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24、蒼世界

さて、これより舞台が変わります。

といっても世界観が大きく変わるわけではありませんが…


では、デイス編開幕です。



見上げればそこに青い空がある。


しかし、それは一般に空色と呼ばれる水色ではなく紺碧と言われるような濃い青色だった。


太陽の光が青いのか、はたまた空気が青い光をよく通すのか分からないがとにかく青い。


「うわぁ……デイスが青いって聞いたことはあるけど、こんなにも綺麗だなんて知らなかった…」


ティルはそんな事を言いながら空を見上げて歩く。


ふわふわと。


「ティル!危ない!」


何が?と思いユウトの方を向くと視界がぐらりと傾く。


踏み出した足はそこにあるはずの地面を通り抜ける。


崖?と思ったティルは最後に必死の形相のユウトを見て目を瞑る。




どさっ、と柔らかな衝撃が来た。


なんだか暖かい。


そんな事をぼーっと考えていると、頭の方からうぅ…と呻き声が聞こえて意識が覚醒した。


ティルの下にはユウトがティルを抱きしめながら寝転んでいる。


「ぅ…大丈夫か?」


首を上げた悠斗の問いにティルは無言で頷く。


ユウトはそうかとだけ言って首の力を抜いた。


ユウトの腕の中で小さくなるティル。


ドクン、ドクンという心臓の音はユウトのものか、ティルのものか。


さっきまで呻いていたことからユウトの上から退いた方がいいと思うのだが体が動かない。


きつく拘束されている訳ではない。


怪我をして動けない訳でもない。


ただ、何故か力が入らない。


潤んだ目でユウトを見つめる。


心臓の更に奥の方がかぁっと熱くなる。


脳が溶けてしまったかのようで、何も考えれない。


「…ユウ…ト…」


小さく呟く。


大丈夫?の一言が言えない。


どくん、どくん、


これは自分の心臓だ。


音が大きい。


ユウトに聞こえちゃいそう。


おかしい、息が苦しい。


呼吸はしっかり出来ている。

「…ユウト。」


今度はちゃんと声が出た。


ん?というユウトの声を聞いただけで体の芯が熱くなる。


しどろもどろになりながらも勇気を振り絞り声をだす。


「あの…だいじ…」

「二人とも、大丈夫?」

「!?」


ティルはシルリアの声に驚き、ズバッと効果音が聞こえそうなほど勢い良く悠斗から離れる。


こうしてティルの幸福な時間は終わった。




※※※




「…ここはどこなんだ?」


悠斗は歩きながら呟く。


「スビック」


「いや、固有名詞を言われても分からん。」


ティルも同意するように頷く。


「実家の近くの街。」


「え?街の外にあって大丈夫なの?」


「私が結構強めの結界を張ってあるから、むしろこの街より安全よ。」


実際、その耐久力はティルの家(つまり王城)の二倍を越えてたりする。


「で、これからその家に行くのか。」


「もう遅いから明日にするわよ。」


そう言って指したのは一軒の宿屋。


「今日は祭があるからゆっくり楽しんでいくといいわ。」




※※※




シルリアは宿をとって早々どこかへ行ってしまっている。


恐らく知識欲をくすぐるものを探しにいったのだろう。


しかし、シルリアがいなくなったため残ったのは悠斗(異世界の祭の形態、固有名詞がわからない)とティル(今まで庶民的祭は眺めるものだった)であり、結果二人は困惑し広場でベンチに座っていた。


手にはキュリルという飲み物(たくさんの人が飲んでいたためハズレではないだろうと悠斗が買ったもの) がある。


「だけどちょっと意外だなー。ユウトが祭初めてだなんて。」


「ま、まあ、色々事情があるんだよ。」


「ふーん。あ、何か始まるみたいだよ。」


広場の真ん中、舞台の辺りが騒がしくなる。



『さあ、皆さん待ちに待った武闘祭の決勝戦の始まりです!』



「ぶとうさい?」


「武芸を競うんじゃない?」


「そのようなものよ。」



『優勝の栄光、賞品のソフィールを手にするのは誰だ!?』



「ソフィールって何だ?」


「宝石だよ。」


「薄青色で魔力を蓄えることが出来る。魔法道具の触媒としても優秀なものよ。」


「へぇ〜。」


二人はシルリアの説明に納得し…


「ってシルリア!?」


いつの間にか後ろに立っていたシルリアに驚く。


「い、いつからいたの?」


「さっき着いたばかりよ。」


そう言い、それにしてもソフィール…と目を鋭くする。


(ティ、ティル。ソフィールってそんな凄いものなのか?)


