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神薙 ~日本神話×ロボット。怪獣を救う神機の物語~(50話達成!)  作者: さく


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1話 愛の行方 1-3

母はいつものように責め立てられていた。


義母は突然やって来ては、 あれこれと文句を並べる。

夫は無関心。

それどころか、 義母の言葉に頷いてすらいた。


「なにこれ!? こんなもの食べさせる気?」

義母が鍋を覗き込み、 露骨に顔をしかめる。


「すみません…… すみません……」

もう口癖になってしまった謝罪。

母は俯いたまま、 同じ言葉を繰り返す。


次の瞬間。

義母は鍋を掴み、 乱暴にシンクへ投げ込んだ。

金属音が響く。


「……」

母は、 シンクの中をぼんやり見つめていた。

思考が止まる。

何も考えられない。


「こんな母親じゃ、 勇斗も可哀想ねぇ」

義母がそう言って、 赤子へ手を伸ばす。


その瞬間。

母は反射的に、 勇斗を強く抱き寄せていた。

渡したくない。

義母が何か叫んでいる。

夫も何か言っている。

でも聞こえない。

渡さない。

渡さない。

この子だけは。





「ああああぁ……!!」






母が叫ぶ。

「渡さない!!」


床が割れる。

黒い根が、 母の背中から噴き出した。

「……っ!?」


無数の根は、 勇斗を抱いたままの母を包み込んでいく。

膨張、侵食し、周りのものを破壊していく。

巨大な怪物は家を突き破り、 産声のような咆哮を上げた。




「──来る!」

澪が顔を上げる。

その視線の先。

遠くの町で、 何かが崩れる音が響いた。


「……なんだ?」

凪が目を凝らす。

最初、 それが何なのか分からなかった。

土煙。

崩れる家屋。

その中心で、 巨大な“何か”が蠢いている。


木の根のようなものが、 地面を這い、 うねりながら膨れ上がっていく。

絡み合い、 形を作り、 巨大な影になっていくそれは──


怪獣。

そう呼ぶしかない存在だった。


「あれは……」

澪の瞳が揺れる。




燃え盛る炎の中。

少女は、 優しい温もりに抱き寄せられていた。

大きな手。

嗅ぎ慣れた匂い。

その温かさに、 少女はわずかな安堵を覚える。


けれど、 不意にその手が離れていく。

ぽたり。

一滴の水が、 少女の手の甲へ落ちた。

「……御母様?」


その瞬間。

地面が軋む。

無数の黒い根が、 地中から噴き出した。

「っ……!」

根は、 “御母様”と呼ばれた女性へ絡みついていく。

腕へ。

脚へ。

身体へ。


「御母様……! 御母様!!」

少女は必死に手を伸ばす。

根へ縋りつく。

けれど届かない。


「澪……」

女性が、 悲しげに少女の名を呼んだ。





澪の顔色が変わる。

勾玉が小さく震える。

「あれは…… 御母様……?」


澪の呟きを、 凪は聞き逃さなかった。

「御母様……? あの怪獣が……?」


次の瞬間、 澪は駆け出していた。

「え、澪ちゃん!?」


追いかけた先には二体の巨大な石像。

澪はそのうち一体の前で、 琥珀の勾玉を握り締め、 祈るように膝をついていた。


「御母様を…… 御母様を助けたいの……!」

「だから…… 力を貸して……!」


その瞬間。

石像に、 ゆっくりと色が宿る。

灰色だった巨体へ、 脈動するように光が走っていく。

「これは…… 像じゃない……」


凪は息を呑む。


「ロボット……?」

ゆっくりと、 像の瞳に光が灯る。


凪には、 もう分かっていた。

これから、 日常は終わるのだと。

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