10話 選択 10-1
凪は神機の中で緊張していた。
「この状況…」
何故なら、神機の横に豪の戦闘機が並走していたからだ。
そして、後方には数機の戦闘機が追従していた。
怪獣の一報を受けて、同時に飛び出していったのはいいが…。
凪は出撃前のことを思い出す。
「これを。」
豪が凪に機械を渡す。
「これは…?」
凪は機械を見ながら、質問する。
「簡易型の通信機だ。
意思疎通できないと不便だろ?」
そう言うと、豪は戦闘機に走っていく。
「あ!」
凪は困惑する。
(こんなものもらっても困るんだけどなぁ…。)
凪はもらった通信機を見つめる。
「どうすればいいんだよ…」
その時だった。
「神機。神機。
応答せよ。」
通信機から豪の声がする。
凪は慌てて、通信機を取る。
しかし、使い方が分からない。
豪の戦闘機の方を見ると、豪が何やらジェスチャーしている。
凪は注意深く見る。
ボタンを押せと言っているようだ。
凪はボタンを押す。
「こちら神機。」
凪がそういうと、直ぐ様返答が返ってくる。
「よし。繋がったな。
これで連携が取れる。」
豪は淡々と伝える。
「情報によると、今度は人型らしい。
何かわかるか?」
(人型…?)
凪もよく分からない。
「その様子じゃ分からないようだな。
あの怪獣の中にも人がいるのか?」
凪は考える。
あの四足の怪獣と同じなのかを…。
「前回と同じなら、中に人がいるはずです。」
「どう救出する?」
豪は出撃前の質問が曖昧だったのを思い出す。
急を要する。
この質問で、何かヒントになればいいと思った。
しかし。
「分からない…。
でも、対話が必要だ。
それに…。」
食べられた女性のこともある。
「分かった。
俺たちが援護する。
お前たちは、人を救出することに集中しろ。」
凪は心強いと思った。
澪と顔を見合わせ、少し笑顔になる。
「いた!」
通信機から聞こえた豪の声が強張っている。
凪が正面に向き直る。
そこには、巨大な人型の怪獣が歩いていた。
「ナンデ…ナンデ…ナンデ…」
男の目は据わっていた。
男から生える根に悪意のエネルギーが濁流のように流れていく。
「だレモ…ボクを…アイシテくれない…。」
男の足が無意識に前に出る。
それに呼応するように、怪獣も歩き出す。
「ナンデだよ…いつも…イツモ…いっぱい…愛してるのに…。」
男は思い出す。
男は女との出会いから数カ月。
女に危険がないように、夜道、後ろから護衛していた。
近くに家を借りて、女に不都合がないように、監視もしていた。
女が困ればすぐに駆けつけるようにできていた。
女が食事を始める。
男も一緒になって、テーブルに料理を並べる。
窓の先にいる女に男は声をかける。
「いただきます」
女は思い出していた。
夜道で何度も感じた視線。
帰宅した時、誰かに見られているような気配。
窓の外にあった人影。
(まさか……全部、この人……?)
「ずっと…ずっと…守ってアゲタ…。」
男の頬に涙が溢れる。
「ボクが…ナンデ…。」
女は気づく。
今まで感じていた視線の正体を。
「デカいな…。」
豪は独りごちる。
人型怪獣は木々を倒しながら、森を歩いている。
体中を根が蠢いているが、人型。
さながら、巨人が歩いているようだ。
「各機!散開!」
どことなく、聞こえてきた声に神機の周りにいた戦闘機が散っていく。
怪獣の気を散らすように、怪獣の周りを飛ぶ。
怪獣は戦闘機を落とそうと腕を振り上げる。
そして、振り下ろす。
戦闘機は怪獣の攻撃に当たらないように回避していく。
「凪!今のうちに怪獣に取り付いて。
私が中を見てみるから」
凪は澪の指示に従い、神機を懐に入らせる。
そして、怪獣に触れた。
「うっとおしいなぁ…」
男は目の前の状況に苛立っていた。
まるでハエを払うかのように、手を払う。
それに呼応するように、怪獣が戦闘機を攻撃する。
「なんだ…コイツら…。」
苛立ち気味に両手を使い、払っていく。
その時、懐に入ってくる神機。
「コイツもか…!
どいつもコイツもボクのアイノスに入って…」
男は気づく。
「ぼくのコイジを邪魔するキダナ…!」
男は攻撃を激化する。
「わたさない…ワタサナイ…!」
怪獣の背中や脇腹から根が勢いよく生える。
そして、腕の形状を作り出す。
怪獣は6本の腕で攻撃し始めた。
凪は6本の腕からの攻撃を避けていた。
「くっ…!」
腕が増えたことで、神機も攻撃対象に入った。
凪は少ししか怪獣に取り付けず、焦っていた。
「凪。落ち着いて。
あの女性は無事。」
澪が凪を安心させるように言う。
凪はその言葉に少し安心するが、攻撃は止む気配がない。
避け続けるしかない。
「いたのは胸の辺りだよ」
「胸か…。豪さん!
胸です!胸に人がいる!
なので、腕を破壊することは可能ですか?」
凪は通信機に向かって叫ぶ。
「了解!」
戦闘機は散開し、上空に移動する。
神機も剣を抜く。
同時攻撃。
戦闘機はミサイルを発射し、腕を爆発させる。
神機は剣を地面へ向ける。
大地を這う根を断ち切ろうと駆ける。
「そうはさせないよ…ひゃひゃひゃ…」
伏雷神が祈ると、辺りが霧に包まれる。
視界が真っ白になっていく。
「何?」
凪の目に根が見えなくなる。
「根が見えない…!」
「これは…!」
豪は辺りを警戒する。
怪獣の攻撃。
豪の目の前で爆炎が霧の中で赤く広がった。
無線から悲鳴が聞こえて消えた。