(し、知らないよ。ただボクら貴族以上の感覚ではそんな騒ぐようなものじゃないよ。)


シルリアの目の変化に慌てる二人。



『選手の紹介です。こちら、傭兵歴11年、幾多の戦場を駆け抜けてきた男、ヒーラー地方戦線では百の敵を倒したという、キマイラ二体を相手に一人で勝った伝説を持つ、ウラジミール・バーン!』



「なあ、ここにキマイラをスプーンで瞬殺した人間がいるんだが。」


「ユウト、それは比較対象にしちゃだめな人だと思うよ。」



『対するは無垢なる天使と名高い少女、先日9歳の誕生日を迎えたミルト・ローリスヴィン!』



「9歳!?」


「年齢制限無いのかよ!?」


「しかも勝ち上がってる!?」


驚愕し交互に発言する二人をよそにシルリアは溜め息をつき、


「……やっぱり。」


と呟いて歩きだす。



『ルールを確認しましょう。殺害はご法度。勝利条件は降伏させるか戦闘不能にする、審査員全員一致で実力差を認めるのいずれかです。では所定の位置について。』



長い剣を持つ巨漢ウラジミール(長いため以後、巨漢)と見るからにお子ちゃまな女の子ミルトが対峙する。



『レディ……ファイッ!!!』



巨漢がスッと動き距離を詰め、全てを叩き斬るような一撃を繰り出す。


天使(エンジェルス)。」


女の子が言う。


白光が生まれ、そこから白い何かが飛び出す。


その数六つ。


白き布を纏い、純白の翼を羽ばたかせるそれはまさしく天使。


カキィィーン


長い剣の前には天使の持つ剣。


「うわぁ…あの子契約者(コントラクト・ワン)じゃん。」


ティルが言う。


「コントラクト・ワン?」


「そう、普通は魔力さえあれば誰でも全種類の魔法を使えるんだけど契約者は魔法が使えないんだ。その変わり契約された存在を召喚したりその存在の力を得ることが出来る。多分あの子は天使と契約した契約者だよ。」


「どうしてあの子が契約者だって?契約者を見分ける方法でもあるのか?」


「契約者を見分ける方法は無いけど天使の召喚なんて魔法は存在しないから。現在知られている魔法じゃあ天使の力を真似した『治天使の癒恵』が限界だよ。」


「そうなのか。」


ティルの一通りの説明を受け再び舞台に目を戻す。


巨漢がすぐさまバックステップで離れると一瞬遅れて回り込んで来ていた別の天使の剣が床に刺さる。


それを見越していた巨漢はその一体に斬りつける。


斬られた天使は白い粒子と化して昇っていった。


巨漢は大量のファイヤーショット(勿論爆発しない)を使い天使たちを牽制しつつ隊型の崩れた隙を狙ってまた一体の天使を天へ還す。


さすが決勝戦まで残ったと言えよう。しかし、ここまでだった。


四体の天使を相手にし拮抗した戦いをみせる。だが、魔力はもう無く倒すことも出来ない。



舞台の上、一人戦闘に参加していないミルトは口を開く。


大天使(アークエンジェルス)。」


またも光が生まれ、今度は二体の天使が出てくる。


二体の天使は他の四体よりも速く、鋭く攻め立てる。


次第に巨漢の対応が遅くなり、キィィーンという高い音と共に剣を弾かれ試合は終わった。




『試合終了ー!勝者は無垢なる天使、ミルト・ローリスヴィン選手!』


ワァァァと歓声が上がる。


どこからかミルト選手の勝利に賭けた方ー払い戻しは1.2倍でーす、という声も聞こえる。



『さてさて、優勝者も決まったところで毎度スビック武闘祭の波乱の元、優勝者挑戦をする方はいるか!?10ドルで参加可能!』



「ユウト、参加してみる?」


ティルが悪戯っぽく笑う。


「無茶だって。」


悠斗は苦笑しながら応じる。


周りの観衆も似たような会話の応酬をしている。


誰もが分かっている。あの巨漢も十分強い事を。


そしてそれ以上にミルトが強い事も。




そんな中、舞台近くで一本の手が上がった。


『おお!挑戦者が現れたか!?』


そいつは銀の長い髪を持っていて、


『10ドル払ったようです!』


金色の目を冷たく輝かせている、


『お名前は?』


「シルリア・ローリスヴィン。」


そう、シルリアだった。



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