6話 愛の歪曲 6-3
「憎い…!」
家を突き破って、怪獣が現れる。
現れた怪獣は腹を大きく膨らませていた。
そこから、不気味に根が蠢き、小型の怪獣を生み出していた。
「私だって…私だって…!」
歯ぎしり言いながら、世界を睨む。
「壊れろ。」
女の目に光がなくなる。
怪獣から根が伸び、町を破壊していく。
そして、その根の一つひとつから小型怪獣が溢れ出ていく。
「アハハハ!
成功者は消えろ!」
小型怪獣が町を蹂躙していく。
町に蠢く小型怪獣達を鳴雷神は見ていた。
「ふふふ…いいわ。」
鳴雷神は頬を赤く染めていく。
小型怪獣が町を蹂躙していく。
「人が怪獣を生んじゃうなんて。」
愉快そうに嗤う鳴雷神。
根が蠢き、悪意が流れていっている。
「あんなに悪意を生み出しちゃって。」
小型怪獣が生み出される。
「さあ!どんどん世界を憎みなさい!」
「それが…いい栄養になるのよ」
鳴雷神は人差し指で唇に触れる。
「お母様…今日はご馳走よ」
「なんだ…これ…」
凪と澪は神機で出撃した。
駆けつけた先で見たのは、多くの小型怪獣とその中心にいる大型怪獣。
大型怪獣は小型怪獣を生み出し続けている。
「あ…あれは…!」
澪は胸の前で腕を交差させて、両肩を掴む。
震える体を止められない。
澪の脳裏にあの時見た光景が浮かぶ。
大穴に突入する2機の神機。
大量の怪獣。
蠢く根。
その中心にある大きな根。
「御兄様…」
澪の思考が止まる。
澪にもどうしようもできない。
神機の動きが鈍くなる。
「パワーダウン?澪ちゃん…?」
凪が振り返ると、異常に震えている澪がいた。
轟音がする。
自衛隊も出撃していた。
町の惨状から何十機と出撃している。
各編隊を組んで、怪獣の処理にあたる。
戦闘機の尾翼からミサイルが発射される。
爆発して、燃え上がる小型怪獣。
しかし、小型怪獣は次々と生み出されていく。
小型怪獣も黙っていない。
一気に攻撃を仕掛けていく。
戦闘機は回避運動に入るが、避けきれず何機か爆発していく。
「ヤバい…!」
凪はその惨状を見ていた。
数が多すぎる。
戦闘機も善戦しているが、多勢に無勢だ。
次々と爆散していく。
「澪ちゃん!」
凪は澪の肩を掴む。
何を言えばいいのか分からない。
御兄様のことだとは察しがつく。
しかし、今の状況を何とかしないといけない。
「澪ちゃん!俺を見て!」
澪の目に光が戻っていく。
「凪…?」
澪は町の惨状を見る。
そして、怪獣も見る。
「行ったらダメ…。」
澪が震え始める。
「凪も…死んでしまう…。」
凪は腑に落ちた。
神話の続き。
御兄様の死を…。
「同じ状況なのか?」
澪は静かに頷く。
神話で起きたこと。
凪は辺りを見渡す。
多くの怪獣にそれを生み出すもの。
御兄様の言うことも腑に落ちた。
大元を叩く。
その意味が…。
そして、それをすれば死。
凪にもどうすべきか分からなかった。
女は怪獣の中でほくそ笑んでいた。
神機は動かない。
戦闘機は次々と落ちていく。
「何もできない!」
女は笑いがこみ上げてきて、止められない。
高笑いをして机を叩く。
初めて、優位に立った。
女はそれに高揚感を覚えていた。
「私が壊してる…。私が…!」
自分にもできることがあった。
その感覚が女を支配する。
「憎いものは壊す!」
「消えちゃえ!」
小型怪獣の標的が神機に変わった。
「ぐあっ…!」
小型怪獣の攻撃が神機を襲う。
凪は操縦席に戻り、神機に剣を持たせる。
神機の動きが鈍い。
小型怪獣の攻撃を交わしながら、小型怪獣を斬り伏せていく。
しかし、斬っても斬っても次々と現れる。
「くっ…!」
地上からは戦車。
空中からは戦闘機が数を減らしてくれてはいる。
しかし、生まれる数が尋常じゃない。
「どうする…?」
澪のことが頭を過る。
一瞬、考えがそれた。
次の瞬間、怪獣の攻撃が神機を貫く。
「ガハッ…!」
凪が口から血を吹き出す。
澪には後ろから見えていた。
衝撃で揺れ、凪が血を吐き出す様を。
「いやあああああ!」
澪は目の前の状況に叫ぶしかなかった。
(痛い…痛い…)
凪はゆっくりと起き上がる。
目が霞む。
自分がどうなったのかも分からない。
どこが痛いのかも分からない。
目の前に血溜まりが見える。
(ヤバいかも…)
澪の叫ぶ声が聞こえる。
(どうにかしないと…)
妙に冷静になっていく。
澪が自分の名前を何度も呼んでいる。
(倒れてる場合じゃない…!)
「くっ…!」
「凪!」
凪は一気にペダルを踏み込む。
神機が飛び上がる。
神機の腹部が開く。
そこにエネルギーが集中していく。
「うおおおお!」
凪の叫びと同時に腹から放たれるエネルギー。
その一本のエネルギーは小型怪獣を倒しつつ、進んでいき大型怪獣にも当たる。
エネルギーは大型怪獣の3分の1を削り取り、爆発した。
怪獣の咆哮。
大型怪獣は活動を停止する。
根の蠢きが消え、小型怪獣も生み出されなくなる。
大型怪獣は地中に吸い込まれるように消えていった。
「はあ…はあ…」
息が荒い。
周りを見渡す。
町が炎の海になっている。
意識が遠のく。
「くそ…」
凪は怪獣の消失を確認すると気絶した。
「憎い…憎い…!
あのロボット…!」
女は頭から血を流し、パソコンの画面を見つめる。
怪獣の中、パソコンの画面だけが妖しく光る。
「こいつ…!こいつが!」
激しく自分の膝を叩きつける。
「また…私の…!
ああああああああ!」
地中深く、怪獣の根は激しく蠢いていた。
女の悪意は止め処なく、溢れていた。




