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神薙 ~日本神話×ロボット。怪獣を救う神機の物語~(50話達成!)  作者: さく


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7話 愛の中の怪獣 7-1

「凪…!凪!」

澪は気絶した凪を揺さぶっていた。


あの後、神機は力を失い、町に落ちた。

町に横たわる神機から澪は凪を引き出す。


「どうしよう…。」


凪の頭と口から血が流れている。

いくら揺さぶっても目を覚まさない。


「凪…!起きて!」


その時、遠くから声が聞こえる。

自衛隊だ。

調査隊も一緒にいる。


「おい!子供が倒れてるぞ!」

自衛隊の一人が叫び、凪の元に駆けつける。


「息はある。

救助するぞ。」


澪は胸をなで下ろす。

しかし、不安は拭えない。

「凪…。」


澪は運ばれる凪にこっそりついていく。




鳴雷神は結末を鑑賞していた。


「ふふ…これでさらに憎しみを募らせていくわね。」

地中に消えた怪獣の大穴に近づいていく。


「本当に可愛いわ。

頑張ったご褒美をあげる。」

鳴雷神はもう一つの種を取り出す。

その種にキスをして、大穴に放り込む。


地中の根が活性化するように、激しく蠢き始める。




病院で凪はベッドに寝かされていた。

その傍らには、澪。


そこに凪の両親が入ってくる。

凪の母は凪の手を取り、泣き始める。

父はそんな母の肩を抱き、大丈夫だと自分に言い聞かせるようにつぶやいている。


医者と両親が話始める。

思ったより軽症で命に別状はないということだ。


澪も両親も安堵感に包まれる。

目を覚ますまで、母親が付きっきりで看病するようだ。


傍らで凪の顔を見る澪。

その顔が御兄様と重なる。

(もう関わらせられない…。)


澪は考える。

私のせいだ。

御兄様が死んだことも凪が怪我したことも…。


澪は窓を抜けて、外に出る。

一度、振り返る。

「バイバイ」

そう呟いて澪は去っていった。




凪は目を覚ます。

傍らには、両親がいた。

両親は泣き笑いして喜んでいる。


「澪ちゃんは?」

両親は心配顔に戻る。


「澪ちゃん?澪ちゃんって…」

顔を見合わせる両親。

父親が首を振る。


凪は察しがついた。

(行かなきゃ…)

凪は体を起こそうとするが、痛みが走る。

「くっ…!」


「ダメよ!」

母親が凪をベッドに寝かせる。

凪はわかっていた。

澪が去ったことを…。


凪はゆっくり窓の外を見る。

「澪ちゃん…」




数日後


凪の怪我は良くなって、退院した。

両親と車に乗り、帰っていた。

窓の外から町を眺める。


まだ、復興が進んでいない。

病院でも、怪我人が溢れていた。


(もっと上手くやっていれば…)

後悔が凪を襲う。

「はあ…」

軽く溜息が出る。


視界に神機が目に入る。

「止めて!」

凪は両親の静止も聞かずに車を飛び出す。


「はあ…はあ…」

体が重い。

上手く走れない。

でも、会いたかった。

「澪ちゃん」


神機はまだ町に横たわっていた。

それを自衛隊と調査隊がバリケードを張り、調査していた。


「え…?」

立ち止まる。

澪がいれば、こんなことになってない。

(澪ちゃんが神機を捨てた…?)


凪は自衛隊に近づかないように言われていたが、耳に入らない。

両親が手を引いても、神機から目が離せない。

「何で…?」


凪は絶望していた。




澪は町を彷徨っていた。

町では自衛隊による復興作業が進んでいた。


(私は祟り神になってしまったのかもしれない…)

破壊された町を見つめる澪。


瓦礫を運ぶ自衛隊。

学校の体育館に設置された避難所。

泣いている子供。

疲れた顔の大人。

怪獣が残した傷跡は、まだ町の至る所に残っていた。


ゆっくりと視線を落とす。

手に握られた琥珀の勾玉。


(私が凪を巻き込んで…)

大怪我をした。

澪は凪に勾玉を託した時のことを思い出す。


(あの時、神機の出力が上がらなかった…。)

最初の怪獣に倒される神機。


(神機に乗ると、同じことが起こる。)

怪獣の侵攻をとめられない。


(私は神機を恐れていた…)

吹き飛ばされる神機。


(凪が来た。何故かホッとした。

でも…、御兄様が頭を過った。)

凪に勾玉を渡す澪。


(なのに、託してしまった。)


澪の頬に涙が伝った。





澪はそこを後にして、また歩き出す。

重機が忙しそうに稼働している。


墜落した戦闘機。

天地が逆になった戦車。

そして、横たわる神機。


神機の周りでは、自衛隊や調査隊が忙しなく動いていた。


澪は立ち止まり、神機を見る。

(御兄様…。)


澪は御兄様のことも思い返していた。

御兄様のあの豪快な笑い声が聞こえてくるようだ。


(御兄様も私が巻き込んだ…。)

2つある勾玉を御兄様に渡す澪。

御兄様が勾玉を掲げる。

石像に命が宿るように、色がついていく。


(怪獣が人間を襲うようになって、私たちは対処した。)

怪獣を斬り伏せる2機の神機。

神機を称える人々の声。


(だけど…)

大穴に突入する2機の神機。

大きな根に特攻する御兄様の神機。

貫かれる神機。


(私は誰も救えない。)





澪は無意識に神社の境内に来ていた。

神社を通り過ぎ、裏に行く。

一際大きな木がそこにある。


澪は木に触れる。

(御母様…。)


澪は御母様のことを思い返す。


優しく抱き上げられる。

温もりを感じる。

見上げれば、安心感のある微笑み。


(私がいなければ、御母様も…。)

燃え盛る神社。

その中心にいる澪と御母様。

御母様が蠢く根に包まれていく。


澪は木の根元で膝を抱える。

こうすれば、御母様に会える気がした。


抜ける風。


(私はどうすれば良かったの…?)

