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神薙 ~日本神話×ロボット。怪獣を救う神機の物語~(50話達成!)  作者: さく


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4話 悪意の矛先 4-3

男の中から、 止め処なく怒りが溢れていた。

今まで押し込めてきた鬱憤。

それらが、 一気に噴き出していく。


「ハハハ……!」

「俺を抑圧する奴ら…… 全部壊れろぉ!!」

怒り。

破壊衝動。

解放感。

男は、 高揚していた。


(俺の言うことを、 聞いてればいいんだ!)

上司の顔。


(先輩って、 会社の言いなりっすね)

部下の顔。


(君、 仕事できないでしょ?)

顧客の顔。


次々と、 色々な人間の顔が浮かぶ。

「全部…… 破壊してやる!!」


怪獣が咆哮を上げる。

全身を巡る水が、 一点へ圧縮されていく。


次の瞬間。

高圧水流が、 建物を貫いた。

轟音。

ビルが、 崩れ落ちる。




神社の神機が、 ゆっくりと起動する。

石の身体に、 光が走る。


「凪が…… 呼んでる……?」

澪は、 ハッと顔を上げた。

神機は、 澪の方へ静かに顔を向ける。


そして、まるで応えるように、 澪の前へ跪いた。

「行こう……!」


神機は、 そっと手を差し出す。

澪は、 その掌へ乗った。


少しだけ、 澪の表情に笑みが浮かぶ。

「ありがとう……」


次の瞬間、神機は、 凪の元へ駆け出していた。




凪は、 覚悟を決めていた。


もう、 あの母親のようにはしたくない。

何ができるのかは分からない。

自分には、 大それたことかもしれない。


それでも、自分にできることを、 やるしかない。

遠くの空。

神機が、 こちらへ飛んできている。


「力を…… 貸してくれ……」

神機が、 凪の前へ降り立つ。

凄まじい風圧。

吹き飛ばされそうになりながら、 凪は目を見開いた。


神機の掌に澪がいた。

「澪ちゃん!」

神機の手が、 ゆっくりと降りてくる。


澪と凪は、 しばらく見つめ合った。

言葉が出ない。

短い沈黙。


「行こう」

どちらからともなく、 声が重なる。


二人は、 神機の胸にある琥珀へ飛び込んだ。

広がる異空間。

凪は、 強くイメージする。

すると、二つの座席を持つ、 複座式のコクピットが現れた。


「なにこれ……?」

澪が、 純粋に目を丸くする。


「この方が、 ロボットっぽいじゃん」

凪が、 少し無邪気に笑った。


二人は、 それぞれ座席へ着く。

「神機…… 出る!」

凪が、 ペダルを踏み込む。

バーニアが吹き出すイメージをする。


次の瞬間、神機は、 怪獣へ向かって飛び出した。




黒雷神は、 鉄塔の上から町を見下ろしていた。

怪獣が、 町を蹂躙していく。


放たれる高圧水流。

崩れ落ちるビル。

逃げ惑う人々。


「ふん……」

黒雷神は、 鼻で笑った。


「今回は…… 怒りか」

その目は、 まるで人間を観察するようだった。


「抑え込んだ感情が、 怒りによって爆発する……」

「実に、 人間らしい」

黒雷神は、 愉快そうに口元を歪める。


「大量の悪意……」

「“御母様”も、 さぞ喜ばれるだろう」

黒雷神は、 ゆっくりと両手を広げた。


「さあ…… もっと怒れ」

「もっと憎め」

「そして、 悪意を生み出せ!」


雷鳴。


「ハハハハハ!!」




「見えた!」

凪は、 ペダルを踏み込む。

神機が、 それに呼応するように加速していく。


怪獣は、 目前。

「私が神機の制御と、 怪獣の内部を見る」

澪が、 後部座席から声を飛ばす。


「凪は、 戦いに集中して」

「分かった…… 任せて!」

凪は、 怪獣を真正面から見据える。


そして、それっぽく、 目の前のボタンを叩いた。

次の瞬間、神機の手に、 光の剣が現れる。


「やあああ!!」

振り抜かれる斬撃。

迫る高圧水流を、 次々と切り裂いていく。


「キリがない……!」

凪は、 歯を食いしばる。


次々と放たれる高圧水流。

斬っても、 斬っても、 終わらない。

それどころか、圧倒的な水圧が、 神機を押し戻していく。

前へ出られない。


「くっ……!」

凪は、 唇を強く噛んだ。

「触れないと…… あの人の気持ちが分からないのに……!」


前回は違った。

根が伸びてきた。

だから、 怪獣と接触できた。

けれど今回は――

「どうすれば……!」


その瞬間。


怪獣の全身が、 脈打つように膨らむ。


「っ!?」

次の瞬間、無数の高圧水流が、 一斉に放たれた。


「ぐああっ!!」

神機が、 激しく揺れる。

「捌ききれない!!」




男には、 近づいてくる神機が見えていた。

「やつは……!」


神機の姿が、 別のものに見える。

怒鳴る上司。

見下す顧客。

嘲笑う部下。

それらが、 神機の姿へ重なっていく。


「お前も…… 同じか……!」

怪獣が、 怒りの咆哮を上げる。


「俺を…… 縛り付ける気かぁ!!」

男の意識は、 怒りに呑み込まれていた。


「皆…… 同じだ……!」

「俺を、 都合良く使いやがる……!」

「オレは……」

「オレハ…… ドレイジャナイ!!」

怪獣の全身を巡る水が、 激しく脈動する。


次の瞬間、無数の高圧水流が、 神機へ集中した。

「ハハハハ!! 俺を虐げる奴らは…… 全部消えろぉ!!」


怪獣が、 神機へ猛攻を浴びせる。

放たれる高圧水流。

神機の装甲が、 次々と削られていく。


その感覚に、男は、 快感すら覚えていた。

「もっとだ…… もっと壊れろ……!」


その時だった。

「……ん?」

男の視界に、 一人の人間が映る。


逃げ惑う男。

「あいつは……!」

脳裏に、 怒鳴り声が響く。


(俺の言う通りにしろ!)

(何故、 自分で判断できない!)

(俺は、 お前のためを思って――)


「ああああああああ!!」


怪獣が、 怒りの咆哮を上げる。

標的が変わる。

怪獣は、 逃げ惑う上司へ狙いを定めた。




「標的が…… 変わった……?」

凪は、 怪獣の攻撃が逸れたことに気づく。

今まで、 自分たちへ集中していた攻撃。

それが突然、 別方向へ向かった。


「っ……!」

神機を、 強引に立ち上がらせる。


「あれ!」

澪が、 遠くを指差した。

逃げ惑う一人の男。

怪獣は、 その男へ攻撃を集中している。


「標的は…… あの人……?」

「なんで……?」

凪は、 歯を食いしばる。


「考えても無駄か…… 助ける!」

神機のバーニアが吹き上がる。

凪は、 怪獣の前へ割り込んだ。


「ぐっ……!」

神機で、 怪獣の身体を押し返す。

その時だった。


「……っ!」

澪の表情が変わる。

「何これ…… あの人の中、 ぐちゃぐちゃ……」

「それに…… 拒絶……?」


澪は、 男の感情へ触れていた。

怒り。

憎しみ。

そして、誰も受け入れたくないという、 強烈な拒絶。


「怒ってるの……?」

「あの人に……?」

澪は、 怪獣の真意を探ろうとする。


「怒りをぶつけるだけじゃ、 ダメだ!!」

凪は、 怪獣を押し返しながら叫ぶ。


「っ……!」

「どうする……!?」

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