6話 愛の歪曲 6-2
真っ暗闇の中、女はパソコンに向かっていた。
「憎い…!華やかな生活をしている人間が憎い…!」
パソコンを見つめて、歯ぎしりする。
その時、通知が入る。
『怪獣によって、何人負傷
有名インフルエンサーも負傷』
という記事が出ていた。
女はニヤリと笑う。
「罰が当たった!」
高笑いをして、勝利に酔いしれる。
「私が憎めば、あいつらが壊れていく。くくく…。」
「アハハハ!
華やかな人間共なんて全部壊れちゃえ!」
女から溢れる悪意は、女から生えている根に吸収されていった。
怪獣が町を壊していた。
凪と澪は神機に乗り、駆けつける。
「また、根の怪獣だ」
ここ最近、各地に現れている怪獣は根が絡まってできた小型の怪獣ばかりだった。
小型と言っても、人間や町には脅威に違いない。
「とりあえず、やるよ!」
凪はペダルを踏み込み、バーニアを吹かす。
根の攻撃を斬り、怪獣の懐に入る。
「やめろ!」
神機で怪獣に触れてみる。
「やっぱり、何も感じない!」
澪が言う。
「これも中に人間はいないってこと?」
凪は怪獣を視界に入れたまま聞き返す。
「うん。でも、何で…?」
澪は眉間にしわを寄せる。
「考えても仕方がない!」
神機に剣を両手持ちにさせる。
「うおおおお!」
一閃斬り!
怪獣は崩れ去っていった。
「手応えがないよな?」
凪も疑問に思う。
「凪!また、怪獣が現れたみたい」
澪が凪に叫ぶ。
「多い、三体?」
「マジかよ!」
凪は神機のバーニアを吹かした。
「憎い…!憎い…!」
鳴雷神は電柱の上から見ていた。
「凄いわ。これだけの執着。」
良い悪意が育ちそう。」
鳴雷神は舌なめずりする。
視線の先。
女の足元から、 黒い根が静かに伸びている。
「ふふ……、どこまで育つかしら。」
轟音がする。
自衛隊も出撃しているようだ。
戦闘機が編隊を組んで、怪獣に向かっている。
尾翼からミサイルを放つ。
怪獣は爆散する。
「凄いな…。
最初の時より、威力が上がってるんじゃないのか?」
凪は次の怪獣の元へ飛びつつ、独り言のように言う。
澪はその光景を見ながら、思い出す。
燃え盛る炎。
人々の争う声。
御母様。
胸が締め付けられる気がする。
「いた!」
凪のその言葉に澪に意識が戻る。
「もう一体は自衛隊に任せよう。
凪はこの怪獣に集中して」
「うん」
澪の呼びかけに応えるように返事をして、剣を抜く。
神機は怪獣に斬りかかった。
「あいつが邪魔をする…!」
女はパソコンに向かって叫ぶ。
モニターを乱暴に掴む。
「憎い…!憎い…!」
通知音が鳴る。
顔が綻ぶ。
通知音が鳴れば、女にいい情報が入ってくる。
『謎のロボット大活躍!
人々を助ける!』
火が消えたように女の表情が変わっていく。
「何で!何で何で!」
机を力いっぱい叩く。
「また……」
女が1点を見つめる。
「また、称賛されてる……」
「あいつも成功者か!」
憎しみを募らせていく。
「憎い…!憎い…!」
女から溢れた黒い感情が、 根へと流れ込んでいく。
凪と澪は一息ついていた。
「疲れた…。
流石に、連続で二体は…。」
凪は大の字で寝転ぶ。
澪からの反応はない。
「弱いからいいけど…、
質より量って感じ?」
凪の冗談も耳に入っていない。
澪は考えていた。
御母様のこと。
怪獣のこと。
御兄様のこと。
似すぎている。
「ボスとかいるのかな?
それなら、大元を叩くべきか?」
凪は何気なく言ったつもりだった。
冗談のつもりだった。
それを聞いた瞬間、澪の心臓が嫌な音を立てて跳ねる。
血の気が引いていく。
凪に御兄様が重なる。
「絶対に行っちゃダメ!」
凪はこんな澪の顔を初めてみた。
「じょ、冗談だって…」
凪は困惑していた。
澪がこんなに大きい声を出したことはない。
「ごめん…。」
澪は俯いて、膝を抱える。
「御兄様のこと?」
凪は努めて優しく聞き返す。
澪はゆっくり頷く。
「もう…誰も失いたくない…。」
静かに泣き始める澪。
凪はどうすることもできなかった。
雷鳴。
凪は顔を上げる。
嫌な予感がした。
澪も同じだった。
そして、遠くでサイレンが鳴り響く。
「これは……」




