8話 禊 8-1
一際大きな雷鳴とともに現れる鳴雷神。
怪獣の残骸に近づいていく。
「ふふ…今回も良いわ…!」
女の悪意を十分に吸った種を二個回収する。
「黒のより良いわね」
鳴雷神は種にキスをして、地中に埋めていく。
埋めた種は地中に蠢くように根を伸ばしていく。
雷鳴。
「あら、伏
私の種を見に来たのかしら?」
鳴雷神が嘲笑気味に言う。
伏雷神は怯えた様子で言う。
「うん…。僕ももらったから…。」
手に握った種を見せる。
嬉しそうに不気味に嗤い、胸に抱える。
「いつも隠れて出て来なかったのに、どういう風の吹き回し?」
鳴雷神がさらに嘲笑する。
「いい悪意見つけたから…へへ…」
不気味に嗤う伏雷神。
「鳴のよりお、お母様、喜んでくれる。」
どこか怯えながらも勝ち誇ったように言う伏雷神。
「ふーん…じゃあ、次はあなたね。」
鳴雷神は腕を組む。
「うん。じゃあね。」
雷鳴。
伏雷神は消える。
「私…あの子苦手なのよね」
鳴雷神は両手で肩を抱きながら言う。
「しかし、あの子がやる気出すなんて…どんな悪意かちょっと楽しみね。」
雷鳴。
鳴雷神も雷鳴とともに消えていった。
豪は上層部から会議室に呼ばれた。
緊張した面持ちで、ドアの前に立つ。
深呼吸をする。
何故、呼ばれたかは分かっている。
先日見た、怪獣の中から人間が現れた件であろう。
正直言って、何も分からない。
説明できることもない。
見たことを伝えるだけ。
手先が冷たい。
どうして、こんなに緊張するのか。
操縦桿を握る時は震えないのに、こういうのは苦手だった。
戦闘機に乗ってる方がいいとすら豪は思っていた。
意を決して、ドアをノックする。
中から返事が返ってくる。
「入ります!」
腹から力を入れて、叫ぶ。
自分の緊張を吹き飛ばすように。
豪は入室後、所属と階級を叫ぶ。
部屋にはコの字に並んだテーブル。
壁には大きなモニターが掛けてある。
椅子に掛けるよう促される。
豪は中央にあるイスに着席する。
モニターの電源が入る。
神機が女を受け止める映像。
豪が撮った映像だ。
「君はこれをどう思う?」
抽象的な質問だ。
豪はこういう質問は苦手だった。
「人間の女性であります!」
明らかに眉間にしわが寄っているのがわかる。
さらに指先が冷えていく。
「そういうことではないよ。
どうして、この怪獣からこの女性が出てきたかだよ。」
その質問はされるだろうと思っていた。
しかし、分かることはない。
嫌な汗が背中を伝う。
「私には認知していません!」
腹に力を入れて言う。
「そうであろうな…」
なら、何故聞く?という言葉を飲み込む。
「ここ最近、怪獣の被害が増えている。」
モニターに各地の被害映像が映し出される。
「そして、この神機が現れるようになった。」
神機の戦闘映像が映る。
「我々は早々に怪獣への対抗手段を持たねばならない。」
豪は黙って映像を見る。
「先日の調査で、あのロボットの一部構造を確認できた。」
画面が切り替わる。
神機の解析画像が映し出される。
「完全な再現は難しい。
だが研究チームは試作機の開発を進めている。」
「そこで貴官だ。」
豪の背筋が伸びる。
「貴官には、この試作機のテストパイロットを命ずる。」
は?という言葉が出てきそうになる。
戦闘機しか乗ったことがない。
豪のセンスを見込んでなんて言ってるが、心の中で悪態をつく。
豪は敬礼する。
「了解しました。」
そう答えながらも、心の中では別のことを考えていた。
(戦闘機ですらないものを、本当に飛ばせるのか…?)
その時、慌ただしく軍人が入ってくる。
「何か?」
軍人は敬礼する。
「先ほど、ロボットが出撃しました。」
軍人が緊張気味に報告する。
「また、怪獣が現れたのか?」
軍人に確認する。
「いえ!
怪獣反応は確認されていません!
しかし、ロボットが自発的に出撃した模様です!」
(何が起きている…?)
豪はここから起きることの不安に押しつぶされそうになっていた。
凪は神機に旅行バックを積んで、澪と出かけていた。
数日前。
「神機も前の戦いでボロボロだね…」
凪は石像に戻った神機に触れて言う。
「うん…」
澪も悲しそうに相槌をうつ。
「そういえば、神機の修理ってどうするの?」
凪は素朴な疑問を澪に投げかける。
澪は遠くを見つめる。
「みそぎの湖というものがあってね。」
澪は思い出す。
「綺麗な湖なんだ。」
「へぇ~。そこにいけば、直るの?」
澪は凪を見て頷く。
「どこにあるの?」
凪が聞くと、澪の顔が複雑な表情になる。
「大丈夫?」
「うん。御兄様の…お墓参りって言うんだっけ?
するのもいいかもね。」
凪は少し後悔した。
「凪が気に病むことないよ。
神機も治してあげないといけないしね…。」
澪は寂しそうに笑う。
凪はその表情に胸がチクッとした。
現在
「こっち良いんだよね?」
澪はうんと頷くが、外の景色を眺めていた。
凪にも分かる。
乗り越えたとは言え、御兄様の墓。
思うところがあるのだろう。
「あ…。着いたよ。」
澪が小さく声を発する。
澪が眼下の景色を見て、懐かしそうにしている。
凪も澪の見ている方向に目を向ける。
そこには、大きな湖と傍らに大きな古墳があった。
凪はその光景に見とれてしまった。




