表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三年間名ばかりの妻でしたが、離縁届を置いて出ていきます。――え、隣国の皇太子が私を望んでいる? もう遅いですよ、旦那様  作者: 物語創造者≪イマージェン・クリエイター≫
第7話 「この女性を手放した人間の愚かさを、私は生涯忘れない」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/28

7-1

翌朝。


目を開けると、隣にセドリックがいた。


当たり前のことのはずなのに、胸がいっぱいになった。


金の髪が枕に散っている。寝顔は、起きている時よりも少しだけ幼く見える。眉間の力が抜けて、皇太子の顔ではなく、ただの青年の顔をしている。


昨夜この人は、「明日の朝、隣にいてください」と言った。


いますよ。ここに。


そっと手を伸ばして、額にかかった髪に触れた。


蒼い瞳が開いた。


「……おはよう」


「おはようございます」


「いた」


「いると言いましたよ」


セドリックが笑った。寝起きの、くしゃっとした笑顔。


こんな顔を見ていいのは、自分だけなのだと思うと、胸の奥がじんと温かくなった。


「朝食、一緒にどうですか」


「……この部屋で?」


「ここで。二人で。焼き菓子も、つけます」


「朝から焼き菓子……」


「皇太子の権限です」


「濫用では」


「あなたのためなら、いくらでも」


呆れるべきなのだろうか。でも笑ってしまう。


この人の隣で迎える朝が、こんなにも明るいものだとは。


三年間の朝は、いつも一人だった。


冷たい寝台。冷たい窓。冷たい廊下の向こうに、自分を見ない夫がいるだけの朝。


もう、あの朝には戻らない。



朝食を終えた頃、侍従が報告に来た。


「殿下。ヴォルコフ公爵が、本日中の面会を求めております」


セドリックの手がカップの上で止まった。


「署名は昨日完了したはずだが」


「はい。離縁届は正式に受理されております。ですが、公爵は別件でリゼット様にお会いしたいと」


「別件?」


「公爵いわく、『最後に一度だけ、直接話がしたい』と」


リゼットは紅茶を置いた。


最後に一度。


セドリックが視線を向けてきた。問いかけの目。決めるのはあなただ、という目。


「……会います」


「リゼット」


「大丈夫です。もう、怖くないから」


昨夜の自分と、三年前の自分は違う。五日前に謁見の間で立った自分とも、もう違う。


「前回は、あなたが後ろにいてくれました」


「今回も同じだ。隣にいる」


「ええ。でも今回は……」


リゼットはセドリックの手に、自分の手を重ねた。


「隣にいてくれるだけで十分。あとは自分で終わらせます」


セドリックはその手を見つめ、そっと指を絡めた。


「……わかりました。あなたを信じます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