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神薙 ~日本神話×ロボット。怪獣を救う神機の物語~(50話達成!)  作者: さく


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9話 愛の獣 9-1

「何故、分かってくれない?」

男は困惑していた。

壁一面に貼られた好きな女の盗撮写真の中から1枚取る。


「何故、怖がる?」

男は愛おしそうに写真を撫でる。

「僕は純粋に愛しているだけなのに…。」


何かを閃く。

「そうだ!プレゼントしよう!」

男は腕を組んで、部屋を歩き出す。

「僕のものをあげたら、喜んでくれるだろうな。」

男は歪んだ笑みを浮かべる。


そんな男を伏雷神は見ていた。

「ああ…いいぞ…」

伏雷神も歪んだ笑みを浮かべる。


「愛を…欲しなさい…。」

種を取り出す。

「そして…悪意を…。」


いつの間にか、男の背後に現れた伏雷神は男の背中に種を埋め込んでいく。

「がっ…!」


雷鳴。


「さあ…どんどん、歪ませなさい」

伏雷神は根に包まれていく男を見つめる。

歪んだ笑みを浮かべ消えていった。




豪は怪獣出現の一報を受けて、ヘリに戻ってきていた。

調査隊も乗せて、すぐに出発する。

「今から、基地に戻って…間に合うのか…?」


豪は焦っていた。

他の隊員がいるとは言え、戦力は一機でも多いほうがいい。

「くっ…!」

豪は外を見ながら、気ばかりが焦っていた。


突然、大量の鳥が飛びたつ。

木々が揺れる。

「なんだ…?」

豪は注視する。


森の中。

神機が立っている。

「なに!?」

豪は窓に張り付いて、凝視する。


「あそこは…」

あの青年がいたところだ。

水着の青年の姿が頭に浮かぶ。


「まさか…?」

ありえない考えが頭をよぎる。

しかし、合点がいく。


神機が飛び出していく。

「損傷が直っている。修理していたのか?」

豪は神機の向かう先を目で追う。


向かっているのは、報告のあった町の方向。

豪はヘリのパイロットを急かした。




凪と澪は怪獣の元へ急行していた。

しかし、凪の頭は別のことに支配されていた。

「あの人…自衛隊の人かな?」


澪は考える。

「多分」


「神機を探してたのかな?」

凪が再度、質問を投げかける。


「多分」

澪は頷く。

2人の頭に過ること。

それは、凪が神機のパイロットだとバレたかもしれないということ。


(すぐに出たのは、まずかったかも…)

しかし、すぐに出ないと怪獣が人間を襲う。

と思い直す。


「凪。」

澪が正面を指さす。

指を差した先に怪獣が見える。


四足の怪獣で、何かを探すように町を踏みつぶしながら、歩いている。

「いた。」

凪は考えるのをやめる。


凪は操縦桿を握り直す。

今は考えている場合じゃない。

目の前には怪獣がいる。

そして、中の人を救うことに頭を切り替えた。




男は好きな女を探していた。

「はあ…」

女のことを思い、顔を綻ばせる。

胸の奥が温かくなる。

あの日から、彼女のことを考えない日はなかった。


「僕の…天使…。」

男は出会った時のことを思い出す。


男は町を歩いていた。

仕事の資料を沢山持ち、人混みを避けて歩道を行く。


突然、人とぶつかる。

飛び散る資料。

男は必死に拾う。


誰も見向きもしない。

いつものこと。

そう思っていた。


しかし。

「はい、どうぞ」

顔の前に資料の束が現れる。


ゆっくりと顔を見上げる。

美しく愛くるしい女の笑顔。

男には女が天使に見えた。


男はだらしなく締まりのない笑顔をする。

「はあ…」

そして、辺りを見渡す。

「今、会いに行くよ。」


怪獣は踏み荒らしながら町を蹂躙していく。




凪は神機を操縦し、怪獣の前に立ちはだかる。

怪獣の侵攻を止めようと押し返す。


凪は違和感を覚える。

「抵抗がない?」

今までの怪獣は接近するのに時間がかかった。

怪獣の抵抗があったからだ。


「どういうことだ?

こっちが眼中にないみたいだ」

怪獣を押し返しながら、凪が独りごちる。


「何これ…?」

不意に澪が呟く。


「澪ちゃん、どうしたの?」

凪が聞き返す。

しかし、返答が返ってこない。


澪も混乱している。

一拍置いて、澪が言葉を紡ぐ。

「今までは黒くてドロドロの感情が押し寄せてきてた…。」


澪はまた、一瞬考える。

「これは…純粋な愛?だけど…。」


凪は振り返る。

澪の眉間にしわが寄っている。

「純粋…純粋だけど…怖い…。」


「怖い?」

澪のつぶやきに凪は理解ができなかった。




男は神機を意に返さず、女を探す。

「どこにいるの?僕の天使…。」

怪獣は神機を押し返しながら、町を進んでいく。


胸ポケットから写真を取り出す。

女が居間で楽しそうに電話している写真。

「はあ…。美しい…。」

写真に見惚れる。


「そうだ…!家に行こう!」

突然、進路を変える怪獣。

家の場所は知っている。

いつも後ろから一緒に帰っている。


「いた!」

女は怪獣から逃げるため、家から走り去っていった。

男は喜び勇んで迎えにいこうとする。


「邪魔だなぁ!」

男が手を払う。

それに呼応するように、怪獣が神機を払う。


神機はよろけるも、再度向かってくる。

「僕の恋路を邪魔するなぁ!」

怪獣は神機に勢いよく突進する。


神機はビルに倒れ込む。

「これで邪魔者はいない。」

男は辺りを見渡し、女を発見する。


「やっと会えたね」

男は女を迎え入れるように手を広げる。


「いや…!いや!」

女は足が竦んで動けない。

「来ないで…!」


男の耳に女の叫びは入らない。

怪獣は女を喰い、飲み込んだ。




凪は必死に押し返そうと、神機のバーニアを吹かしていた。

突然、神機に衝撃が走る。


怪獣に薙ぎ払われた。

「つっぅ…!」

コクピットが揺れ、バランスを崩す。


「急に攻撃してきた!?」

凪は急いで、怪獣を止める。


しかし。


さっきより強い衝撃。

「くっ…!」

怪獣が体当たりしてきた。

神機は吹き飛び、ビルに倒れ込む。


凪は痛みに耐えながら、怪獣を見据える。

「何だ?」

怪獣が向きを変えて走っていく。


「ダメ!」

澪が叫ぶ。


怪獣が女性を飲み込んだ。


凪と澪は絶句するしかなかった。

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