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三年間名ばかりの妻でしたが、離縁届を置いて出ていきます。――え、隣国の皇太子が私を望んでいる? もう遅いですよ、旦那様  作者: 物語創造者≪イマージェン・クリエイター≫
第1話 「お前がいなくなっても、何も変わらない」

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1-2

朝食の席で「無意味だった」と言われた日の午後。


私は自室の机に向かい、一枚の書類を取り出した。


離縁届。


この国の法律では、公爵家の婚姻解消には双方の署名と王家への届出が必要になる。けれど、三年間子がなく、夫側に明確な不貞の事実がある場合――妻の側から一方的に届け出ることもできる。


……二年前から、調べてあった。


ペンを持つ手は震えない。


三年前の私なら泣いていた。一年前の私なら迷っていた。


でも今日、「無意味だった」という言葉を聞いて、最後の糸が切れた。


悲しみではなく。


怒りでもなく。


ただ――ああ、もう、いいのだ、と。


そう思っただけ。


名前を書く。リゼット・ヴォルコフ、と。


――いいえ。


ペンを止める。


リゼット・セレブリャコフ。


旧姓で署名した。もう、ヴォルコフの名を使う理由はない。



荷物はほとんどなかった。


三年間この屋敷にいて、私個人のものと呼べるものは驚くほど少ない。


嫁入りの時に持ってきた数冊の薬草学の本。母の形見のブローチ。質素な着替えが数着。


宝飾品はすべてヴォルコフ家のものだ。一つも持っていかない。


ドレスも、靴も、髪飾りも。全部置いていく。


「……これで、よし」


小さな旅行鞄一つ。


それが、三年間の結婚生活の全て。


笑ってしまう。本当に、無意味だったのかもしれない。


――少なくとも、あの人にとっては。


離縁届は、アンドレイの書斎の机の上に置いた。


きっと今頃、フローラと庭園を散歩している。私がこの屋敷を出ることに、今日中に気づくかどうかも怪しい。


「お世話になりました」


玄関で頭を下げた私に、使用人たちは目を丸くした。


「奥様、どちらへ?」


「実家に戻ります」


「……あら」


それだけ。引き止める者は、一人もいなかった。

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