答えは返ってこない。




澪は夢の続きを見ていた。


根に貫かれた御兄様の神機。

「ガハッ…!」

「御兄様あああああ!」


澪はその時、動けなかった。

御兄様を失った恐怖から現実を見れなかった。

しかし。


大量の怪獣からの攻撃が2機の神機を襲う。

「くっ…!」

御兄様の神機が動く。


「御兄様!」

澪の喜びの束の間、御兄様の神機が澪の神機を抱えて、大穴を脱出する。


「御兄様!大丈夫なの?」

「…。」

御兄様は何も言わない。


追手がやってくる。

八つの雷が神機を襲う。

「くっ…!」


2機の神機で応戦しつつ脱出する。

眼前に光が見えてくる。

「もう少し…!」


光の先に飛び出す神機。

八つの雷はまだ追ってくる。

「封印する…!」


そう言うと、御兄様の神機は大穴の斜面を攻撃する。

大穴は土砂崩れを起こし、塞がっていく。


しかし、雷鳴とともに雷の攻撃が続く。

御兄様の神機は岩に取りつく。

すると、そこを中心に光が溢れ出す。


「澪…お前は…」


澪は目を覚ます。

強く膝を引き寄せる。

(御兄様…。)




凪は考えていた。

澪の背負っているもの。

神話であったこと。

そして。


「僕は澪ちゃんのためにできたことはあったんだろうか?」

今まで、澪の過去を知らなかった。

澪の背負っているものはあまりにも大きすぎる。


前に澪が言ってくれた言葉。

いっしょに背負う。

それが凪にもできるか分からなかった。


「…。」

考えがまとまらなくなっていく。

凪は頭を掻きむしる。


「あああ!」

凪は立ち上がる。

「澪ちゃんのところに行こう!」

凪は部屋を出て、駆け出していった。




凪は階段を駆け上がっていた。

澪の居場所で思い当たる場所はあそこしかない。

神社を抜けて、裏に行く。


そこには大きな木が生えている。

その根元に澪はいた。


「やっぱり、ここにいた。」

息を切らせ、膝に手をつく。

安堵する。

澪がいてくれた。

それが凪の救いだった。


「来ないで…」

澪は俯いたまま言う。

それでも、凪は近づいていく。


澪がいつもしてくれたこと。

澪から学んだこと。

寄り添う。


「私…祟り神になっちゃった…」

俯いたまま言う。


「そんなことない。」

凪は澪がこんな言葉では納得しないのを知っている。

しかし、こんな言葉しか出てこない。


「俺は神話のことは、君からの聞いたことしか分からない。

けど…、澪ちゃんが悪くないのは分かる。」

澪が顔を上げる。

「でも…私が近くに入れば誰かが傷つく…。」


凪の顔が御兄様と重なる。

澪は御兄様の最後を思い出す。



御兄様が封印した後

「御兄様…!」

御兄様の体は激しく損傷していた。

溢れる血を止めようとする澪。


御兄様が澪の頬に優しく触れる。

「澪…お前は何も悪くない。」

涙顔で御兄様を見る澪。


「人々のこと…。俺のこと…。御母様のこと…。

お前が気に病むことはない。」

御兄様は痛みに苦しむ。


「御兄様…喋ってはダメ!」

澪が叫びながら、必死に止血する。



澪は御兄様の言葉を飲み込む。

そして、凪の言葉を思い出す。

2人とも、澪は悪くないと言う。

澪にはそれが分からなかった。

「何で気に病むななんて言えるの…?」


凪は腕を組み考える。

「…御兄様の真意は分からない」

一呼吸置く。


「うーん…やっぱり、わかんないや。」

澪は目を丸くする。


「いや!い、一緒に考えよう!

えっと…、し、神話のこともっと教えて?」

澪の肩の力が抜けていく。


凪は後頭を掻く。

「ダメだな…俺、こういう時、気の利いたこと言えないや。」


澪は吹き出した。

そして、笑い出す。

凪は何がなんだか分からないけど、安心する。


「凪らしいよ。」

澪は涙を拭く。


「久々に笑ったかも。」

そう言った澪の顔は、 少しだけ昔に戻ったように見えた。


(全部、自分のせいだと思ってた。

償いだと…。)


手の中の勾玉を見る。

(御母様に託されたものがある。)


御兄様の最後を思い出す。



「御兄様…!喋ってはダメ!」

澪は必死に止血する。


「澪…人々のこと。御母様のこと。

頼んだよ」

御兄様の目の光がなくなっていく。



(御兄様…。)

澪の頬に涙が伝う。

御兄様にも託されたものがある。


(それで救えたものもある。)

凪の顔を見る。


「やれることをしよう…。」

凪はその呟きの真意が分からない。

でも、その意思を尊重する。


「うん。」

やれることをしよう。

凪もその言葉を胸に刻んだ。



雷鳴。

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