5話 悪意の結末 5-2
男は身体に、衝撃を受ける。
「がっ・・・!はっ!」
あまりの衝撃に一瞬息が止まる。
「あいつ・・・!」
男は機神を見やる。
先ほどの衝撃からか怒りが収まっていく。
しかし、感情は高ぶり、落ち着かない。
男は無意識に腕を上げる。
その瞬間、怪獣の根が唸りを上げて伸びた。
次々と機神に放つ水攻撃。
怪獣が暴れている。
男も自分を傷つけた機神を倒そうとしている。
「うああああああ!」
一瞬、冷静になる。
「あれ?俺って・・・なにしてるんだ?」
凪は攻撃を避けつつ、怪獣の様子を見る。
「なんだ・・・?」
怪獣からの勢いが収まっている。
「あの人の怒りが収まった?」
澪が怪獣を見据えて言う。
「今ならあの人の心に届くかも」
凪は怪獣を見る。
心を落ち着かせ、澪との過去を思い出す。
「解放・・・」
凪はゆっくりと目を開き、機神を動かす。
「おい!あんた!攻撃をやめろ!」
「え?凪・・・!?」
澪は驚愕の表情を見せていた。
凪は機神で一つの根に斬りかかる。
怪獣の咆哮。
怪獣が機神に向く。
凪はニヤリと笑う。
怪獣がこっちに気を向けた。
「あんた! 言いたいことがあるんじゃないのか!」
正直、どんな声掛けをすればいいのかわからない。
(俺の不器用な頭でこの人を解放させるには・・・)
怪獣の攻撃は避けつつ、根を斬っていく。
「怒ってるんだろう?」
一息置く。
「ため込むな!全部吐き出せ!」
機神から声が聞こえる。
男はその言葉を聞いて怒りが込みあがる。
「知った風なことを!」
怪獣の攻撃を激化させる。
「俺は・・・俺はな・・・!」
(口答えするな!)
幼少期の両親が頭に浮かぶ。
(口答えするな!お前は俺の言うことを聞いてればいいんだ!)
上司の顔が浮かぶ。
両親と上司が重なっていく。
男は逆らうということができなかった。
服従する。
それが男の処世術だった。
そして、心を隠すようになった。
(怖い・・・怖い・・・)
心を見せるのが怖い!
「ああああああああ!」
怒りと怖さが混ざっていく。
怪獣の猛攻を切り伏せつつ、凪は怪獣の中の声が聞こえた気がした。
「そうだ!吐き出せ!」
凪は怪獣を見据える。
「あ・・・」
澪が息を吐くような声が聞こえる。
怪獣が泣いている。
そして、怪獣から声が聞こえてくる。
「お前に俺の何がわかる?」
一瞬怪獣の咆哮が止む。
「俺はな・・・あああああああ!」
怪獣の攻撃が増していく。
凪は必死に根を切り伏せていく。
「そうだ!あんたのその心のうちにあるものを話せ!
俺にぶつけろ!」
男の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
何も整理がつかない。
自分の心の内を話したことがない。
言い出したくても言葉が出ない。
しかし、怒りがこみあげてくる。
両親の顔が浮かぶ。
「俺はどうすればよかったんだ!」
男は無意識に叫んでいた。
「逆らうなと言われ!親の敷いたレールを走らされて!」
上司の顔が浮かぶ。
「あいつだってそうだ!逆らうなっていったんじゃないのか!?」
涙が無意識に溢れてくる。
「なのに!意見を求める!意見すれば怒られる!」
部下の顔が浮かぶ。
「逆らうなって言われたんだ!従順でいて何が悪い!」
とめどなく、涙があふれる。
「俺は従ってきたんだ!何で好き勝手言えるんだ!」
顧客の顔が浮かぶ。
「俺は逆らうなと言われて育って、自分の考えを捨てた!」
涙を流し冷静になっていく。
「なのに、社会に出たら、意見を求められるなんて・・・」
さらに怒りが落ち着いていく。
(あれ?こんなに泣いたのいつ以来だっけ・・・?)
両親に泣き暴れる男の過去を思い出す。
両親の失望の顔。
その顔が思い出される。
(そっか・・・あの時・・・涙も捨ててたんだな・・・)
冷静になっていく。
正面を見る。
機神がこちらに手を出しているのが見える。
男が手を差し出していく。
目の前が光出し、あふれていく。
「あれ」
澪の指さす先で怪獣の腹が開いていく。
怪獣は沈黙している。
凪は怪獣の腹に近づいていき、機神の手を伸ばす。
怪獣の腹から、男が出てきた。
凪はその男を機神の左手で受け止める。
「はあ・・・」
凪の息が漏れる。
許された感覚がした。
「凪・・・終わらせよう?」
そっと、肩に触れられる澪の手。
ぬくもりを感じて、安心感が出る。
「うん」
凪は男を山の麓に降ろし、飛び上がる。
剣を両手に持たせる。
「はああ!」
一閃斬り
怪獣は縦に真っ二つに割れていく。
そして、静かに崩れていった。
「凪・・・?」
凪は静かに泣いていた。
「よかった・・・。」
澪は静かに寄り添ってあげていた。




