6話 愛の歪曲 6-1
澪は木の根元に座っていた。
ここに来ると、御母様に抱かれているようで安心感がある。
あの日、怪獣が現れて、世界は変わった。
各地に怪獣が現れるようになって、澪たちだけでは対処しきれなくなっていた。
澪たちが対処しきれない怪獣は自衛隊が対処してくれている。
しかし。
澪は膝を抱える。
「中にいる人たち…自衛隊の人たちも…」
ゆっくりと俯く。
「大丈夫かな…?」
(もっと早く対応できていれば…)
その言葉を凪が言っていた。
凪も苦悩している。
「はあ…」
小さく溜息が出る。
澪は思い出していた。
守り人を死なせてしまった、あの日のことを。
あの日、澪と守り人は怪獣の対処をしていた。
「くっ…!」
守り人の神機は怪獣を斬り伏せる。
怪獣を倒した守り人は英雄のように讃えられていた。
それに答えるように腕を突き上げる。
その後、澪と守り人は焚き火を囲んでいた。
「このままでは、埒が明かん。」
怪獣の数は日に日に増していた。
「しかし、御兄様…どうすれば…」
澪が守り人にすがるように聞く。
「大元を叩く!」
守り人は力強く澪に向かって言う。
「まさか、大穴に?」
「そうよ!」
心配そうに聞く澪に、守り人は答える。
「それは危険です!」
澪は反論する。
澪は人間を守ることも大事だが、御兄様にも死んでほしくなかった。
「戻れないかもしれない…。」
「でも、行かねばならん。」
守り人はもう一度、力強く言う。
「人々のために!」
澪はその力強さに安心感を覚えつつも、心が晴れなかった。
しかし、何も言うことができなかった。
数日後。
「これが大穴…」
澪は神機の中で息を呑む。
「行くぞ!」
守り人の神機が先に大穴に先行する。
続いて、澪の神機も入っていく。
中にはうじゃうじゃ怪獣が溢れていた。
2機の神機は、怪獣を斬り伏せ、最下層まで突入していく。
そこには、次々と生み出される怪獣がいた。
「これは…!」
守り人も息を呑む。
「あれが原因か!」
守り人の神機は、一際大きな根に取り付く。
「何…!」
守り人の神機は、貫かれた。
「御兄様ぁぁぁ!」
「御兄様…あの時何を見たの?」
澪は涙を止められなかった。
凪は木の根元で寝ている澪を愛おしそうに見ていた。
子供のころは、年上のお姉さんみたいに思っていた。
しかし、姿が変わらないのも相まって、今は妹みたいにも見える。
凪は起こさないように、静かに掃き掃除に戻ろうとしていた。
「ん…。」
澪が目を覚ます。
「寝ちゃってた?」
一拍おいて顔を上げる。
「凪…。」
凪はアタフタした様子で、澪の前にいた。
「ごめん!」
凪が謝る。
「起こしちゃった?」
心配そうに見つめる凪に微笑み、首を振る。
「寝てるところ初めて見たかも」
凪が冗談めかしていう。
「ふふ…」
澪は微笑む。
そして、寝たのは何時以来だろうと思い返す。
この体になってから、寝た記憶がない気がする。
「夢を見てたの…」
「夢?」
凪は目を丸めて、聞き返す。
「最近、怪獣が多いでしょ?」
視線を落とす。
「だから…」
澪が膝を抱える。
「見ちゃったの、御兄様の夢」
「…そんなことが…。」
凪は静かに聞いていた。
「御兄様が何を見たのかわからない。
けど、」
(御兄様はその隙を突かれて…)
澪は俯く。
澪を横目に見て、心配になる。
「今の状況が似ている?」
澪は静かに頷く。
何かが起きている。
あの時のことが頭をよぎる。
「凪…、凪は…。」
言いかけて止まる。
その先を言えば、そのとおりになってしまいそうな気がしたからだ。
「澪ちゃん…。」
突然、サイレンが鳴る。
最近、つけられた怪獣が出現したサインだ。
凪は澪と顔を見合わせる。
「行こう!」
2人は立ち上がり、神機の元に駆けた。




