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三年間名ばかりの妻でしたが、離縁届を置いて出ていきます。――え、隣国の皇太子が私を望んでいる? もう遅いですよ、旦那様  作者: 物語創造者≪イマージェン・クリエイター≫
第6.5話 「あなたが望むなら」

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19/27

6.5-1

離縁届の署名が完了した翌日。


外交官を通じて正式に通達が届き、リゼットとアンドレイの婚姻は法的に解消された。


リゼット・セレブリャコフ。


もう誰の妻でもない。誰のものでもない。自分だけの名前で、自分だけの場所に立っている。


解放されたはずだった。


なのに、その夜、リゼットは眠れなかった。



寝台に横たわり、天井を見つめる。


月明かりが薄いカーテン越しに差し込んで、部屋を青白く染めている。


三年間の婚姻が、今日終わった。


悲しいわけではない。後悔もない。正しい結末だと思う。


ただ、体の奥に、不思議な空洞がある。


三年間、ずっとそこにあった空洞。冷遇されていた日々の中で、気づかないふりをしていたもの。


誰かに触れられたい、という空洞。


誰かに望まれたい、という空洞。


白い結婚。初夜のない結婚。


アンドレイは一度もリゼットの部屋に来なかった。一度も手を伸ばさなかった。触れようとすらしなかった。


最初の頃は、いつか来てくれるのだろうと思っていた。夫婦なのだから。いつかは。


一年が過ぎた。


二年が過ぎた。


三年目に、理解した。来ないのだと。永遠に。


自分の体は、望まれないのだと。


「…………」


右手を見る。月明かりの中で、かすかに光っている。


この手は聖女の手だと言われた。歴代最高の素質があると。


でもこの手は、三年間、誰にも握ってもらえなかった手でもある。


セドリックが初めて握ってくれた。


あの温もりを、まだ覚えている。


寝台の上で、自分の手を胸の上に置いた。心臓の鼓動が、手のひらに伝わる。


昨夜の図書室を思い出す。


セドリックの腕の中の温かさ。心臓の速さ。シャツ越しに感じた体温。


受け取りたい、と思った。


あの人の気持ちを。


でも気持ちだけではなく――もっと。


もっと近くに。もっと深くに。


自分の体が、こんなふうに何かを求めることがあるのだと、知らなかった。三年間、封じ込めていたから。望んでも無駄だと分かっていたから。


今は違う。


今は、望んでいい人がいる。


ノックの音がした。


心臓が跳ねた。


「リゼットさん。起きていますか」


セドリックの声だった。低く、少し躊躇いを含んだ声。


「……はい」


「灯りが消えていたので、眠れないのかと。余計なお世話でしたら、このまま戻ります」


リゼットは寝台から立ち上がった。


薄い寝巻き一枚。髪は下ろしたまま。


こんな姿を見せたことはなかった。いつも昼間の、きちんとした姿しか見せていなかった。


扉の前で、一瞬だけ迷った。


そして開けた。

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