5話 悪意の結末 5-3
凪は自室でテレビを見ていた。
テレビでは今回の怪獣事件のことでコメンテーターが喋っていた。
『特集 謎のロボットは味方なのか?』
と書かれている。
凪は少し笑う。
「現実でもこんな状況になったら、こういう特集されるんだな」
「この流れだと次には信用できないかな?」
凪は予想する。
テレビの中で肩書のついた学者が信用できないことを熱弁している。
「当たった」
こういいつつ複雑な顔をしていた。
味方ではないと言われるのは仕方ない。
それはわかる。
「でも、命を懸けて・・・」
言いかけて、止まる。
自分でこれもアニメみたいと納得してしまった。
テレビでは場面が切り替わっていた。
救出される人々。
半壊した建物。
その中に見覚えのある男が救急搬送されていた。
「あ・・・あの人・・・よかった・・・」
男は救急搬送されている時だというのに機神に接触した人物としてカメラを向けられていた。
「これから、あの人大変だな・・・」
凪は安心していた。
なので、冗談も出てきた。
そんな自分にホッとする。
「澪ちゃんのところに行こう」
凪は身支度を始めた。
凪は神社へ続く階段を上っていた。
ゆっくり。
ゆっくりと登っていく。
「ここ数日、色々あったな・・・」
ここまでの2回の戦いが脳裏を過る。
「大変だったな・・・」
ふと、澪の顔が過る。
「澪ちゃん・・・あの子は何者なんだ?」
子供のころよく遊んでいた。
あの時から不思議な子だった。
あの頃から少し成長して、そういう子なんだと理解していた。
しかし。
「神話か・・・」
何とも言えぬ感情が凪を襲う。
「俺って澪ちゃんのこと何も知らないんだな・・・」
少し俯く。
ゆっくり階段を上っていく。
視界が開けてきた。
「澪ちゃんに聞いてみよう」
境内に入る凪。
「あれ?」
澪がいない。
境内を見回す。
誰もいない。
いつもなら、澪がいる場所。
石段、拝殿の前、神機の傍。
「おかしいなぁ・・・」
「待ってる間に掃除でもするか」
凪は澪を探しがてら、掃除道具を取りに行く。
澪は神社の裏の大木を見ていた。
「御母様・・・」
澪は時折、ここに来ることがある。
木の根元で泣き叫ぶ赤ん坊。
優しく、温かく抱き上げる手。
和やかなほほ笑み。
澪にわずかにある遠い記憶。
「それが・・・、どうして・・・」
燃え盛る炎。
根に包まれる御母様。
怪獣。
澪は木に手をつく。
温かい気がする。
まるで誰かに、触れられているようだった。
「教えてください。御母様・・・お兄様・・・。」
返事はない。
風が葉を揺らす。
その時だった。
境内から箒で掃く音が聞こえてくる。
澪はゆっくりと顔を上げた。
「凪・・・」
少しだけ、澪の表情が和らいでいった。
「来てたんだ?」
日課の掃き掃除をしている凪に澪は声をかけた。
「あ・・・うん。どこ行ってたの?」
少し躊躇うが、聞いてみることにした。
「裏」
澪は短く答える。
それでも、凪はどこにいたのか分かった。
それを嬉しく感じ、凪の口角が上がる。
「木のところ?」
「うん。時々思い出すの・・・あそこで」
澪は少し俯く。
「神話の?」
澪はゆっくり頷く。
「私も何が起きてるか分からないの」
少しの間、沈黙になる。
「焦らなくていいよ」
凪は澪にほほ笑みかける。
その言葉に顔を上げる澪。
そのほほ笑みが御母様と重なる。
「うん。ありがとう・・・」
澪の心が少し晴れた気がした。
山中。
怪獣の残骸がそこにあった。
雷鳴。
黒雷の神は静かに種を見つめていた。
「今回も十分な悪意を回収することはできたが・・・」
機神の姿が目に浮かぶ。
「忌々しい・・・奴がいなければ、もっと悪意を奪い取れるものを・・・」
「さすれば、お母様も・・・」
雷鳴。
一段と轟音が響く。
黒雷神が振り返ると、そこには
「鳴か」
鳴と呼ばれた雷神は女性の姿をしていた。
「今回は機神がいたから、回収できたとも言えるんじゃない?」
鳴雷神は枝に腰掛け言う。
「怒りの増幅に一役買ったと?」
黒雷神が一瞥して言う。
鳴雷神は黒雷神から種を取り上げて、地中に埋める。
すると、地中に蠢くように根が伸びていく。
「可能性の話よ。
私だって、機神がいない方が早くお母様に会えていいんだけどね。」
黒雷神は鼻で笑う。
「次は私がいくわよ?」
鳴雷神は立ち去る黒雷神に言う。
「勝手にしろ」
雷鳴。
鳴雷神は雷鳴の後を見て、嗤う。
「ふふ・・・どんな人間がいいかな~」
持っていた種に鳴雷神はキスをする。
鳴雷神は電柱に腰掛けていた。
「見つけた」
笑みを浮かべて鳴雷神が見つめる。
そこには一軒家があった。
窓から見える女はパソコンを前に何かを書いていた。
鳴雷神は足を組む。
そして、頬杖をついて、嗤う。
「か~わいい。」
パソコンに向かう女は一心不乱に何かを打ち込んでいる。
「なんで、私だけ・・・」
鳴雷神は、黒い種を指先で転がした。
「ふふ・・・」
まるで熟れた果実を選ぶように、その女を見つめる。
「良く育ちそう」
鳴雷神は、
楽しそうに口元を歪めた。




