↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/112

第66話:傷だらけの突破

「グアァァァッ……!」

 四体のキメラ・オートマトンによる圧倒的な物量と猛攻は、レイの予測演算の網目をギリギリでかすめ、確実に肉体を削り取ってい割れていた。

 右肩を裂かれ、左腹部にはプラズマの熱による浅い火傷。HPの数値は【620】まで落ち込み、赤く激しく点滅している。回復役のいないパーティにおいて、この負傷は致命的なハンデだった。

「レイ! もうすぐエリスのハッキング・パルスが再充填される……! あと一匹、それを倒せば囲みが崩れるわ!」

 後方の岩陰から、エリスが冷や汗を流しながら端末を叩き続けている。彼女の魔力も枯渇寸前で、指先から火花すら散らなくなっていた。

 シエナもまた、双剣を盾の代わりにして二匹のキメラの突撃を受け止め、血まみれになりながらも一歩も引いていない。

(……これ以上、まともな被弾は許されない)

 レイの脳内で、【確率演算】が冷徹に生存確率を計算し続ける。

 体力の消耗、武器の熱負荷、そして手札に残されたカードの残り使用回数。条件は最悪だったが、だからこそレイの研ぎ澄まされた戦闘勘は冴え渡っていた。

「シエナ、そっちは任せた。俺が正面を抉る」

「っ……! 無茶しないでよね!」

 レイは一歩踏み出し、地面の砂礫を蹴り飛ばした。

 狙うは、真正面に陣取る最後の一匹――高熱のプラズマ弾を撃ち続ける中型のキメラ・オートマトンだ。

 敵が再びプラズマの銃口を絞る。光弾が放たれる瞬間、レイは【ただの木の棒】に宿る微弱なエラーデータを逆用し、あえて足元の地面を撃ち抜いて煙幕を巻き起こした。

 視界が遮られたキメラの演算がわずかに乱れる。そのコンマ数秒の隙を、レイの確率演算が逃すはずもなかった。

「――『事象略奪』、起動」

 レイの左手首で、黒いカードが鋭い光を放つ。

 キメラの突撃に合わせて懐へ滑り込み、【ただの木の棒】に宿る【暴食の黒風】の真空刃を限界まで収束させた。

 ガリィィィンッ!!

「ギャ……ガ……ッ!?」

 キメラの装甲が砕け散るのと同時に、レイの左手首のカードが激しく明滅し、敵の内部構造に組み込まれていた「自己修復コード」と「装甲強化の特性」を強烈な引力で引っこ抜き、自らのローカルOSへと強制統合(インストール)した。

【スキル略奪成功:『超硬度外殻(ハード・アーマー)』】

 ・効果:一時的に肉体の防御力を極限まで引き上げる。

 瞬間、レイの全身の皮膚が薄く黒光りし、蓄積していた疲労と裂傷の痛みが一時的に麻痺していく。

 その圧倒的な強化の余勢を駆って、レイは全体重を乗せた渾身の一撃をキメラのコアへと叩き込んだ。

 ズシャァァァンッ!!

 轟音と共に、四匹目のキメラが断末魔のノイズを上げて崩れ落ちた。

 周囲の敵影が消え去り、峡谷に静寂が戻る。

「……はぁ、はぁ……」

 レイは木の棒を杖のように突き、荒い息を整えた。

 HPの数値は【310】。一歩間違えれば死んでいた死闘だったが、彼らはまた一つ、外の世界の強敵から力を奪い、生き残るための「牙」を増やしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。