愛ほど、美しい悪意はない……。」
女は怯えた様子で男を見る。
「大丈夫だよ。
君を怯えさせてる奴らは僕が倒すから!」
男は戦闘機や神機に攻撃する。
外から爆発音が響く。
怪獣の体が大きく揺れる。
「君は僕が守る!」
女は怯えているが、妙に冷静にもなってきた。
この状況を整理する。
(私は怪獣に食べられて、ここにいる。)
女は考えを巡らせる。
(この男は私のストーカー?
そして、今、怪獣の中にいる?)
混乱する頭をフル回転させる。
(さっきまで、感情的だったかと思えば、今度は私を守るという…。
何でそこまで…。)
男の瞳は真剣だった。
嘘をついているようには見えない。
女は祈る。
(このまま、刺激しないでおこう。
お願い…早く、助けて)
凪は剣を盾にして、怪獣の攻撃を防いでいた。
攻撃されるたび、コクピットに衝撃が走る。
「くっ…。何も見えない。」
凪は独りごちる。
「豪さん達は…。」
霧の中で赤い光が照らし出される。
無線から断末魔が聞こえる。
「また…!」
凪は奥歯を噛み締める。
「どうする…?」
凪は焦っていた。
会ったばかりとは言え、仲間がやられていく。
「くっ…!」
「凪落ち着いて。」
(でも…、どうすればいいか私も分からない)
澪も焦っている。
それは分かる。
考えるほど、焦る。
コクピットへの衝撃は増していく。
凪は目を瞑る。
深呼吸する。
胸の奥が熱くなる。
凪の意識が遠のいていく。
凪の体の中に血が流れているのを感じる。
周囲の音が遠ざかっていく。
その血の流れが龍となって具現化する。
その龍は威厳のある姿で凪を見る。
そして、神話の時代を思わせる男に変わっていく。
それはどこか懐かしい感じがした。
(わしの中で泳ぎよった罰当たりな坊主め!)
凪の脳裏に、御兄様の古墳の湖で澪と笑い合った光景がよぎる。
凪は恐れ慄く。
物凄い威圧感だ。
男は一息つく。
そして、ゆっくり目を開けて、凪を見る。
その目は凪を見透かしているようだ。
(澪を救いたいか?)
凪はその威圧に負けず、男を見て頷く。
(仲間救いたいか?)
凪の心が落ち着いていく。
そして、頷く。
(人々を救いたいか?)
力強く頷く。
「救いたい!」
男は変化し、神機に龍が絡み合っていく。
(わしの代わりに。)
龍の姿が揺らぐ。
澪の言っていた御兄様のイメージが凪の頭の中に現れる。。
(澪を頼んだぞ。)
「あれが…。」
凪は息を呑む。
神機が光に包まれていった。




